2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・...

71
Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 1 (特集)中国北アジア 日系企業が直面する課題 2012年5月号(Vol.16) 2011年の対中直接投資動向 < 目 次 > 総論:日本の対中投資が 5 割増・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ● 京津冀地域日本企業の北京、天津向け投資が倍増・・・・・・・・・・・・・16 ● 華東地域:契約・実行ベースともに伸び率は上海市がトップ ・・・・・・・・・・・22 ● 遼寧省:日系企業の瀋陽進出が活発化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 ● 広東省・福建省:1 億ドル超の大型投資案件が増加・・・・・・・・・・・・・35 ● 山東省:契約数減少するも投資額は過去最高・・・・・・・・・・・・・・・・40 ● 陝西省:西安市進出企業の増資が大幅拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・44 ● 四川省・重慶市:いずれも5割超の伸びを記録・・・・・・・・・・・・・・・47 ● 湖北省:日本企業の投資が 3 倍に拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 ● 香港の対中投資:シェア、契約件数、実行額とも増加・・・・・・・・・・・・56 ● 台湾の対中投資:前年並みの高水準を維持・・・・・・・・・・・・・・・・・59 ● 韓国の対中投資:小幅減ながら全対外直接投資の 1 割超は維持・・・・・・・・64 『(特集)中国北アジア 日系企業が直面する課題』は、北東アジア進出企業が直面するさ まざまな問題点や課題について、ホットなトピックスを取り上げ、各地域の事務所から独自 の視点や地域事情に基づくレポートをお届けいたします。希望されるテーマ等がありました ら、海外調査部中国北アジア課までご意見をお寄せいただければ幸いです。 北京● ●上海 青島● ●ソウル 大連 広州● ●香港 ●東京 武漢●

Transcript of 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・...

Page 1: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 1

5

(特集)中国北アジア 日系企業が直面する課題

2012年5月号(Vol.16)

2011年の対中直接投資動向

< 目 次 >

● 総論:日本の対中投資が 5 割増・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

● 京津冀地域:日本企業の北京、天津向け投資が倍増・・・・・・・・・・・・・16

● 華東地域:契約・実行ベースともに伸び率は上海市がトップ ・・・・・・・・・・・22

● 遼寧省:日系企業の瀋陽進出が活発化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

● 広東省・福建省:1億ドル超の大型投資案件が増加・・・・・・・・・・・・・35

● 山東省:契約数減少するも投資額は過去最高・・・・・・・・・・・・・・・・40

● 陝西省:西安市進出企業の増資が大幅拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・44

● 四川省・重慶市:いずれも5割超の伸びを記録・・・・・・・・・・・・・・・47

● 湖北省:日本企業の投資が 3倍に拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

● 香港の対中投資:シェア、契約件数、実行額とも増加・・・・・・・・・・・・56

● 台湾の対中投資:前年並みの高水準を維持・・・・・・・・・・・・・・・・・59

● 韓国の対中投資:小幅減ながら全対外直接投資の 1割超は維持・・・・・・・・64

『(特集)中国北アジア 日系企業が直面する課題』は、北東アジア進出企業が直面するさ

まざまな問題点や課題について、ホットなトピックスを取り上げ、各地域の事務所から独自

の視点や地域事情に基づくレポートをお届けいたします。希望されるテーマ等がありました

ら、海外調査部中国北アジア課までご意見をお寄せいただければ幸いです。

北京●

●上海

青島● ●ソウル

大連 ●

広州●

●香港

●東京

武漢●

Page 2: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 2

ジェトロは、本レポートの記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的

損害および利益の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえ、ジェ

トロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。

本レポートに関する問い合わせ先:

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部 中国北アジア課

〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32

TEL:03-3582-5181

E-mail:[email protected]

Page 3: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 3

アンケート返送先

FAX:03-3582-5309 E-mail:ORG @jetro.go.jp

日本貿易振興機構 海外調査部 中国北アジア課宛

● ジェトロアンケート ●

調査タイトル:2011 年の対中直接投資動向

ジェトロでは、中国ビジネスに取り組まれている企業の皆様への情報提供を目的に本調査を

実施いたしました。報告書をお読みいただいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。

今後の調査テーマ選定などの参考にさせていただきます。

■質問1:本報告書は参考になりましたか?(○をひとつ)

4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった

■ 質問2:①使用用途、②上記のように判断された理由、③その他、本報告書に関するご感想

をご記入下さい。

■ 質問3:今後のジェトロの調査テーマについてご希望等がございましたら、ご記入願います。

■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入)

ご所属

□企業・団体

□個人

会社・団体名

部署名

お名前

※ご提供頂いたお客様の個人情報については、ジェトロ個人情報保護方針(http://www.jetro.go.jp/privacy/)に基づき、適正に管理運用させてい

ただきます。また、上記のアンケートにご記載いただいた内容については、ジェトロの事業活動の評価及び業務改善、事業フォローアップのため

に利用いたします。

~ご協力有難うございました~

Page 4: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 4

<ポイント>

(1)国・地域別では香港、業種別では不動産業の投資鈍り全体の伸びは1ケタだが、

日本からの投資は5割増

・ 2011 年の対中投資は、実行ベースで前年比 9.7%増と 10 年の同 17.4%増から鈍化した。シ

ェア 6割以上を占める香港からの投資の鈍化が大きい。

・ しかし日本の対中投資は 49.6%増と大きく伸びた。特徴として、①製造業の大型投資が多い、

②業種としては輸送機械のサプライヤー案件が目立つ、③業種横断的に大手企業による中国

統括会社の設立が多い、といった点が挙げられる。

・ 日本からの投資増については東日本大震災の影響との見方もあるが、投資額が上半期、なか

でも3月に多かったこと、直接投資の実行が、フィージビリティースタディー、用地の確保、

合弁相手との交渉など一定の時間を要することを踏まえれば、震災以前に検討を終えていた

案件が多いと考えられる。

・ 日本企業の投資はここ数年低調で、見方を変えれば企業の手元流動性は増えていたものと思

われる。日本・欧米市場の先行きが依然不透明であり、また円の高止まりが続く中、中国で

の競争力強化と内販拡大に向け、懸案とされてきた統括会社設立や能力増強投資が、大手企

業を中心に本格化したものと見られる。

・ 11 年の日本企業の投資額を業種別にみると、前年に続き「卸売・小売業」が最大であった。

ドラッグストアチェーンが上海進出を果たす一方、従来からある家電量販店、百貨店、コン

ビニエンスストアなどは、競合の少ない地域に店舗網を展開している。

・ その他、日本のサービス業の中国進出の特徴として、①上海進出業種の多様性が指摘できる。

卸売・小売からコンサルティングや医療・介護まで様々だ。また、②大手小売業が店舗展開

地域を広げている。さらには、③大手のみならず中小の外食企業が、中国の様々な地域に展

開するようになってきている。

(2)各地域への投資(実行ベース)の動向

<沿海部>

・ 京津冀地域(北京市・天津市・河北省)は、天津市が前年比 20.4%増と好調を維持、北京市、

河北省もそれぞれ 10.9%増、22.2%増と 2 ケタ増を回復した。北京市は日本からの投資が

89.7%の大幅増だった。持株会社や統括会社の設立が相次いでいる。天津市も日本からの投

資が 88.3%増と大きく伸びた。天津経済技術開発区(TEDA)では、自動車関連企業の管理機

能拡充や増産目的の増資が多い。小売業の動きも活発で、ヤマダ電機が 11 年6月に天津市

内に中国2号店、セブン-イレブンも7月に TEDA で天津2号店をオープンした。

・ 華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)は、上海市が 13.3%増。第二次産業が 3年連続で減少

する一方、第三次産業は 18.1%増でシェアが 82.8%となった。小売業の進出が活発で、マ

ークス&スペンサー(英)、イケア(スウェーデン)、ロータス(タイ)、百佳(香港)など

が出店拡大を予定している。日本企業も、キリン堂やグローウェルホールディングスといっ

たドラッグストアチェーンが進出している。日本からの投資は 58.2%増で、金額は国・地域

別で第2位となった。日本企業の場合、卸売・輸出入企業が多いほか、地域統括本部、投資

性公司、研究開発センター設立の動きも活発。江蘇省は 12.8%増と 10 年並み(12.5%増)

の伸びで、省別実行額第1位を維持した。

Page 5: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5

・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが 47.0%増と高か

った。日本からの投資は 49.8%増と主要投資国・地域の中で伸びが最も高かった。南方と沿

岸地域のコスト上昇を受け、製造業を中心に内外資を問わず、遼寧省各都市への企業の移転

や新規進出が増えている。なかでも瀋陽は、13 年の「中国人民体育大会」開催に向け、関連

施設の建設や市政府の移転などが進められていることもあり、日本企業の進出も加速してい

る。瀋陽 1 時間圏内の人口が 2,500 万人という市場規模、東北三省の中心都市が擁する産業

集積と人材、人件費や生活コストの割安感も魅力だ。

・ 華南地域は、広東省が 7.5%増、福建省も 6.9%増と、共に1ケタ増にとどまった。他方、投

資総額 1億ドル超の大型案件が、広東省 71 件(97.0%増)、福建省 31 件(60.0%増)と大幅

に増加した。日本からの投資の伸びは、広東省 35.3%増、福建省 32.7%増と高かった。

・ 山東省は 21.7%増、111 億 6,000 万ドルで過去最高だった 07 年を上回った。国家発展戦略「山

東半島藍色経済区発展計画」の中核都市である青島、威海、煙台で、投資総額 1 億ドル超の

案件が目立つ。香港企業に代表される不動産業への投資が依然好調だ。日本からの投資は

64.7%増で、国・地域別実行額第3位となった。

<内陸部>

・ 湖北省への実行投資額は全体では 14.9%増だったが、日本からの投資は前年の 3 倍に急拡大

した。日本企業の場合、自動車関連企業の投資が多い。東風汽車(日産自動車の合弁会社)

