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平成30年度新エネルギー等の保安規制高度化事業 (水素燃料電池式産業用フォークリフト用容器に係る技術基 準等に関する調査研究) 平成 31 年 3 月 一般財団法人日本自動車研究所

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平成30年度新エネルギー等の保安規制高度化事業

(水素燃料電池式産業用フォークリフト用容器に係る技術基

準等に関する調査研究)

報 告 書

平成 31 年 3 月

一般財団法人日本自動車研究所

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目次

1.調査目的 ................................................................................................................................................ 1

2.調査の内容及び方法 .............................................................................................................................. 1

3.水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会の運営 .................................. 1

3.1 委員会設置の趣旨 ............................................................................................................................ 1

3.2 委員会の役割と活動範囲 ................................................................................................................. 1

3.3 委員構成 ........................................................................................................................................... 2

3.4 委員会開催実績 ................................................................................................................................ 3

4.圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準 JARI S 003(2018)の作成 .............................. 4

4.1 技術基準作成の目的 ......................................................................................................................... 4

4.2 前提条件 ........................................................................................................................................... 4

4.3 解説 .................................................................................................................................................. 4

4.4 参考文献 ........................................................................................................................................... 8

5.一般化の方法について .......................................................................................................................... 8

5.1 JARIS003 の例示基準化 ................................................................................................................... 8

5.2 省令等改正案 .................................................................................................................................... 9

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1.調査目的

現行の高圧ガス保安法においては、繊維強化プラスチック複合容器であって、自動車の燃料装置用とし

て圧縮水素を充塡するための容器は、「圧縮水素自動車燃料装置用容器」として、当該容器の製造時の技

術上の基準、容器再検査の方法及び当該容器の使用期限等が定められている。繊維強化プラスチック複合

容器は、鋼製容器に比べ高価だが重量が軽く普通自動車に搭載するのに適した容器として一般的である。

一方で、車体の安定性が求められる産業用フォークリフトにおいては、重量があり廉価な鋼製容器の方が

利点を有するところ、現行の高圧ガス保安法においては当該容器のための技術上の基準、容器再検査の方

法及び使用期限等の規定がない。

このため、産業用フォークリフトの燃料装置用として、圧縮水素を充塡するための鋼製容器(以下

「FCFL 用容器」という。)の一般化を図るため、産業競争力強化法(平成二十五年十二月十一日法律第

九十八号)第10条第1項に基づき、株式会社豊田自動織機より、FCFL 用容器を搭載したとしても安全

上問題ないことを実証するための新事業活動計画の提出があり、経済産業大臣の認可を受けた後、4年間

の実証が行われた。

本事業は、当該4年間の実証結果を踏まえて、FCFL 用容器の製造時の技術上の基準、容器再検査の方

法及び使用期限等の検討並びに一般化の方法に関する提言を行うことを目的とする。

2.調査の内容及び方法

容器保安規則等で定める製造時の技術基準、再検査の方法及び使用期限等に関し、FCFL 用容器につい

て検討を行い、一般化の方法を含めて提言を行う。

具体的には、FCFL 用容器の一般化に向けて必要な基準等(製造時の技術基準、再検査の方法及び使用

期限を含む。)の検討及び一般化の方法(当該基準等を定める規格、関係省令案、告示案及び通達案並び

に基準等の背景や考え方をまとめた解説書の作成を含む。)の提言を行うこととする。

検討及び提言に当たっては、有識者・業界団体等により構成された委員会を運営し、行う。

3.水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会の運営

3.1 委員会設置の趣旨

FCFL 用容器の製造時の技術基準の例示基準化に向けて、各界の専門家による審議・承認を経て、業界

技術基準を作成する。

3.2 委員会の役割と活動範囲

現在、水素燃料電池フォークリフト(以下 FCFL)は、ノンプレクールの最高充填圧力 35MPa 圧縮水素

ガスを充填・貯蔵して市場運用されており、かつフォークリフトの機能上、FCFL用圧縮水素貯蔵容器

はバランスウエイトとしての性格をもつため、安価で質量の比較的重い Type1 容器の搭載が期待される。

FCFL 用容器の技術基準化には、圧縮ガス容器を搭載する自動車(CNGV,FCV)用容器の技術基準が参考

になり、現在容器認可取得のために、以下の技術基準が国内で運用されている。

別添 9:圧縮天然ガス自動車燃料装置用容器の技術基準の解釈 (最高充填圧力 26MPa)

