東京医科歯科大学難治疾患研究所
鍔田武志
抗体 と お薬
抗体と感染防御
抗体が病原微生物(ウイルス、バクテリア、寄生虫など)に結合することにより病原微生物を排除する。中和、オプソニン化など
特異抗体
(Kaufmann et al. PNAS 2006)
北里柴三郎
ベルリン大学 Robert Koch研究室 (1886−1892)1889 破傷風菌の純粋培養1890 破傷風抗毒素(抗体)の発見
血清療法の基礎
1892 伝染病研究所設立(現東大医科研)
1914 北里研究所創立1917 慶応義塾大学医学部
創立
抗体分子
抗原結合部位
分子量約17万の糖タンパク約1500個のアミノ酸からなる
(Zhu et al. Structure 2006)
CμJHD nHLn V nHL1 V 1H
CμJHD nHLn V nHL1 V 1H
CμLn VHDJHL1 V 1H
mRNA
タンパク
免疫グロブリンV領域遺伝子の再構成
血液幹細胞
プレB細胞
B細胞
H鎖再構成
L鎖再構成
(Georgiou et al. Nat Biotech 2014)
(PDB:1/GT)
V 遺伝子断片
J 遺伝子断片
D遺伝子断片
組み合わせ
V×J (×D)
H鎖とL鎖の組み合わせ
H×κ
H×λ
結合部での多様性も加えた全多様性
250-10004
12
10,000-40,000
1-4×10
5-10×10
10 - 10
25040
1000
23
0
6
7
4
9 11
H κ λ
IgV領域の多様性
抗体の多様性
Bリンパ球(B細胞)が分化する過程でV遺伝子再構成がおこり、多様な免疫グロブリンを産生するようになる。
各個体は109-1011程度の異なったV領域を持つ抗体分子を産生す
ることができる。その結果、免疫系はありとあらゆる分子に対して抗体を産生することができる。
ツェーザ・ミルスタイン(左)とジョージ・ケーラー (1977)
モノクローナル抗体
キメラ抗体 ヒト化抗体
ヒトIg
なぜか?:モノクローナル抗体への免疫応答を避けるため
問題点:親和性が下がる場合がある親和性の回復:ファージディスプレイ
変異Guided selection
抗体医薬の歴史
1890 血清療法ージフテリア、破傷風 -抗体を治療に使った始まり(Behring and 北里)
1977 ハイブリドーマ法のよるモノクローナル抗体の作成(Koehler and Milstein)
1982 白血病への抗体療法の最初の成功例(抗イディオタイプ抗体)1986 キメラ抗体技術 (Genentech社/Cabilly)1986 マウスモノクローナル抗体(抗CD3抗体:OKT3)がFDAにより認可
(J&J社)1988 ヒト化モノクローナル抗体 (MRC/G.Wintre)1990 ファージディスプレイ法 (mcaffertyら)1997 ヒト化モノクローナル抗体(抗CD25抗体)がFDAにより認可
(Roche)1997 モノクローナル抗体(抗CD20抗体)によるがん治療が認可1998 抗TNF抗体による関節リウマチとクローン病の治療が認可
抗体医薬のメリット
① 高い効果と少ない副作用抗原に対する高い特異性と親和性生体内安定性が高い毒性が低い
② 開発過程でドロップアウトが少ない
③ 多様な薬剤ターゲットに対応できる標的分子(抗原)の多様性作用メカニズムの多様性
④ 工業生産が可能遺伝子工学的な手法による改変、改良が可能組み換え体の製造技術の確立生産や精製法の共通性が高い
抗体医薬のデメリット
①高額な薬剤費 原因
・抗体医薬は従来のタンパク医薬に比べ投与量がはるかに多い
・細胞培養で製造するとコストが高い
・特許が複雑
②品質管理が難しい
抗体は糖鎖による修飾など、構造が複雑なので、
製造上の品質を均一にすることが難しい。
保管などが化合物と比べ難しい
③剤形が主に注射剤
分子量が大きいため、経口は不可
④ 抗体への免疫応答がおこる
とりわけ、マウス等異種の抗体の場合
【出所】セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部の調査による
抗体 vs. 低分子化合物
(Zhu et al. Structure 2006)
Druggability
ヒトのタンパク質のうち既存の薬剤との相互作用があるもの 2%
ヒトのタンパク質のうちdruggableなもの 10−15%
Druggabilityの予測
1。既存の薬剤の標的分子と同じファミリーの分子
2。分子構造 低分子化合物が作用できそうなポケットがある
レクチン:糖鎖に結合するタンパク質
糖鎖結合部位
多様な機能:細胞活性化、細胞活性化抑制細胞接着など
グリコミメティク
糖鎖類縁化合物でレクチンなどに作用して機能を発揮する。
Rivipansel :細胞接着を阻害
鎌状赤血球症などの治療薬として開発中
抑制
B細胞抗原レセプター
抗原
活性化
B リンパ球
LynYYYY
CD22
SHP-1
α2-6 シアル酸
OHOHOH
HNCCH3
OO
OH
COOH
O
Sialic acid
OO
OH
OH
HO
Galactose
15
6
24
1
25
6
4 3
87
9
3
α
IgMa IgMaIgG1a IgG1a
CD22 -/-CD22 +/+
Day3
Day5
Day7
緑、赤活性化Bリンパ球
青静止Bリンパ球
(Onodera et al.)
CD22を欠損するとBリンパ球の活性化が増強する
脾臓
CD22 -/-
CD22 +/+
CD22を欠損すると抗体産生が増強する。
0 3 5 7
免疫後の日数
10
(mg/ml)
10000
8000
6000
4000
2000
0
血清中の特異抗体の量
GSC660(IC50 μM)
hCD22mCD22
BPAc-Neu5Ac
35123
0.913.84
BPAc-Neu5Ac
GSC718
0.1280.101
GSC718
14004689
(Kelm et al. 2002, Abdu-Allah et al. 2008)
Me-Neu5Ac
GSC660
CD22阻害剤の開発
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