も東風ホンダ(本田技研工業の合弁会社)も能力増強を進めている。また湖北省政府は現在、

武漢とその周辺の 8都市(黄石、鄂州、黄岡、孝感、咸寧、仙桃、天門、潜江)から成る「武

漢 1+8都市圏」構想を推進中であり、湖北省への投資もその 8割が武漢と周辺都市に集中し

ている。

・ 四川省は 55.6%増と前年の 67.8%増に続き高い伸びだった。パソコン、電子部品製造関連の

進出が引き続き活発だ。09、10 年は 8割が成都への投資だったが、11 年は他地域への投資も

増え、成都のシェアは 68.8%に低下した。

・ 重慶市は 66.0%増となり、100 億ドルを突破した。産業別で最も多いのは第三次産業だが、

第二次産業の伸びが 09 年 68.8%増、10 年 31.5%増、11 年 86.9%増と近年著しい。11 年は

パソコンメーカーの広達、仁宝、緯創資通、旭碩科技の工場が新たに稼働し、パソコンの年

間生産台数が前年比 13 倍、2,548 万台に激増している。

・ 陝西省は 29.4%増だった。増資案件が多く、案件が大型化している。業種別では全体の 6 割

を占める製造業が 60%増と高い伸びだった。陝西省の場合、西安市のシェアが 85.1%と高い。

11 年は 28.0%増の 20 億 500 万ドルで、初めて 20 億ドルを突破した。

(3)香港・台湾・韓国からの対中投資の動向

・ 香港は、契約件数が 6.3%増の 1 万 3,889 件、実行額が 16.4%増の 705 億ドルと、共に増加

した。対中直接投資全体に占める香港のシェアは、契約件数で 2.4 ポイント増の 50.1%、実

行額で 3.5 ポイント増の 60.8%と首位を維持している。

・ 台湾(認可ベース)は、1.7%減の 143 億 7,662 万ドルだった。金融分野をはじめとする中国

側の投資規制緩和措置や海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づく投資分野でのアーリ

ーハーベストなどもあり、過去最高を記録した前年に続き高水準を維持した。

・ 韓国(実行ベース速報値)は 1.2%減だった。製造業は 1.0%増、非製造業は 8.2%減だった。

省市別では韓国企業が集積している山東省、江蘇省が上位 1、2位を占めた。

Page 6: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 6

日本の対中投資が 5 割増

●北京発

2011 年の対中投資(実行ベース)は前年比 9.7%増と、10 年(17.4%増)より鈍化した。業種別

では不動産業、国・地域別ではシェア 6 割以上を占める香港の鈍化が大きい。そうした中、日本

からの投資は 49.6%増と、ここ数年なかった大きな変化をみせ、国・地域別で第3位に浮上した。

日本・欧米市場の先行きが依然不透明で円の高止まりも続く中、中国での競争力強化と内販拡

大に向け、懸案とされてきた統括会社設立や能力増強投資が、大手企業を中心に本格化してい

る。

<不動産業が業種別で最大の減速要因>

商務部の1月 18 日の発表によると、11 年の対内直接投資(銀行・証券・保険分野を含まず)は、

契約件数が前年比 1.1%増の 2 万 7,712 件、実行ベースの投資額は 1,160 億 1,100 万ドルと 10

年に続いて 1,000 億ドルを超えたが、伸びは 9.7%増と1ケタに鈍化した(表 1 参照)。実行ベース

の投資額は 09 年8月から前年同月比プラスが続いていたが、11 年 11 月以降はマイナスになっ

ている。

表1 中国の対内直接投資の推移(単位:件、%、億ドル)

前年(同期)比

前年(同期)比

23,435 △ 14.8 900 △ 2.627,406 16.9 1,057 17.4

1月 2,243 20.2 100 23.42月 1,156 △ 4.9 78 32.23月 2,538 10.5 125 32.7

1~3月 5,937 8.8 303 29.44月 2,215 8.2 85 15.25月 2,391 12.2 92 13.46月 2,919 6.6 129 2.8

1~6月 13,462 8.8 609 18.47月 2,138 2.7 83 19.88月 2,406 6.4 84 11.19月 2,401 △ 3.5 90 7.9

1~9月 20,407 6.2 867 16.610月 1,961 △ 0.6 83 8.811月 2,718 △ 12.9 88 △ 9.812月 2,626 △ 15.4 122 △ 12.7

1~12月 27,712 1.1 1,160 9.7(注)3月単月は未公表のため計算値。(出所)商務部「中国投資指南」ウェブサイトを基に作成

対内直接投資件数(契約ベース)

対内直接投資額(実行ベース)

09年10年

11年

Page 7: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 7

業種別の伸び率をみると、非製造業(14.5%増)が製造業(5.1%増)を上回った(表 2 参照)。非

製造業のシェアは 52.8%と前年を上回り、なかでも運輸・郵便業(42.2%増)、卸・小売業(27.7%

増)が高い伸びを示した。なお、実行額の伸び 9.7%への寄与度をみると、製造業の 2.4 ポイント

に対し非製造業が 7.3 ポイントと大きく、不動産業だけでも 2.7 ポイントだった。もっとも不動産業

は伸びが鈍化し、寄与度で 10 年の 8.0 ポイントから 5.2 ポイント減少したため、業種別で最大の

減速要因となった。

表2 中国の業種別対内直接投資の推移 (単位:100万ドル、%)

金額 シェア 前年比 金額 シェア 前年比 金額 シェア 前年比

農業 1,429 1.6 20.0 1,912 1.8 33.8 2,009 1.7 5.1

鉱業 501 0.6 △ 12.6 684 0.6 36.7 613 0.5 △ 10.5

製造業 46,771 51.9 △ 6.3 49,591 46.9 6.0 52,101 44.9 5.1

非製造業 41,332 45.9 1.5 53,548 50.6 29.6 61,289 52.8 14.5

不動産業 16,796 18.7 △ 9.6 23,986 22.7 42.8 26,882 23.2 12.1

リース・ビジネスサービス業

6,078 6.8 20.1 7,130 6.7 17.3 8,382 7.2 17.6

卸・小売業 5,390 6.0 21.6 6,596 6.2 22.4 8,425 7.3 27.7

運輸・郵便業 2,527 2.8 △ 11.4 2,244 2.1 △ 11.2 3,191 2.8 42.2

その他 10,541 11.7 7.5 13,593 12.9 29.0 14,409 12.4 6.0

合計 90,033 100.0 △ 2.6 105,735 100.0 17.4 116,011 100.0 9.7

(出所)「中国商務年鑑」各年版、国家統計局「China Monthly Statistics」各月版を基に作成

09年 10年 11年業種

<日本からの投資は全国で急増>

在中国のジェトロの各事務所の報告によると、日本からの投資は全国で急増した。以下、主だ

った動きを、11 年の実行額を中心に紹介する。

まず沿海部をみると、京津冀地域(北京市・天津市・河北省)は、天津市が前年比 20.4%増と

好調を維持し、北京市(10.9%増)、河北省(22.2%増)が 2 ケタ増を回復した(表 3 参照)。北京市

では、日本からの投資が 89.7%増と高い伸びを示した。案件をみると、持株会社や統括会社の

設立が相次いでいる。持株会社は契約額も前年の倍に増えており、12 年以降の実行額も高水

準で推移しそうだ。

天津市も日本からの投資が 88.3%増と大きく伸びた。天津経済技術開発区(TEDA)によると、

自動車・同部品企業による管理機能の拡充や生産拡大を目的とする増資が多い。そのほか、小

売り関連分野の動きも活発だ。ヤマダ電機が 11 年6月、天津市内に中国2号店、セブン-イレブ

ンも7月、TEDA に天津2号店をオープンした。三越伊勢丹ホールディングスは 12 年上半期に

TEDA に「伊勢丹」の天津2号店のオープンを予定、三菱商事は 11 年6月に現地デベロッパーと

合弁会社を設立し、TEDA 内にショッピングモールを建設する予定だ。天津は製造・貿易拠点とし

てだけでなく、商業地としても注目を集めている。

華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)への投資は 11.4%増で、中国全体の 48.6%を占めた。