JGA 指-NGV07-05 (2006):圧縮天然ガス自動車燃料装置用容器の技術基準 (同 26MPa)

JARI S 001 (2004):圧縮水素自動車燃料装置用容器の技術基準 (同 35MPa)

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KHK S 0128 (2010):70MPa 圧縮水素自動車燃料装置用容器の技術基準 (同 70MPa)

別添 11:国際圧縮水素自動車燃料装置用容器の技術基準の解釈 (同 87.5MPa)

上述の FCFL の使用条件を考慮し、JARI S 001 (2004)の参照が最も効果的と思われるが、JARI S 基準

の規定は、Type3 および Type4 容器に限られているため、圧縮天然ガス用基準として設定時期が新しい

JGA 指-NGV07-05 の Type1 容器用金属材料に関する規定の参照も併せて有効と思われる。

また低合金鋼の使用という観点において、容器則のみでなく特定則(定置用容器)の適用も含めた検討

方針を議論開始時に決心した上で、最終的な FCFL 用 Type1 容器の技術基準の審議・承認を行う。

3.3 委員構成

学識経験者および容器使用者等から構成する。構成メンバーを以下に記す。

表 3.1 委員構成

氏名 所属

委員長 小林 英男 東京工業大学名誉教授

高圧ガス保安協会参与

委員 吉川 暢宏 東京大学 生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター

委員 小川 武史 青山学院大学 理工学部 機械創造工学科

委員 山辺 純一郎 福岡大学 工学部 機械工学科

委員 佐野 尊 高圧ガス保安協会 総合研究所

委員 和田 洋流 株式会社 日本製鋼所

委員 木之下 弘信 株式会社 ベンカン機工

委員 白砂 伸之 大静高圧株式会社 ((一社)全国高圧ガス容器検査協会)

委員 高瀬 健一郎 (一社)日本産業車両協会

委員 鈴木 宏紀 株式会社 豊田自動織機

委員 岡村 愛子 株式会社 豊田自動織機

事務局 冨岡 純一 (一財)日本自動車研究所

事務局 増田 竣亮 (一財)日本自動車研究所

事務局 田村 浩明 (一財)日本自動車研究所

オブザーバ 高橋 秀太朗 経済産業省 産業保安グループ 保安課

オブザーバ 宮川 将一朗 経済産業省 産業保安グループ 高圧ガス保安室

オブザーバ 太田 賢志 経済産業省 経済産業政策局 産業創造課 新規事業創造推進室

オブザーバ 泉田 大輔 経済産業省 水素・燃料電池戦略室

オブザーバ 佐藤 乃利子 経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術室

オブザーバ 篠原 秀和 高圧ガス保安協会 機器検査事業部 検査企画課

オブザーバ 成宮 俊則 高圧ガス保安協会 機器検査事業部 検査企画課

オブザーバ 石塚 歩 日本自動車工業会(ホンダ)

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3.4 委員会開催実績

第 1 回 水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会

日時:平成 30 年 8 月 29 日(水) 13:00~15:15

場所:日本自動車会館 1 階 くるまプラザ 第 4 会議室

議題:

1. 委員会開催趣意

2. 委員長選任および委員確認

3. 【報告】FCFL の現状と容器基準化について

3-1. 背景

3-2. Type1 容器の基準作成に至った経緯、目的

3-3. 企業実証特例制度による全部金属製容器の実証評価

4. 【審議】Type1 容器基準の技術検討要件

4-1. Type1 容器 基準作成の前提条件

4-2. 基準検討の方針(案)

5. 【審議】FCFL 用 Type1 容器基準の適用法規検討

6. 【審議】今後の進め方と日程

7. その他

第 2 回 水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会

日時:平成 30 年 10 月 4 日(木) 13:30~16:45

場所:日本自動車会館 1 階 くるまプラザ 第 1 会議室

議題:

1. 前回(8/29)議事録および前提条件の確認

2. 【報告】Type1 容器の事前評価項目

3. 【審議】技術基準案審議

4. その他、今後の予定

第 3 回 水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会

日時:平成 30 年 11 月 2 日(金) 13:30~17:30

場所:日本自動車会館 1 階 くるまプラザ 第 1 会議室

議題:

1. 前回(10/4)議事録の確認

2. 【審議】材料、肉厚、容器再検査等に関する課題整理

3. 【審議】材料関連の解析、評価データの解説

4. 【審議】技術基準案詳細審議

5. その他、今後の予定

第 4 回 水素燃料電池フォークリフト用容器の製造基準等に関する検討委員会

日時:平成 30 年 12 月 4 日(火) 13:30~17:15

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場所:日本自動車会館 1 階 くるまプラザ 第 1 会議室

議題:

1. 前回(11/2)議事録の確認

2. 【審議】前回までの課題整理

3. 【審議】技術基準案詳細審議

4. 【審議】本基準審議に関する省令・告示等変更確認

5. その他、今後の予定

4.圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準 JARI S 003(2018)の作成

4.1 技術基準作成の目的

圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器は、従来の繊維強化プラスチック複合容器とは材料や設計法

が異なることから、独自の安全確保を図る必要がある。このため、既存の例示基準によらず、別途詳細な

技術基準を作成する必要がある。

圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準 JARI S 003 は、上記の問題解決を行うことを目的

として作成したものである。

4.2 前提条件

委員会で承認された本基準の前提条件を以下に示す。

・特定設備検査規則 別添 7「第二種特定設備の技術基準の解釈」に倣った「公式による設計」を採用す

る。松永ら※1は、『高圧水素ガス中で引張強さが確保され、疲労限度が低下しない場合には、SCM435

を用いた高圧水素機器の公式による設計が可能である』という指針を提案した。また、引張強さ 824MPa

の SCM435 について、室温・115MPa 水素ガス中で引張強さが確保されることと疲労限度が低下しな

いことを実証し、適切な熱処理を選択することによって、SCM435 を用いた高圧水素機器の公式によ

る設計が可能であることを示した。そこで、本基準では、材料の強度範囲、熱処理条件を限定したうえ

で、疲労限度以下の応力で使用することで無限寿命設計となる「公式による設計」を採用することとし

た。

・無限寿命設計のため、容器の使用期限は規定していない。

・JARI S 001 等の「試験法による設計」で用いる破裂試験や圧力サイクル試験は不要となるため、本基準

では規定していない。

・強度・疲労設計以外の規定については、水素に関連する部分は JARI S 001 の規定、継目なし容器に関

する部分は JGA 指-NGV07-05 の規定を採用している。

・本基準の容器に装置する附属品は、JARI S 001 と同様、「圧縮水素自動車燃料装置用附属品の技術基準

JARI S 002(2004)」を満足するものを使用する。よって、安全弁は熱作動式(溶栓式に限る)である。

・本基準では、業界から要望のあった SCM435 と SNCM439 に限定し、材料データ・使用実績等から、

安全に使用できる強度範囲・熱処理条件を設定した。これ以外の材料・強度範囲については、データが

整備された段階で、順次追加等の議論を行うものとして、ここでは扱っていない。

4.3 解説

本基準の解説として、委員会で承認された主な審議結果を以下に示す。なお、各条項番号は本文と同一

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とした。

第 1 条(適用範囲)