華東地域で投資額が最も多かったのは江蘇省(華東地域の 57%)だが、伸びでは上海市が最も

高かった(13.3%増)。上海市は、第二次産業が 3 年連続で減少する一方、第三次産業は 18.1%

増加し、シェアが 82.8%となった。

Page 8: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 8

案件をみると小売業の進出が活発で、マークス&スペンサー(英)、イケア(スウェーデン)、ロ

ータス(タイ)、百佳(香港)などが出店を拡大する予定。日本企業も、キリン堂やグローウェルホ

ールディングスといったドラッグストアチェーンが進出している。

国・地域別の投資額をみると、58.2%増となった日本が 20 億 5,300 万ドルで、香港に次いで第

2位となった。日本企業の投資の特徴として各種製品の卸売り・輸出入企業が多い点が指摘で

きる。また地域統括本部、投資性公司、研究開発センター設立の動きも活発だ。

江蘇省は 12.8%増と 10 年並み(12.5%増)の伸びが続き、省別実行額で第1位を維持した。省

内で投資額が多いのは蘇州市をはじめとする蘇南地域だが(江蘇省の 65.2%)、伸びは蘇北地

域(19.8%増)の方が高かった。

遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位だったが、前年と異なり、第二次産業(主に製

造業)の伸びが 47.0%増と高かった。国・地域別の投資額をみると、日本からの投資が 49.8%増

と主要投資国・地域の中で最も高かった。

南方と沿岸地域の人件費などのコスト上昇を受け、製造業を中心に内外資を問わず、遼寧省

へ移転や新規進出する企業が増えている。特に瀋陽は、13 年の「中国人民体育大会」開催に向

け、関連施設の建設や市政府の移転などが進められており、日本企業の進出も加速している。

瀋陽の魅力は、大連・北京・長春など周辺都市へのアクセスの良さ、瀋陽 1 時間圏内の人口が

2,500 万人という市場規模、東北 3 省の中心都市が擁する産業集積と人材、人件費や生活コスト

の割安感などが指摘できる。

山東省の実行額は 21.7%増、111 億 6,000 万ドルで、過去最高だった 07 年を上回った。特徴

の 1 つとして案件の大型化がある。海洋経済の発展、海洋資源の科学開発、海洋優勢産業の育

成をうたう国家発展戦略「山東半島藍色経済区発展計画」の中核都市である青島、威海、煙台

に、投資総額が 1 億ドルを超える案件が目立つ。

業種としては第三次産業の伸びが 35.9%増と相対的に高く、香港企業に代表される不動産業

への投資が依然好調だ。香港は国・地域別実行額で第1位、伸びも 61.1%増と高かった。日本も

64.7%増と伸びが高く、国・地域別実行額で第3位となった。

華南地域(広東省・福建省)は、広東省が 7.5%増、福建省も 6.9%増とともに1ケタの伸びにと

どまった。中身をみると大型投資案件が大幅に増えており、投資総額が 1 億ドルを超えた案件は、

広東省 71 件(97.0%増)、福建省 31 件(60.0%増)だった。なお、両省とも日本からの投資が伸び

ており、広東省は 35.3%増、福建省は 32.7%増だった。

内陸に目を転じると、湖北省への実行投資額は 14.9%増だった。中部 4 省は湖北省以外も、

湖南省 18.6%増、江西省 18.8%増、河南省 61.4%増と軒並み増加した。湖北省は日本からの投

資が 4 億 9,070 万ドルと、前年の 3 倍に激増した。湖北省の対内直接投資総額は中部 4 省で最

も少ないが、日本企業の投資は突出して多い。地域としては武漢市が中心になっている。また日

本企業の湖北省への投資には自動車関連投資が多い。

日産自動車の中国合弁会社の東風汽車は、12 年7月に総額 500 億元(1 元=約 13.1 円)の投

資を行い、販売台数を 230 万台以上に拡大するとともに、自主ブランドによる電気自動車(EV)を

含む約 30 車種の新型車を投入すると発表した。本田技研工業の中国合弁会社の東風ホンダは

12 年7月に新工場(一部)を立ち上げ、生産を 10 万台増の年間 34 万台とする。

なお、湖北省政府は現在、武漢とその周辺の 8 都市(黄石、鄂州、黄岡、孝感、咸寧、仙桃、

天門、潜江)を結び付け、1 つの経済圏として発展させる「武漢 1+8 都市圏」構想を推進しており、

Page 9: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 9

湖北省の対内直接投資の約 8 割が、武漢とその周辺都市への投資となっている。

四川省への実行投資額は 55.6%増と前年(67.8%増)に続き高い伸びだった。パソコン、電子

部品製造関連の進出が引き続き活発だ。09、10 年は 8 割が成都への投資だったが、11 年の成

都のシェアは 68.8%に低下した。成都市以外の都市への投資が伸びているようだ。

重慶市への実行投資額は 66.0%増と高い伸びで、100 億ドルを突破した(105 億 2,900 万ドル)。

産業別で最も多いのは第三次産業だが、第二次産業の伸びも 09 年 68.8%増、10 年 31.5%増、

11 年 86.9%増と近年著しい。11 年の電子製造業の工業生産高が前年の倍になったのもそうした

投資増が背景にあるようだ。11 年はパソコンメーカーの広達、仁宝、緯創資通、旭碩科技の工場

が新たに稼働し、パソコンの年間生産台数は前年比 13 倍(2,548 万台)に激増している。

陝西省への実行投資額は 29.4%増だった。増資案件が多いことと、案件の大型化が特徴とし

て挙げられる。業種別では全体の 6 割を占める製造業が 60%増と高い伸びだった。国・地域別

では、香港が第1位でシェア 51.4%、伸びは 29.4%増だった。陝西省への投資は西安市のシェア

が 85.1%と高い。11 年は 28.0%増の 20 億 500 万ドルとなり、初めて 20 億ドルを突破した。

表3 中国の省・自治区・直轄市別対内直接投資(11年)(単位:件、100万ドル、%)

契約件数 前年比 契約額 前年比 実行額 前年比

江蘇省 4,496 - 59,550 - 32,130 12.8広東省 7,035 24.7 34,692 41.0 21,798 7.5山東省 - - 15,790 15.8 11,160 21.7浙江省 1,691 - 20,580 2.7 11,670 6.0遼寧省 - - - - 24,270 17.0上海市 4,329 10.8 20,103 31.3 12,601 13.3天津市 634 7.1 16,837 10.1 13,056 20.4北京市 - - 11,298 33.1 7,054 10.9福建省 1,039 △ 8.8 13,578 12.0 11,044 6.9河北省 - - 4,220 28.3 4,680 22.2海南省 62 - 735 82.6 1,523 0.7

湖北省 339 10.8 1,971 78.4 4,655 14.9湖南省 674 6.1 9,395 30.3 6,150 18.6江西省 812 △ 25.6 8,445 12.7 6,059 18.8河南省 - - 7,680 32.7 10,080 61.4安徽省 263 △ 6.4 3,440 59.1 6,630 32.2山西省 62 - - - 2,070 37.3

吉林省 - - - - 1,481 15.7黒龍江省 131 - 3,520 22.6 3,250 22.0内モンゴル自治区 73 - - - 3,838 13.4四川省 322 - - - 9,527 55.6陝西省 138 △ 0.7 2,549 15.3 2,355 29.4重慶市 326 40.5 13,521 116.0 10,529 66.0広西チワン族自治区 - - - - 1,014 11.2青海省 12 - 336 6.1 169 △ 23.0貴州省 70 89.2 - - 673 127.9甘粛省 28 0.0 - - 70 △ 48.1寧夏回族自治区 15 - 384 35.0 202 149.7雲南省 163 - 2,154 41.9 1,740 30.7新疆ウイグル自治区 50 △ 2.0 - - 335 41.0チベット自治区

(出所)各省・自治区・直轄市政府統計資料などを基に作成

(注)地方政府の公表する対内直接投資には「外商その他投資」(委託加工、補償貿易、国際リースなど)が含まれる場合があるため、合計額は中央政府公表額を上回る。

省・自治区・直轄市名

東部

中部

西部

Page 10: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 10

<香港、米国がブレーキ、日本が大幅増>

国・地域別の対中投資(実行ベース)をみると、11 年の第1位は 10 年と同じく香港で 770 億

1,100 万ドル、シェアは 66.4%と 10 年より 2.6 ポイント上昇した(表 4 参照)。もっとも、実行額全体

の伸びに対する寄与度は、10 年の 15.0 ポイントから 11 年は 9.0 ポイントと 6.0 ポイント減少し、

伸び率鈍化の最大の要因となった。第2位も 10 年同様台湾だった。第3位は日本で、10 年より 1

つ順位を上げた。日本の対中投資額はここ数年大きな変化がなかったが、11 年は急拡大した

(図 1)。そのほか、第5位の米国は 10 年の 13.3%増から 26.1%減に転じたため、寄与度では 0.5

からマイナス 1.0 と 1.5 ポイント減で、香港に次ぐ減速要因となった。

0

10

20

30

40

06

下 上

07

下 上

08

下 上

09

下 上

10

下 上

11

新系列(タックスヘイブン経由を含む)

旧系列(タックスヘイブン経由を除く)(億ドル)

(出所)新系列は商務部ウェブサイト「中国投資指南」、旧系列はCEIC

図1 商務部統計にみる日本の対中投資実行額の推移

対中直接投資の動向に詳しい商務部国際貿易経済合作研究院・外資研究部の●(赤におお

ざと)紅梅副主任は日本の対中投資について、上半期に日本の対中投資が 6 割増だったときに

指摘したことが、通年についてもほぼ当てはまるとみている。具体的には、a.10 年以前の日本の

対中投資の低迷は、実施を待つ案件や手元流動性の増加をもたらしていた、b.日本は低成長・

電力供給への不安・円高など、投資環境が良いとはいえない、c.欧米経済が不振のため、投資

がアジアにシフトしている、の 3 点を挙げた。

なお、11 年3月の東日本大震災を契機とする生産シフトが急増の主因だと仮定すると、調整や

検討、事務手続きに要する時間から、投資の増加は年後半あたりと考えられる。しかし、実際に

は 11 年で最も投資が多かったのは3月で、また、下期より上期の投資が多かった。つまり、東日

本大震災は対中直接投資増加の主因ではない、と説明できる。

Page 11: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 11

表4 中国の国・地域別対内直接投資 (単位:100万ドル、%)

国・地域名 実行額 シェア 実行額 シェア 前年比1 香港 53,993 60.0 67,474 63.8 25.02 台湾 6,563 7.3 6,701 6.3 2.13 日本 4,117 4.6 5,657 5.4 45.64 シンガポール 3,886 4.3 4,242 4.0 3.05 米国 3,576 4.0 4,052 3.8 13.36 韓国 2,703 3.0 2,693 2.5 △ 0.47 英国 1,469 1.6 1,642 1.6 11.88 ドイツ 1,227 1.4 1,239 1.2 n.a.9 マカオ 1,000 1.1 952 0.9 n.a.10 カナダ 959 1.1 933 0.9 △ 24.0

その他 10,540 11.7 10,150 9.6 △ 3.7

全世界合計 90,033 105,735 17.4

国・地域名 実行額 シェア 前年比1 香港 77,011 66.4 14.12 台湾 6,727 5.8 0.43 日本 6,348 5.5 49.64 シンガポール 6,328 5.5 11.95 米国 2,995 2.6 △ 26.16 韓国 2,551 2.2 △ 5.37 英国 1,610 1.4 △ 1.98 ドイツ 1,136 1.0 21.89 フランス 802 0.7 △ 35.310 オランダ 767 0.7 △ 19.4

その他 9,736 8.4 △ 4.1

全世界合計 116,011 9.7

(出所)商務部「中国投資指南」ウェブサイトを基に作成

09年 10年順位

11年順位

国・地域名香港台湾シンガポール日本米国韓国英国

(注)全世界合計は、実行額の使用ベース、各国・地域は実行額の投入ベース。バージン、ケイマン諸島、サモア、モーリシャス、バルバドスなどの自由貿易港を経由して当該国・地域へ投資された金額を含む。国・地域別の対中投資(実行ベース)の発表は09年の途中から、各国・地域のデータにタックスヘイブン経由の対中投資額が含まれるようになった。

フランスオランダドイツ

その他

全世界合計

<日本にとって対中投資の比率はやや低下>

日本の対外直接投資における中国の位置付けを日本の財務省統計(国際収支統計・速報)で

みると、中国のシェアは 10 年の 12.7%に対し 11 年は 11.1%と若干低下した(表 5 参照)。08~

10 年の日本の対中投資の動きをみると、日本の対外直接投資総額が大きく減少する中、減少

が軽微にとどまったため、投資総額に占めるシェアが拡大した。しかし、11 年は一転して日本の

対外直接投資の伸びが全世界的に高く、対 EU が約 4 倍、対 ASEAN が倍になるなど、対中国

(61.5%増)を上回る地域も多かった。

Page 12: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 12

表5 日本の国・地域別対外直接投資の推移 (単位:億円、%)