【容器の適用範囲】

本基準は、圧縮水素自動車の燃料装置用として使用される継目なし容器(Type1 容器)を対象とした。

委員会では、FCFL 用 Type1 容器の技術基準を作成することを目的に審議を開始したが、技術基準の

内容の審議と同時に、適用範囲の審議も行った。FCFL 等の自走式産業車両を含む「圧縮水素自動車燃料

装置用継目なし容器の技術基準」と、FCFL や自走式産業車両に限定した場合の技術基準の設計・試験項

目を比較検討した結果、両者の内容に違いがなく、FCFL や自走式産業車両に限定するメリットは特にな

かった。このため、適用範囲を「圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準」とし、FCFL や自

走式産業車両への限定は行わなかった。

【使用期限】

「特定設備検査規則 別添 7 第二種特定設備の技術基準の解釈(以下、「特定則 別添7」という。)」と

同等の公式による設計(安全率 3.5)により、無限寿命となるため、使用期限は規定していない。さらに、

容器再検査において、15 年毎に超音波探傷試験を行うことにより、亀裂がないことを確認することで、

長期使用時の容器の健全性を確保する。

第 3 条(材料)

【規格材料】

材料は、業界からの要望のある SCM435 及び SNCM439 に限定した。

容器の製造方法を実績のあるマンネスマン式に限るため、材料の製造方法を継目なし鋼管に限定した。

【同等材料】

ASME 規格材等に対応するため、同等材料を規定した。

【材料の強度範囲】

高圧水素ガス中で引張強さが確保され、水素ガス中での疲労亀裂進展速度の加速上限値が存在し、使用

実績のある強度範囲(SCM435TK においては、800N/mm2 以上 900N/mm2 以下のもの、SNCM439TK

においては、840N/mm2以上 900N/mm2以下のもの)に限定した※2。

第 4 条(肉厚)

【公式による設計】

胴部の肉厚の式は、「特定則 別添7 第 6 条(最小厚さ) (1)イ 円筒胴の胴板または管」の式を参考

にした。鏡部の肉厚の式は、「特定則 別添 7 第 6 条(最小厚さ) (3)ロ 全半球形鏡板」の式(外径基

準)を参考にした。ただし、鏡部の形状は、完全な全半球形ではなく、内外面とも曲率半径が場所により

異なる曲面の組合せで構成されるため、外面の曲率半径を用いて肉厚を計算することとした。その他、ボ

ス部周辺についても、円筒形の開口部の肉厚、開口部周辺鏡部の強度設計、ねじの強度設計を規定した。

以上より、容器全体について、公式による設計を規定した。

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【材料の許容引張応力】

材料の許容引張応力は、引張強さの制限値を前提に、無限寿命設計が実現される数値(SCM435TK 及

びその同等材料においては 230N/mm2、SNCM439TK 及びその同等材料においては 240N/mm2)を設定

した。

第 5 条(構造及び仕様)

【容器の構造】

容器の構造を、実績のある、継目なし鋼管の両端を鏡部及びボス部に一体成型した構造に限定した。

【容器の全長】

火炎暴露試験の火源の長さは 165cm と規定されている。165cm を超える容器は、熱作動式安全弁を引

き回し配管で接続する場合があり、これを避けるため、容器の全長を 165cm 以下に限定した。

第 6 条(加工及び熱処理の方法)

【容器の製造方法】

容器の製造方法は、実績のあるマンネスマン式(継目なし鋼管からの製造)に限定した。

【容器の加工方法】

鏡部の成形加工は、鏡部内面のしわが最大で 0.45mm 程度であり、比較的しわの浅いスピニング加工

に限定した※3。なお、鏡部の冷間鍛造加工(スウェージング加工等)は、最大で 3mm 程度の部分的に深

いしわが観察されるため、本基準では除外した※4。ただし、しわを除去することで使用できる可能性があ

り、将来的な採用を否定するものではない。

【熱処理の方法】

容器の熱処理温度は、旧 JIS G 4103(1979)及び旧 JIS G 4105(1979)の解説、加熱の際の変態点(Ac

点)(SNCM439:730~775℃、SCM435:750~785℃。焼き戻し温度は、炉温のオーバーシュート等も

考慮し、Ac 点-50℃以下が望ましい。)、及び実績※2も考慮して規定した。

第 7 条(容器検査)