国・地域 金額 シェア 前年比 国・地域 金額 シェア 前年比1 ケイマン諸島 12,080 17.3 △ 47.1 米国 7,968 16.1 20.22 米国 9,989 14.3 △ 77.6 中国 6,284 12.7 △ 3.23 オーストラリア 6,556 9.4 22.1 オーストラリア 5,622 11.4 △ 14.24 中国 6,492 9.3 △ 3.1 英国 3,855 7.8 88.55 オランダ 6,314 9.0 △ 7.0 ブラジル 3,745 7.6 6.66 ブラジル 3,513 5.0 △ 34.7 シンガポール 3,319 6.7 22.77 インド 3,443 4.9 △ 36.6 オランダ 2,949 6.0 △ 53.38 ルクセンブルク 2,962 4.2 414.2 インド 2,411 4.9 △ 30.09 シンガポール 2,706 3.9 141.2 タイ 1,983 4.0 30.210 英国 2,045 2.9 △ 69.7 香港 1,768 3.6 16.2

ASEAN 6,587 9.4 1.1 ASEAN 7,711 15.6 17.1EU 15,942 22.8 △ 32.0 EU 7,146 14.5 △ 55.2合計 69,896 100.0 △ 47.2 合計 49,388 100.0 △ 29.3

国・地域 金額 シェア 前年比1 米国 11,561 12.7 45.12 英国 11,216 12.3 190.93 中国 10,149 11.1 61.54 ブラジル 6,536 7.2 74.55 オーストラリア 6,495 7.1 15.56 タイ 5,575 6.1 181.17 オランダ 4,256 4.7 44.38 シンガポール 3,517 3.9 6.09 インドネシア 2,875 3.2 602.910 韓国 1,944 2.1 107.7

ASEAN 15,485 17.0 100.8EU 28,548 31.3 299.5

合計 91,180 100.0 84.6

(注)順位は11年(速報)ベース。(出所)財務省「国際収支統計」を基に作成

順位

11年順位

09年 10年

<11 年の日本の対中投資は製造業が牽引、非製造業は卸小売が伸び業種別で第1位に>

直近の日本の統計で対中投資を業種別にみると、製造業の力強さが目を引く。09、10 年と減

少した後、11 年は前年比 78.3%増と大きく増えた。他方、非製造業は 29.7%増だった。金融・保

険業が 27.9%減、サービス業が 38.8%減と大きく減少する一方で、卸・小売業が 63.0%増で業種

別第1位を維持した。その他、不動産業も 91.8%の大幅増だった(表 6 参照)。

業種別第1位となった卸・小売業については、各地で進出や店舗展開が活発化している。

天津市ではヤマダ電機中国2号店、セブン-イレブン天津2号店が開店、三越伊勢丹ホール

ディングスも 12 年上半期に「伊勢丹」の天津2号店オープンを決めている。三菱商事も合弁で天

津経済技術開発区(TEDA)内にショッピングモールを建設する。

上海市では、キリン堂、グローウェルホールディングスがそれぞれ、合弁でのドラッグストア展

Page 13: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 13

開を発表している。浙江省杭州ではケンコーコムが中国最大手クラスのドラッグストアチェーンの

老百姓大薬房連鎖との合弁契約を締結した。

遼寧省では、大連にローソンが日系コンビニエンスストアとして初めて進出した。12 年中に 30

店、今後 5 年ほどで 150~200 店の出店を予定している。瀋陽では三菱地所と香港新●(さんず

いに豊)集団はアウトレットモールを建設中で 12 年春のオープンを予定している。三菱地所とし

て海外で初の商業施設開発となる。

広東省でジャスコ 13 店展開している広東イオンも、2 店舗は 11 年に広州市内に開店した店舗。

今後も出店を増やしていく計画だ。

湖北省の武漢には 11 年、ユニクロを展開するファーストリテイリング、無印良品を展開する良

品計画が進出した。ファーストリテイリングは武漢を華中市場の重点と位置づけており4店舗、良

品計画は 2 店舗を出店。イオンモールも 5 年以内に大型ショッピングセンターを 5 か所以上開設

する計画を発表している。

表6 日本の業種別対中直接投資の推移 (単位:億円、%)

金額 シェア前年

(同期)比金額 シェア

前年(同期)比

金額 シェア前年

(同期)比製造業(計) 4,615 71.1 △ 8.0 3,896 62.0 △ 15.6 6,948 69.2 78.3

食料品 827 12.7 108.3 107 1.7 △ 87.1 173 1.7 61.9

繊維 154 2.4 79.1 70 1.1 △ 54.5 431 4.3 515.4

木材・パルプ 455 7.0 333.3 249 4.0 △ 45.3 276 2.8 11.0

化学・医薬 444 6.8 △ 4.9 646 10.3 45.5 823 8.2 77.4

石油 4 0.1 n.a. △ 6.0 n.a. n.a. × n.a. n.a.

ゴム・皮革 △ 6 n.a. n.a. 253 4.0 n.a. 179 1.8 △ 29.2

ガラス・土石 119 1.8 △ 21.2 45 0.7 △ 62.2 240 2.4 434.3

鉄・非鉄・金属 337 5.2 △ 42.8 446 7.1 32.3 1,012 10.1 127.0

一般機械器具 617 9.5 △ 16.7 865 13.8 40.2 1,426 14.2 64.9

電気機械器具 583 9.0 △ 46.3 364 5.8 △ 37.6 796 7.9 118.7

輸送機械器具 907 14.0 △ 11.0 854 13.6 △ 5.8 1,162 11.6 36.0

精密機械器具 85 1.3 △ 8.6 36 0.6 △ 57.6 217 2.2 502.2

非製造業(計) 1,877 28.9 11.5 2,388 38.0 27.2 3,097 30.8 29.7

農・林業 3 0.0 △ 62.5 × n.a. n.a. 6.0 0.1 n.a.

漁・水産業 1 0.0 △ 96.3 × n.a. n.a. × n.a. n.a.

鉱業 ・ n.a. n.a. 0 n.a. n.a. ・ n.a. n.a.

建設業 9 0.1 n.a. 22 0.4 144.4 11 0.1 △ 50.9

運輸業 59 0.9 △ 44.9 24 0.4 △ 59.3 53 0.5 122.2

通信業 13 0.2 △ 88.3 47 0.7 261.5 245 2.4 421.5

卸・小売業 805 12.4 1.4 924 14.7 14.8 1,506 15.0 63.0

金融・保険業 938 14.4 1,072.5 818 13.0 △ 12.8 590 5.9 △ 27.9

不動産業 △ 71 n.a. n.a. 267 4.2 n.a. 512 5.1 91.8

サービス業 90 1.4 △ 34.3 292 4.6 224.4 179 1.8 △ 38.8

合計 6,492 100.0 △ 3.1 6,284 100.0 △ 3.2 10,046 100.0 59.9

(注1)報告件数が3件に満たない項目は、個別データ保護の観点から「X」と表示している。

(注2)当該データが存在しない項目は、ピリオド(「・」)で表示している。

(注4)伸び率は前年(同期)比。

(注5)金額がマイナスの場合、伸び率は計算していない。

(出所)財務省統計よりジェトロ作成

(注3)「製造業(計)」、「非製造業(計)」は、各内訳項目、Xに、それぞれ「その他製造業」、「その他非製造業」を加えた合計であり、表上の各業種の合計と必ずしも一致しない。