【容器検査の概要】

本基準では、材料の強度範囲、熱処理条件を限定したうえで、疲労限度以下の応力で使用することで無

限寿命設計となる「公式による設計」を採用した。これにより、JARI S 001 等の「試験法による設計」で

用いる破裂試験や圧力サイクル試験は不要となるため、本基準では規定していない。

【最高充填圧力】

JARI S 001 と同じ 35MPa 以下とした。商用ステーションではなく、事業所内の 35MPa ノンプレクー

ル充填を想定している。

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【容器の内容積】

本基準の容器は公道を走行しない構内専用車両に搭載される場合もあるため、内容積は、キャリアカー

等での運搬時の水底トンネル等における通行制限を考慮し、120L 以下とした。

第 9 条(設計確認試験における火炎暴露試験)

【火炎暴露試験の方法】

本基準の容器に装置する安全弁は、JARI S 001 と同様、JARI S 002 基準の熱作動式(溶栓式)安全弁

のため、JARI S 001 の火炎暴露試験を採用した。ただし、全長を 165cm 以下に制限しているため、JARI

S 001 で規定されている水平部分暴露試験は削除した。(第 5 条:165cm を超える容器は、熱作動式安全

弁を引き回し配管で接続する場合があり、これを避けるため、容器の全長を 165cm 以下に限定した。)

第 10 条(設計確認試験における保護塗装耐酸試験)

【保護塗装耐酸試験の方法】

JGA 指-NGV07-05 では、容器を用いた試験であり、破裂圧力が合格基準となっていることから、破裂

試験を規定しない本基準では適用できない。このため、容器より切り出した試験片を用いて、JIS K 5600-

6-1(2016)塗料一般試験方法-第 6 部:塗膜の化学的性質-第 1 節:耐液体性(一般的方法)の 7 方

法 1(浸せき法)により試験することとした。ただし、試験液については、JGA 指-NGV07-05 と同じ 30%

(重量比)硫酸溶液又は比重 1.219 のバッテリー液を用いることとした。

第 12 条(組試験における材料試験)

【1 組の定義】

b組試験の 1 組の定義は、容器保安規則 別添 1「一般継目なし容器の技術基準の解釈」から引用し

た。「同一の容器製造所において同一のチャージから製造された容器であって、肉厚、胴部の外径及び形

状が同一であるもの」であれば、焼入れ性含めて同じ条件であるため、これを 1 組とした。なお、肉厚、

胴部の外径及び形状が同一であっても、チャージが変われば材料試験が必要である。

【引張試験の方法】

引張試験の試験片について、本基準で想定する継目なし容器は、胴部周方向の応力が最も大きく、その

方向に試験片採取が可能な十分な肉厚を有することから、引張試験の試験片採取方向は胴部周方向、試験

片形状は丸棒試験片とした。JIS Z 2241(2011)金属材料引張試験方法の場合、試験片は、円形断面の 14A

号試験片等を使用する。

【衝撃試験の方法】

衝撃試験の試験片採取方向は胴部周方向、試験片形状は厚さ 10mm の標準試験片とした。

衝撃試験の合格基準について、JIS B 8267(2015)圧力容器の設計 付属書 Rでは、引張強さが 655N/mm2

以上の低合金鋼の試験結果の判定は、吸収エネルギーの代わりに横膨出で行うこととなっており、その判

定基準を引用した。

第 14 条(組試験における非破壊検査)

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非破壊検査は、圧縮水素スタンド用鋼製蓄圧器の定期自主検査に採用されている「NDIS 2431(2018)