09年 10年 11年

Page 14: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 14

その他の非製造業の展開としては、上海における多様性が際立っている。日本企業の上海進

出で最も多くみられるのは各種製品の卸売・輸出入企業。また、コンサルティング企業、IT サー

ビス企業(コンピュータソフトウエアやネットワーク技術の設計・開発・製作、システムインテグレー

ション、IT 関連の技術サービスやコンサルティング)も多い。その他にも飲食業、物流業、倉庫業、

広告業、リース業、介護施設の運営管理など、幅広い業種が進出している。

なかでも 11年、上海市では医療・介護関連サービス合弁会社の設立発表が相次いだ。ケアネ

ットは、香港合弁会社の子会社を上海市に設立し、医師、医療従事者向けの医療専用サイトを

立ち上げ、医薬品企業へのプロモーション支援、医師への継続医学教育支援事業などを行う。イ

ーピーエスは、医薬品開発業務受託(CRO)事業、臨床試験サービスを行う。メディカル・ケア・サ

ービスは、有料老人ホームの運営・管理、介護人材の育成・教育、福祉用具の流通・販売などの

サービスを展開する。ニチイ学館は、福祉用具の卸販売事業を行う。

山東省青島では、ロングライフホールディング(大阪)が新華錦グループと合弁で運営する青

島市初の海外合弁老人ホーム「新華綿・長楽国際有料老人ホーム」が、11 月にオープンした。日

本側が介護サービスやスタッフの育成、中国側が不動産管理や営業を担う。

その他、上海以外の地域の動きとしては、遼寧省瀋陽で消費者金融大手のプロミスが瀋陽支

店を開設し中間層向けの個人融資を行う。中国では「小額貸付会社」(消費者金融会社)の外資

100%出資による参入は原則認められていないが、香港での実績が評価され当局より認可を受

けた。IT産業についても、瀋陽に中国システムインテグレーション最大手の東軟集団

(NEUSOFT)があり、11 年に東芝ソリューションと合弁企業を設立している。瀋陽を拠点に、中国

全土の日系企業に対して中国全土へ SI サービスや BPO・クラウドサービスを提供する。また、子

会社で医療機器、医療用システムを開発する東軟医療系統有限公司は、臨床検査機器の開発、

製造、販売を行うエイアンドティーと合弁会社を設立している。

<外食産業の進出が地域を問わず活発化>

日系企業のサービス業の中国進出の一つの特徴として、外食関連企業の多さが指摘できる。

大手のチェーン店から中小企業、個人事業者まで、進出企業の規模も様々だ。

北京市では、うどん業界 No.1 の讃岐うどん専門店・丸亀製麺を運営する兵庫県神戸市のトリ

ドールが 11 月、中国市場での基盤強化のため、100%出資子会社からの全額出資で北京に孫

会社を設立した。またここ 1、2 年の傾向として、海外で初めて飲食業を行う異業種からの参入が

増えており、なかでも日本の地方食材や B 級グルメを中心にした店舗づくりを行うところが目立

つ。中小企業もしくは個人事業者の飲食業向け投資が活発化している。11 年は特に日本で早期

退職をした 40 歳代後半から 50 歳代の個人事業者による投資が多い。北京で日本食レストラン

を展開している中小企業や個人事業者からの天津市への投資も増えている。

上海ではクリエイト・レストランツ・ホールディングスが3月、傘下のクリエイト・レストランツ・チャ

イナ・リミテッドの 100%出資で上海創思餐飲管理有限公司を設立した。経済発展を背景に外食

市場の高成長が見込まれるアジアを中心に、日本での経験・ノウハウ等を活かし展開する計画。

「はなまるうどん」を展開するはなまるも2月に海外1号店として上海美羅城五番街店をオープン

した。

Page 15: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 15

広東省では、サイゼリヤが昨年、省内の出店を拡大し、広州市内13店舗、深圳市内5店舗、

佛山市内2店舗、恵州市内1店舗となった。ワイエスフードが展開する山小屋ラーメンは 2009 年

に中国第一店舗を深圳市内に開店。11 年は3店舗を新規開店した。

福建省ではモスバーガーを展開するモスフードサービスが店舗展開を加速している。同社の

初出店は 94 年だが 97 年に一度撤退。2010 年に中国展開を再開し、1号店を厦門で開店した。

その後、福建省をターゲットに店舗を展開し、現在では厦門 12 店、福州 2 店、泉州 2 店、晋江 1

店で営業している。

湖北省武漢でも、北海道・札幌のラーメンチェーンのさんぱちが、11年9月に1号店をオープン

した。武漢の友好都市である九州・大分の手作り洋菓子店ベルクールも、10 月に「丸山の泡芙

(シュークリーム)」を武漢国際広場にオープンしている。

<日本企業は大型投資、統括会社設立が目立つ>

最後に 11 年の日本企業の対中投資の特徴について、各社の対中投資関連プレスリリース資

料を基にまとめてみる。

第 1 に、大型投資が目立った。10 年までの数年間は代表的案件を拾う際に、対象を 5 億円以

上にすると数が限られてしまったが、11 年は 20 億円を超える案件だけでもかなりの数に上った。

第 2 に、製造業のさまざまな業種で、能力増強投資が相次いだ。なかでも輸送機械(建機を含

む)のサプライヤーの案件が多い。東海ゴム工業(自動車用ゴム、樹脂製品)、アイシン・エィ・ダ

ブリュ(自動車部品)、ナブテスコ(建設機械用の油圧モーター)、ネツレン(高周波熱錬)(建設機

械用部品)、日立化成工業(自動車樹脂成型品)、スタンレー電気(建設機械用部品)、トピー工

業、デンソーなどがある。

第 3 に、業種横断的傾向として、大手企業による中国統括会社の設立が目立った。これは大

型投資の増加の要因でもある。武田薬品工業、住友化学、クレハ、第一三共、神戸製鋼所、ニッ

パツ(日本発条)、ホシザキ電機、安川電機、三菱自動車工業、スタンレー電気、ユニプレス、日

立オートモティブシステムズ、ユニ・チャームなどだ。統括拠点設置により、多数の中国現地法人

の間接部門の重複によるロスの回避、資金の運用の効率化、専門部署による法務・コンプライア

ンス対応などが期待できる。

11 年に発表された日系企業の対中直接投資案件の具体例については、巻末の表「日系企業

の主な対中直接投資案件(2011 年)」参照。

(箱崎大)

Page 16: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 16

日本企業の北京、天津向け投資が倍増(京津冀地域)

●北京発

2011 年の京津冀地域(北京市、天津市、河北省)の対内直接投資額(実行ベース)は、天津市、

河北省が前年比2割増と好調を維持し、北京市も2ケタ増だった。日本からの投資は急増してお

り、北京市が 89.7%、天津市が 88.3%、河北省が 25.5%増だった。

<北京市:日本の実行額がほぼ倍増に>

11 年の北京市の対内直接投資は、契約額が前年比 33.1%増の 112 億 9,812 万ドル、実行額

が 10.9%増の 70 億 5,447 万ドルと、契約、実行ベースともに 2 ケタ増となった(表 1 参照)。

表1 京津冀地域の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 前年比 契約額 前年比 実行額 前年比09年 1,423 △ 25.0 - - 6,121 0.610年 - - 8,488 2.1 6,364 4.011年 1636 - 11,298 33.1 7,054 10.909年 596 △ 13.6 13,838 4.4 9,020 21.610年 592 △ 0.7 15,296 10.5 10,849 20.311年 634 7.1 16,835 10.1 13,056 20.409年 215 △ 13.3 2,606 △ 9.8 3,605 5.310年 246 14.4 3,290 26.3 3,830 6.511年 195 20.7 4,220 28.3 4,680 22.2

(出所)北京市、天津市、河北省政府提供資料

実行ベース

北京市

天津市

河北省

省・市名 年契約ベース

国・地域別の投資状況(実行額)をみると、第1位は香港で 32 億 3,041 万ドル、伸び率は 3.3%

増と1ケタにとどまった(表 2 参照)。シェアは全投資額の 45.8%と、10 年を 3.4 ポイント下回った。

第2位の英領バージン諸島は前年の大幅減(38.0%減)から一転し、48.2%増の大きな伸びで 11

億 2,981 万ドルとなった。第3位の日本は 89.7%増の 7 億 7,196 万ドルとほぼ倍増。第4位のケイ

マン諸島は 20.4%減の 3 億 5,982 万ドル、第5位の米国は 41.4%増の 3 億 211 万ドルだった。

表2 北京市の国・地域別対内直接投資(11年)(単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比1 香港 734 44.9 8.6 3,230 45.8 3.32 英領バージン諸島 52 3.2 △ 11.9 1,130 16.0 48.23 日本 114 7.0 △ 3.4 772 10.9 89.74 ケイマン諸島 17 1.0 △ 29.2 360 5.1 △ 20.45 米国 132 8.1 △ 9.0 302 4.3 41.46 韓国 119 7.3 15.5 224 3.2 51.97 ドイツ 63 3.9 6.8 179 2.5 △ 19.78 シンガポール 49 3.0 △ 14.0 129 1.8 △ 48.29 フランス 24 1.5 26.3 66 0.9 79.510 英国 22 1.3 △ 29.0 62 0.9 457.6(注)順位は実行ベースによる。(出所)北京市政府提供資料

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

Page 17: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 17

北京市商務委員会は日本の実行額急増について、「日本企業による投資性公司(持株会社)、

または管理性公司(統括会社)の設立申請が相次いだからだ」と話している。確かにこの 1 年あ

まりで、ヤマダ電機(10 年9月、11 年も増資)、旭硝子(10 年 12 月)、豊田通商(11 年2月)、三菱

ケミカルホールディングス(管理性公司、11 年4月)、住友化学(11 年8月)、シャープ(11 年 10

月)などが相次いで設立申請している。また同委員会によると、伊藤忠商事が2億ドル、パナソニ

ックが約 1 億 5,000 万ドルの増資を行った。このほか三井物産が 3,333 万ドルを投じ、中国中央

電視台(CCTV)傘下の CCTV ショッピングの第三者割当増資と他株主からの持分譲渡を引き受

け、同社株式の 25%相当の持分を取得。またイオンも昌平区で展開しているショッピングセンタ

ーに増資するなど、サービス業の投資が目立った。北京では大手企業のほか、中小企業もしく

は個人事業者の飲食業向け投資も活発化している。ジェトロが当地の関連企業に聞いたところ、

ここ 1、2 年の傾向としては、海外で初めて飲食業を行う異業種からの参入が増えており、なかで

も日本の地方食材や B 級グルメを中心にした店舗づくりを行うところが目立ってきている。11 年

は特に日本で早期退職をした 40 歳代後半から 50 歳代の個人事業者による投資が多く、1 店舗

当たりの投資金額は、40 万元(約 500 万円)前後のケースが多いという。

韓国も実行額の伸び率が高かった。大手企業がビル建設に動いていることが一因だ。ポスコ

が朝陽区に 26 階建てと 31 階建てビルを建設し始め、サムスングループも CCTV 南側の土地を

自社ビル建設のために落札した。

<規模、伸びともに目立つ卸・小売業向け投資>

産業別でみると、第一次産業の伸び率は 82.8%減と大きく低下した(表 3 参照)。第二次産業

は 12.4%増と 2 ケタの伸び、全投資実行額の 88.5%を占める第三次産業も、上半期は 2.4%増

だったが通年では 10.9%と 2 ケタ増になった。

表3 北京市の産業別直接投資(11年) (単位:100万ドル、%)

契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比農林水産業 13 0.1 △ 3.2 2 0.0 △ 82.8建築業 8 0.1 △ 58.8 23 0.3 470.1製造業 1,197 10.6 9.6 633 9.0 △ 7.6交通運輸・倉庫業 1,216 10.8 30.3 163 2.3 9.1情報サービス・ソフトウエア産業 1,923 17.0 93.5 1,092 15.5 14.5卸・小売業 1,963 17.4 84.2 1,154 16.4 74.8金融業 293 2.6 △ 1.6 277 3.9 47.5不動産業 772 6.8 △ 34.9 1,125 16.0 △ 20.6リース・ビジネスサービス業 2,634 23.3 29.8 1,904 27.0 8.4

投資性公司 1,703 15.1 106.6 1,358 19.2 17.0合計 11,298 100.0 33.1 7,054 100.0 10.9(出所)表2に同じ

契約ベース 実行ベース

業種別では、リース・ビジネスサービス業の金額が最も多く、8.4%増の 19 億 363 万ドルと全投

資実行額の 27.0%を占めた。うち投資性公司は 17.0%増の 13 億 5,767 万ドル、契約額は約 2.1

倍で、今後も拡大が予想される。

Page 18: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 18

このほか伸びが顕著だったのは建築業の 5.7 倍、卸・小売業の 74.8%増、金融業の 47.5%増。

特に卸・小売業は金額もリース・ビジネスサービス業に次ぐ規模に拡大した。その一方で製造業

は、上半期の 31.1%増から通年で 7.6%減とマイナスに転じた。不動産業も 2 割を超す減少とな

った。金額は 11 億 2,539 万ドルとリース・ビジネスサービス業、卸・小売業に次ぐ規模だったもの

の、取引抑制策強化の影響があったとみられる。

<電子情報産業など 5 分野の 5 ヵ年規画を発表>

北京市の第 12 次 5 ヵ年規画では、新世代情報技術、バイオ・医薬、新エネルギー、省エネ・環

境、新エネルギー自動車、新素材、ハイテク装備、航空宇宙の8産業を戦略性新興産業として位

置付けている。15 年末までには、売上高が 500 億元(1 元=約 13 円)を超える大企業を育成す

ること、イノベーション能力の高い中小企業を創出することを目標として打ち出している。さらに

11 年 10 月 27 日には、「北京市の電子情報産業、設備製造産業、自動車産業、バイオ医薬産業、

都市型産業に関する第 12 次 5 ヵ年規画期の発展計画および工業産業分布合理化に関する指

導文書」を発表した。

電子情報産業については、液晶パネル(TFT-LCD)の8.5世代ラインを中心に、液晶産業チェ

ーンと関連産業の整備やハイエンドの汎用 IC 設計・開発の強化、LED 照明の産業チェーンの構

築などが盛り込まれている。

また設備製造産業では、スマートグリッド建設を推進するため、風力発電、太陽光発電、燃料

電池などの発展を図るほか、省エネ設備、環境保護や資源リサイクル設備といった関連設備の

規模拡大による資源リサイクル体系の構築が方針として打ち出された。自動車産業では、自主

ブランド車として北京汽車の高級セダンやスポーツ用多目的車(SUV)の開発、関連部品の自主

開発、車載エレクトロニクス産業の育成の加速などを挙げている。

バイオ医薬産業では化学製薬、漢方薬、医療機器、農業バイオなどの育成を、都市型産業で

は食品飲料、アパレル、家具など市民の生活レベルの向上やライフスタイルの変化、健康意識

の高まりによって新たに形成された「健康、保健、運動、リフレッシュ」関連産業の発展を目指す。

戦略性振興産業と併せ、今後の経済発展を支える支柱産業にしていく方針だ。

<天津市:契約、実行額ともに急拡大する日本からの投資>

11 年の天津市の対内直接投資は、契約件数が前年比 7.1%増の 634 件、契約額は 10.1%増

の 168 億 3,472 万ドル、実行額は 20.4%増の 130 億 5,602 万ドルと、件数は 05 年以来の増加に

転じ、金額も契約、実行ベースとも前年に続き 2 ケタ増となった。

国・地域別の投資状況(実行額)をみると、第1位は香港で 38.7%増の 62 億 6,866 万ドル、第2

位は英領バージン諸島で 34.7%増の 10 億 4,234 万ドルと、いずれも 3 割を超える高い伸びだっ

た(表 4 参照)。第3位は日本で、88.3%増の 10 億 827 万ドルと急増した。日本からの投資は 10

年下半期から増加傾向が顕著で、契約額でも 11 年は 2.7 倍の 11 億 9,225 万ドルと急増した。

一方、前年に 72.5%増の伸びを記録した韓国は 15.2%減の 8 億 8,626 万ドルで第4位、第5

位はシンガポールで 22.7%増の 7 億 1,250 万ドルだった。前年に 3.3 倍の伸びを記録した米国は

28.4%減少した。

Page 19: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 19

投資状況を産業別にみると、全投資の 43.7%を占める製造業の実行額は、14.9%増の 57 億

72 万ドルと、伸び率は前年(28.0%増)に続き 2 ケタ増だったものの、13.1 ポイント鈍化した(表 5

参照)。一方、サービス業を中心とした第三次産業の実行額は、前年の伸び率を 10.5 ポイント上

回る 25.9%増の 72 億 2,600 万ドルと順調に増加しており、全投資額の 55.3%を占めた。うちリー

ス・ビジネスサービス業は、投資性公司の設立が増えたことなどから 2.2 倍増、不動産業は 2 倍

の 18 億 5,285 万ドルと、前年の減少から大幅な増加に転じた。

天津経済技術開発区(TEDA)は、「特に TEDA と天津エコシティー内での不動産開発が急速に

進められていることもあり、香港、シンガポール系などを中心に投資が急増した」と述べている。

一方、銀行・証券・保険業は 71.7%減の 2 億 6,333 万ドル、交通運輸・倉庫業は 36.1%減の 8

億 4,077 万ドル、建築業は 22.5%減の 1 億 326 万ドルと大きく落ち込んだ。

表4 天津市の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 247 39.0 10.3 8,292 49.2 7.9 6,269 48.0 38.7

2 英領バージン諸島 29 4.6 △ 40.8 1,787 10.6 △ 27.6 1,042 8.0 34.7

3 日本 67 10.6 39.6 1,192 7.1 174.6 1,008 7.7 88.3

4 韓国 56 8.8 △ 20.0 1,104 6.6 16.1 886 6.8 △ 15.2

5 シンガポール 26 4.1 0.0 720 4.3 160.6 713 5.5 22.7

6 米国 59 9.3 20.4 659 3.9 △ 49.2 552 4.2 △ 28.4

7 ドイツ 8 1.3 △ 11.1 166 1.0 29.8 313 2.4 79.6

8 英国 5 0.8 △ 37.5 86 0.5 1161.1 53 0.4 △ 43.9

9 イタリア 5 0.8 66.7 23 0.1 27.8 44 0.3 72.2

10 台湾 27 4.3 8.0 149 0.9 64.0 38 0.3 △ 49.4

(注)順位は実行ベースによる。

(出所)天津市政府提供資料

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

表5 天津市の産業別直接投資(11年) (単位:100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

農業 3 0.5 0.0 39 0.2 84.0 26 0.2 79.4

建築業 4 0.6 △ 55.6 249 1.5 93.9 103 0.8 △ 22.5

製造業 140 22.1 △ 0.7 5,383 32.0 60.2 5,701 43.7 14.9

交通運輸・倉庫業 55 8.7 103.7 1,666 9.9 △ 25.6 841 6.4 △ 36.1

卸・小売業・飲食業 126 19.9 △ 14.3 991 5.9 △ 61.5 646 4.9 17.3

不動産業 12 1.9 △ 20.0 1,228 7.3 26.9 1,853 14.2 101.1

リース・ビジネスサービス業

154 24.3 5.5 4,029 23.9 12.8 2,169 16.6 115.4

銀行・証券・保険業 0 0.0 △ 100.0 259 1.5 △ 54.4 263 2.0 △ 71.7

その他 140 22.1 30.8 2,991 17.8 56.7 1,454 11.1 33.3

合計 634 100.0 7.1 16,837 100.0 10.1 13,056 100.0 20.4

(出所)表4に同じ

契約ベース 実行ベース

Page 20: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 20

<自動車、電気電子分野で投資が大型化>

天津市商務委員会の発表によると、11 年に新たに認可された投資プロジェクトは、前年同様

に大型案件が増加している。契約件数 634 件のうち、1,000 万ドル以上のプロジェクトは 170 件に

上った。投資の大型化が進んでいる業種としては、製造業では引き続き自動車・同部品や液晶、

太陽光、パソコンなどの電気電子分野などで、中国国内需要の拡大に伴う生産規模の拡大を目

的とした投資や増資が増えている。

また TEDA によると、11 年の日系企業による投資は非常に活発で、アイシン精機が投資性公

司を設立(資本金 6,500 万ドル)するなど、特に自動車・同部品企業が管理機能の拡充や生産拡

大を目的に増資をするケースが目立った。11 年はティア 1、ティア 2 を中心とするサプライヤーの

増資が増えており、TEDA向けの日本企業の投資の約99%が増資によるものだったという。今後

も自動車関連部品や工作機械の投資プロジェクトが見込まれている。

一方、サービス業分野では、ヤマダ電機が 11 年6月に天津市内に中国2号店をオープンした。

セブン-イレブンも7月に TEDA に天津2号店を開店し、三越伊勢丹ホールディングスも 12 年上

半期に TEDA に「伊勢丹」の天津2号店をオープンすることが決まっている。また三菱商事も6月

30 日、現地デベロッパーの陽光新業地産と合弁会社を設立し、TEDA 内にショッピングモールを

建設すると発表している。特にここ1、2 年、TEDA では住宅地の造成が急速に行われ、居住人口

も増加している。新たな商業地としての発展が期待され、小売業の新規投資が急増している。そ

の中には、北京で日本食レストランを展開している中小企業や個人事業者からの投資も目立っ

て増えてきている。天津で事業展開する日系飲食業者に聞いたところ、天津の大衆向け日本料

理店では、一人当たり消費額は北京の 80 元前後に比べ高く、平均して 100 元を超えているとい

う。

<ハイテク、省エネ・環境などが外資奨励分野>

天津市の第 12 次 5 ヵ年規画では、航空宇宙、新世代情報技術、バイオ技術、新エネルギー、

新素材、省エネ・環境、ハイテク設備製造の 8 大産業を、戦略性新興産業として位置付けている。

外資導入を奨励する分野としては、ハイテク、省エネ・環境、新エネルギー、現代農業、金融、貿

易、物流、住民サービス分野などが挙げられており、教育、医療など従来規制が多かった分野も、

今後は徐々に開放するとしている。また、これまでのグリーンフィールド型の投資に加え、証券投

資や M&A などによる投資も促進する。

天津市は 12・5 規画が終了する 15 年に、直接投資(実行額)の累計額を 800 億ドル超にする

という目標を打ち出した。累計額は 11 年末時点で、既に目標を上回る 800 億 9,422 万ドルに達し

た。

<河北省:件数、契約、実行額ともに 2 割超の増加>

11 年の河北省の対内直接投資状況は、契約件数が前年比 20.7%増の 195 件、契約額は

28.3%増の 42 億 2,000 万ドル、実行額は 22.2%増の 46 億 8,000 万ドルだった。投資額が 1,000

万ドルを超えた大型案件の契約件数は 54 件、うち 9 件が 5,000 万ドルを超えており、投資の大

Page 21: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 21

型化が進んでいる。

国・地域別の投資状況(実行額)をみると、第1位は香港で 38.0%増の 26 億 9,000 万ドル、第2

位はケイマン諸島で 91.3%増の 3 億 5,000 万ドルと急増した(表 6 参照)。英領バージン諸島は

62.3%減と大幅に減少したものの、2億ドルの大台を維持し、第3位。第4位は米国で、3.3%減の

1 億 8,000 万ドルだった。第5位は日本で、25.5%増の 1 億 7,000 万ドルと順調な増加となった。

業種別では、製造業を中心とする第二次産業(実行額)が 23.9%増の 35 億 2,000 万ドルと、伸

び率は前年のマイナスから 2 ケタ増に転じた。全投資金額に占めるシェアも 75.2%と拡大した。

一方、前年 2.6 倍と急増した第三次産業は 19.1%増の 10 億 9,200 万ドルと、伸び率は大きく鈍

化したものの、初めて10億ドルの大台を超えた。シェアはここ2年、23%を超えており、同分野へ

の投資額も着実に増加している。

表6 河北省の国・地域別対内直接投資(11年) 表7 河北省の産業別直接投資(11年)