圧縮水素スタンド用鋼製蓄圧器の超音波探傷試験方法」を引用した。胴部及び鏡部の探傷感度設定には、

容器製造業者が定める評価スリットを用いることとし、評価スリットのエコー高さを超えるエコー高さ

が検出されないものを合格とした。これにより、容器製造業者の基準を超える深さのしわ等、有害な欠陥

がないことを確認する。また、容器製造時の超音波探傷の結果の保存のため、NDIS 2431(2018)の規定

により、評価スリットエコー高さの 1/2 を超えるエコー高さが検出された場合、きずの位置やきずエコ

ー高さを記録する。この記録と、15 年毎の容器再検査で実施する超音波探傷試験の結果を比較すること

で、傷が発生していないかどうか判定することが可能となる。これにより、15 年以上の長期にわたり、

容器の健全性を確保する。

第 15 条(組試験における保護塗装の塗膜検査)

【塗膜検査の方法】

ASTM D1186 と D1400 は 2006 年に廃止され、D7091 に置き換わったため、D7091(2013)に変更

した。

第 16 条(組試験における加圧試験)

【耐圧試験の方法】

耐圧試験は、「JIS B 8267(2015)圧力容器の設計の方法」を参考に、加圧中の目視検査を行わない加

圧試験とした。本基準では、「特定則 別添 7」の公式による設計を取り入れているため、耐圧試験の圧力

は、「特定則 別添 7 第 46 条(耐圧試験)」と同様に最高充填圧力の 1.3 倍とした。

4.4 参考文献

※1:松永ほか「Slow strain rate tensile and fatigue properties of Cr-Mo and carbon steels in a 115 MPa

hydrogen gas atmosphere」 International Journal of Hydrogen energy, Vol.40, No.16, 2015,

pp.5739-5748, DOI: 10.1016/j.ijhydene.2015.02.098

※2:松岡ほか「115MPa 水素ガス中での低合金鋼 SCM435 と SNCM439 の各種強度特性および設計

指針の提案」日本機械学会論文集 Vol.83, No.854, 2017, DOI: 10.1299/transjsme.17-00264

※3:山辺ほか「Design and life prediction of Cr-Mo steel pressure vessel for next generation fuel-cell

forklift truck 」 Proceedings of 2016 International Hydrogen Conference, 2017, DOI:

10.1115/1.861387_ch44

※4:「WE-NET 高松水素ステーション機器解体調査結果報告書」NEDO, 2008

5.一般化の方法について

5.1 JARIS003 の例示基準化

作成した圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準 JARI S 003(2018)を、高圧ガス保安協

会による一般詳細基準審査に申請し、高圧ガス容器規格検討委員会による審議により、当該基準が「一般

に広く活用できる」ものであって「機能性基準」に適合すると認められるかどうか、審査を受ける予定。

申請に向けて、基準等の背景や考え方をまとめた解説書を作成した。

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5.2 省令等改正案

圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の技術基準 JARI S 003(2018)が、「一般に広く活用できる」

ものであって「機能性基準」に適合すると認められた場合、経済産業省にて「例示基準」への追加が検討

される。このため、例示基準化される場合の省令等改正案を検討した。

【容器保安規則】

第 2 条(用語の定義)

・圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の定義に関する追加・修正

・圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の耐圧試験圧力に関する追加

第 8 条(刻印等の方式)

・圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の刻印記号に関する追加・修正

第 26 条(容器再検査における容器の規格)

・再検査における超音波探傷試験に関する追加・修正

第 33 条(検査設備の基準)

・超音波探傷試験に関する検査設備の追加

第 37 条(容器再検査に合格した容器の刻印等)

・再検査における超音波探傷試験を実施した場合の刻印に関する追加・修正

【容器保安規則に基づき表示等の細目、容器再検査の方法等を定める告示】

第 18 条(圧縮天然ガス自動車燃料装置用継目なし容器等の外観検査)

・再検査における外観検査に、圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器を追加

第 19 条(圧縮天然ガス自動車燃料装置用継目なし容器等の漏えい試験)

・再検査における漏えい試験に、圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器を追加・修正

第 19 条の 2(圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の超音波探傷試験)

・再検査における超音波探傷試験を追加

第 22 条(容器再検査における容器の規格)

・圧縮水素自動車燃料装置用継目なし容器の充填可能期限に関する追加・修正

第 31 条(検査設備の基準)

・超音波探傷試験に関する検査設備の基準の追加