(単位:件、%、100万ドル) (単位:件、100万ドル、%)

実行額 シェア 前年比 実行額 構成比 前年比

1 香港 2,690 57.5 38.0 09年 10 0.3 △ 82.8

2 ケイマン諸島 350 7.5 91.3 10年 73 1.9 630.0

3 英領バージン諸島 200 4.3 △ 62.3 11年 70 1.5 △ 4.1

4 米国 180 3.8 △ 3.3 09年 3,240 89.9 7.9

5 日本 170 3.6 25.5 10年 2,841 74.2 △ 12.3

6 シンガポール 160 3.4 △ 20.1 11年 3,520 75.2 23.9

7 英国 90 1.9 42.1 09年 348 9.7 △ 3.6

8 韓国 86 1.8 134.0 10年 917 23.9 163.5

9 マレーシア 67 1.4 62.6 11年 1,092 23.3 19.1

10 オランダ 56 1.2 61.7

(出所)河北省政府提供資料

第二次産業

第三次産業

(出所)河北経済年鑑2010、2011年版、2011年の数字は河北省政府提供資料

順位

国・地域実行ベース 実行ベース

第一次産業

河北省政府が発表した第 12 次 5 ヵ年規画では、新エネルギー、新素材、新世代情報技術、

ハイテク設備製造、省エネ・環境、海洋産業の 6 つを戦略性新興産業として位置付けている。そ

の一方で、鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、製紙など、立ち遅れた産業の淘汰(とうた)を進めること

が強調されており、省エネや二酸化炭素の排出削減を強力に推進するなど、循環経済の構築に

力点を置くことが示されている。

(清水顕司)

Page 22: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 22

契約・実行ベースともに伸び率は上海市がトップ(華東地域)

●上海発

2011 年の華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の対内直接投資は、契約件数 1 万 516 件、実

行額 563 億 9,900 万ドル(前年比 11.4%増)だった。実行額の伸びは全国平均(9.7%増)を上回

り、シェアは中国全体の約 48.6%を占めた。華東地域の中で投資額が最も多かったのは江蘇省

で、321 億 3,200 万ドル(実行ベース)と華東地域全体の約 57%を占めたが、伸び率では上海市

が契約ベースで 31.3%増、実行ベースで 13.3%増と最も高かった。

<上海市:第三次産業向け実行額が初の 100 億ドル突破>

上海市の 11 年の対内直接投資は、契約件数が前年比 10.8%増の 4,329 件、契約額が 31.3%

増の 201 億 300 万ドル、実行額は 13.3%増の 126 億 100 万ドルと、契約額、実行額ともに、10

年の伸びを大きく上回った(表 1 参照)。

表1 華東地域の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 前年比 契約額 前年比 実行額 前年比09年 3,090 △ 17.6 13,301 △ 22.3 10,538 4.510年 3,906 26.4 15,307 15.1 11,121 5.511年 4,329 10.8 20,103 31.3 12,601 13.309年 4,219 △ 0.4 50,981 0.5 25,323 0.810年 4,661 10.5 56,833 11.5 28,498 12.511年 4,496 △ 3.5 59,554 4.8 32,132 12.809年 1,738 △ 6.5 16,018 △ 10.1 9,940 △ 1.310年 1,944 11.9 20,047 25.2 11,002 10.711年 1,691 △ 13.0 20,584 2.7 11,666 6.009年 9,047 △ 8.1 80,300 △ 6.3 45,801 1.210年 10,511 16.2 92,187 14.8 50,621 10.511年 10,516 0.0 100,241 0.9 56,399 11.4

上海市

江蘇省

浙江省

合計

(出所)各市・省統計年鑑、対外経済統計データおよび各省統計局発表を基に作成

省・市名 年契約ベース 実行ベース

産業別では、第三次産業が契約件数で 15.6%増の 4,057 件、実行額で 18.1%増の 104 億

3,000 万ドルとなり、実行額は 10 年の伸び(16.0%増)を上回り、初めて 100 億ドルを超えた。一

方で第二次産業の実行額は、3 年連続で減少している。構成比でみると、第三次産業の割合は、

契約・実行ベースともに、年々増加傾向にあり、11 年は契約件数で全体の 93.7%、実行額で全

体の 82.8%を占め、上海市では第三次産業への外資の進出が顕著になっている(表 2 参照)。

Page 23: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 23

表2 上海市の産業別直接投資 (単位:件、100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 5 0.2 400.0 43 0.3 227.1 82 0.8 550.410年 26 0.7 420.0 15 0.1 △ 64.6 89 0.8 9.311年 10 0.2 △ 61.5 28 0.1 80.0 38 0.3 △ 58.009年 355 11.5 △ 23.8 2,533 19.0 △ 44.3 2,840 27.0 △ 12.210年 372 9.5 4.8 2,885 18.8 13.9 2,201 19.8 △ 22.511年 262 6.1 △ 29.6 2,999 14.9 4.0 2,133 16.9 △ 3.109年 2,730 88.3 △ 16.8 10,724 80.6 △ 14.6 7,616 72.3 11.410年 3,508 89.8 28.5 12,407 81.1 15.7 8,831 79.4 16.011年 4,057 93.7 15.6 17,076 84.9 37.6 10,430 82.8 18.1

(出所)「上海統計年鑑」、「上海貿易外経統計月報」を基に作成

第三次産業

年契約ベース 実行ベース

第一次産業

第二次産業

11 年には上海市で外資企業による小売業の店舗拡大計画がみられた。英マークス&スペン

サー、スウェーデンのイケア、タイのロータス、香港のハチソンワンポア・グループの百佳(パーク

ンショップ)などが出店を拡大する計画。日本企業では、キリン堂が1月に合弁会社を設立し、日

中双方への商品供給、新規出店などのノウハウを確立し、ドラッグストア業態の確立を図ると発

表。また、グローウェルホールディングスも7月、上海市に合弁会社を設立し、中国でドラッグスト

アを展開すると発表している。

<製薬、医療、福祉分野への外資進出が目立つ>

また 11 年は、外資企業による製薬、医療、福祉分野への進出が目立った。スイスのロシュ(製

薬)は製薬工場を拡張。またスイスのロンザ(製薬・化学)は合弁会社を設立し、ジェネリック医薬

品を開発・生産する計画があり、ドイツのベーリンガー・インゲルハイム(製薬)も製薬工場の拡

張計画がある。デンマークのルンドベック(製薬)は研究開発センターを開設した。

日本企業では、武田薬品工業が3月、中国事業を統括する持株会社として、武田(中国)投資

を設立した。同社は、中国事業拡大に向けた戦略を立案・遂行するとともに、管理部門、開発部

門で、中国での新製品の開発推進や営業人員増員、生産設備の更新など、投資活動全般を行

う。また第一三共も 11 月、第一三共(中国)投資を設立した。同社は、北京と上海の子会社の事

業を統括管理し、戦略的な投資を進める。

さらに、医薬・医療向けにサービスを行う事業計画もあった。5月、ケアネット(医薬営業支援、

医療コンテンツサービス)は香港に合弁会社を設立し、その子会社を上海市に設立すると発表し

た。上海市の子会社では、医師、医療従事者向けの医療専用サイトを立ち上げ、医薬品企業へ

のプロモーション支援、医師への継続医学教育支援事業などを行う。また7月には、イーピーエ

ス(医薬品・医療機器開発支援)が合弁会社を設立し、医薬品開発業務受託(CRO)事業、臨床

試験サービスを行うと発表した。HOYA は、7月に医療用内視鏡事業で初の中国現地法人を上

海に設立。中国での販売・サービス活動を強化する。

福祉関係への進出では、メディカル・ケア・サービスが7月に合弁会社を設立し、有料老人ホ

ームの運営・管理、介護人材の育成・教育、福祉用具の流通・販売などのサービスを展開すると

発表。またニチイ学館(医療関連・ヘルスケア事業)が9月に合弁会社を設立し、福祉用具の卸

Page 24: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 24

販売事業を行うと発表した。

また、アドバンテッジ リスク マネジメント(メンタルへルスケア)は、11 月から企業向けのメンタ

ルへルス対策(EAP)サービスの提供を開始している。

さらに、上海市では、中国での労働者の人件費高騰を受けて、製造設備の自動化を進める産

業用ロボットの生産・販売拠点の設立が進められた。

蛇の目ミシン工業は2月、卓上ロボットなどの産業機器製品・部品の販売会社を設立すると発

表した。セーラー万年筆も同月、上海市の工場を増設し、産業用ロボットの生産を行うと発表。ア

スカは5月、ロボットシステム事業の中国拠点を設立し、ロボットシステム・自動化装置の設計、

製作、販売を開始した。10 月には安川電機が嘉定区にロボットシステムの新工場を設立すると

発表している。

また三菱電機は、FA(ファクトリーオートメーション)機器などの販売・サービス体制を強化する

ため、顧客対応拠点として上海市に FA トータルソリューションセンターを新設し、7月から業務を

開始した。同センターは FA 機器などを常設展示し、実機の実演・サンプル加工、技術相談、保守

サービス、コールセンターなどの機能を担う。なお同社は2月、FA システムの開発・設計を手掛

ける合弁会社の設立も発表している。

<国・地域別では日本が米国を上回り第2位に>

国・地域別の契約ベース金額は、米国が上海ディズニーランド建設などの効果により、前年比

5.3 倍の 19 億 1,500 万ドルと大幅に増えたものの、日本はそれを上回る 20 億 5,300 万ドルで、

香港に次いで 2 位に入った。伸びは 58.2%増と 10 年(12.8%増)を大きく上回った(表 3 参照)。

表3 上海市の国・地域別対内直接投資(11年)(単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比1 香港 1,448 33.4 8.5 8,601 42.8 26.32 日本 645 14.9 14.0 2,053 10.2 58.23 米国 318 7.3 7.1 1,915 9.5 433.44 シンガポール 207 4.8 3.5 1,671 8.3 △ 25.85 バージン諸島 111 2.6 △ 0.9 830 4.1 △ 14.36 台湾 386 8.9 △ 3.3 503 2.5 222.47 ケイマン諸島 18 0.4 △ 14.3 225 1.1 △ 51.98 英国 74 1.7 4.2 124 0.6 30.5

(出所)「上海貿易外経統計月報」を基に作成

順位

国・地域契約ベース

日本企業の上海市への進出動向をみると、最も多くみられるのが、各種製品の卸売り・輸出

入を行う企業だ。取り扱い製品は、衣類・日用雑貨・化粧品などの家庭用品から食料品・飲料、

電子製品・部品、機械設備・部品、化学工業製品・原料、プラスチック製品、ゴム製品など、多岐

にわたっている。

次に多いのは、コンサルティング企業だ。事業内容としては、企業管理、投資管理、経済・ビジ

ネス情報、貿易、マーケティング、営業企画、品質管理などの経営コンサルティングや機械設備、

Page 25: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 25

設計、建築、食品などに係る技術コンサルティングなどがある。

また、IT サービス企業の進出も多い。コンピュータソフトウエアやネットワーク技術の設計・開

発・製作、システムインテグレーション、IT 関連の技術サービスやコンサルティングを行う。

そのほか、飲食業、物流業、倉庫業、広告業、リース業、介護施設の運営管理などへの日本

企業の進出も見受けられた。

<上海市での地域統括本部・投資性公司の設立は累計で全国第1位に>

11 年は、地域統括本部 48 社、投資性公司 27 社、外資研究開発センター15 社がそれぞれ新

設された。地域統括本部、投資性公司の設立は 09 年以降、年々増加している。これまでの累計

では、地域統括本部は 353 社、投資性公司は 240 社となり、全土で第1位。また、外資研究開発

センターは 334 社になった(表 4 参照)。

日本企業の地域統括本部、投資性公司、研究開発センターの設立の動きも活発だ(次ページ

「11 年に設立された地域統括本部、投資性公司、研究開発センター」参照)。

表4 上海市の新規「総部経済」企業数 (単位:社)09年 10年 11年 累計

地域統括本部 36 45 48 353投資性公司(傘型企業) 13 22 27 240外資研究開発センター 30 15 15 334

合計 79 82 90 927

(出所)上海市統計局発表を基に作成

上海市は、08 年に公布された「多国籍企業による地域本部設立を奨励する規定」を、11 年 12

月 19 日に改正・施行した。改正後の規定ではこれまでと同様、新たに登記する投資性公司と管

理性公司は、地域本部としての認定を受けた場合、開設と建物賃借に関する資金援助を得られ

ると規定している。さらに今回の改正では、多国籍企業がアジア地域やアジア太平洋地域など、

大きな区域を対象とする地域本部を設立する場合についての資金援助に関する規定が新たに

盛り込まれている。これらの措置の有効期間は、11 年 12 月 19 日から 5 年間だ。

また上海市では、11 年1月 1 日から 15 年 12 月 31 日の間に外資研究開発センターが上記の

認定を取得し、翌月 1 日以降に買い入れた中国産や輸入の設備(実験設備、装置、機械)につ

いて、優遇税制を実施している。輸入設備については輸入関税や増値税などが免除され、中国

産設備については増値税が全額還付される。

Page 26: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 26

11年に設立された地域統括本部、投資性公司、研究開発センター

日系企業

日立オートモティブシステムズ (自動車機器・システム事業)長瀬産業 (化学品、合成樹脂などの輸出入)古河電気工業 (光ファイバーケーブル、ワイヤハーネスなどの製造)昭和電工 (化学品、無機、アルミニウム、エレクトロニクス)日本ゼオン (合成ゴム、化成品、合成樹脂)近鉄エクスプレス (国際総合物流) ※社名変更・業務追加ワールド (衣料品)日本電産 (精密小型モーターなどの製造)日本毛織 (繊維製品)IHI (プラント・機械・設備製造)ナブテスコ (鉄道車両用ブレーキ、油圧機器類などの製造)日本化薬 (機能化学品、医薬)

その他

米メドトロニック (医療機器)米ヒューレット・パッカード (パソコン関連機器)米ニュースキン (スキンケア)米ウォルマート (スーパーマーケット)

日系企業

神戸製鋼所 (鉄鋼、溶接、アルミ・銅、産業機械、建設機械など)武田薬品工業 (製薬)クボタ (農業機械、建設機械、水・環境システムなど)スタンレー電気 (LED・光センサー、自動車照明など製造)クレハ (機能製品、化学製品、樹脂製品)第一三共 (製薬)安川電機 (ロボット・インバーター・サーボ・モーター、産業用ロボットなど)ホシザキ電機 (業務用厨房機器)ユニ・チャーム (衛生用品)

その他 英BP (石油)

日系企業シャープ (エレクトロニクス機器、電子部品)島津製作所 (分析計測機器)東レ (繊維、プラスチック・ケミカル、環境・エンジニアリング事業など)

その他

米イーライ・リリー (製薬)米エコラボ (化学)米ゼネラルモーターズ米エクソン・モービル (石油)米ハンツマン (化学)ドイツのコンチネンタル (自動車部品)フランスのフォルシア (自動車部品)インドのインフォシス・テクノロジーズ (ITサービス)デンマークのルンドベック (製薬)

(注)設立予定を含む。(出所)企業発表、各種報道などを基に作成

企業名

地域統括本部

投資性公司(傘型企業)

外資研究開発センター

<江蘇省:投資額の増加を牽引したのは蘇南、伸びが高いのは蘇北>

江蘇省の 11 年の対内直接投資は、契約件数が前年比で 3.5%減少したものの、契約額は

4.8%増の 595 億 5,400 万ドル、実行額は 12.8%増の 321 億 3,200 万ドルだった。実行額の伸び

率は、10 年の伸び(12.5%増)とほぼ同水準だ(表 1 参照)。

契約ベースでみると、1 件当たりの契約額は約 1,325 万ドルで、上海市(約 464 万ドル)に比べ

大型の案件が多い。

蘇北、蘇中、蘇南の地域別にみると、蘇南地域の実行額が 12.8%増の 209 億 4,700 万ドルと

最大で、江蘇省全体の 65.2%を占め、同省の投資額の増加を牽引している。一方で蘇北地域の

Page 27: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 27

実行額は 19.8%増と伸びが最も高い。金額も 55 億 7,300 万ドルと蘇中地域に迫っている。江蘇

省では、蘇北地域の投資額のウエートが年々高まる一方、蘇中地域の伸びは 11 年に1ケタ台に

鈍化した。

都市別では、蘇州市への投資額が最も多く 90 億 1,600 万ドル(実行ベース)だったが、伸び率

は 5.6%増にとどまった。一方で南京市が 33.3%増(35 億 6,600 万ドル)、常州市が 24.9%増(30

億 5,200 万ドル)と、11 年の江蘇省の投資額の伸びに大きく貢献している。蘇北地域では、淮安

市が 54.1%増(16 億 2,000 万ドル)となり、3 年連続で高い伸びを示している。また徐州市も

44.7%増(14 億 6,600 万ドル)と大幅に増加した(表 5 参照)。

表5 江蘇省の地域別直接投資 (単位:100万ドル、%)

実行額 前年比 実行額 前年比 実行額 前年比25,323 0.8 28,498 12.5 32,132 12.8

蘇南 17,414 3.6 18,569 6.6 20,947 12.8蘇州市 8,227 1.2 8,535 3.8 9,016 5.6南京市 2,282 0.9 2,676 17.3 3,566 33.3無錫市 3,203 1.2 3,300 3.0 3,505 6.2常州市 2,261 10.9 2,443 8.1 3,052 24.9鎮江市 1,441 19.9 1,615 12.1 1,808 12.0

蘇中 4,469 △ 17.3 5,279 18.1 5,612 6.3南通市 2,005 △ 31.7 2,061 2.8 2,166 5.1揚州市 1,519 0.6 2,056 35.4 2,103 2.3泰州市 1,056 0.6 1,363 29.0 1,417 4.0

蘇北 3,440 17.9 4,650 35.2 5,573 19.8塩城市 1,044 10.6 1,304 24.9 1,688 29.5淮安市 547 51.8 1,051 92.2 1,620 54.1徐州市 698 19.8 1,013 45.2 1,466 44.7連雲港市 1,040 11.2 1,101 5.9 610 △ 44.6宿遷市 112 18.0 181 61.9 190 5.0

(注)各市の合計は各地域・江蘇省の合計と合致しない。(出所)「江蘇統計年鑑」および「江蘇経済動態」を基に作成

江蘇省

地域09年 10年 11年

11 年、江蘇省では、製造・販売拠点の設立・拡充に関する投資が多くみられた。また、卸・小

売り、物流、住宅販売、医薬・医療関連の分野への投資もあった。

蘇州市では、製造業ではアイシン・エィ・ダブリュが1月、自動車用自動変速機(AT)の生産会

社の設立を発表。資本金は 1 億ドル、生産能力は年間 24 万台を予定している。またプレス工業

は、7月にミニショベル用キャビンの製造会社の設立を発表。ノリタケカンパニーリミテドが9月、

研削砥石工場の建設を発表。生産開始は12年7月を予定している。ダイキン工業は12月、住宅

用と店舗用エアコンの生産会社を設立した。資本金は約 150 億円(12 億元)で 12 年4月に生産

開始の予定。

製造業以外への進出では、積水ハウスが5月、蘇州市に住宅販売会社を設立すると発表した。

資本金は 2 億 5,975 万ドル、蘇州市相城区で総戸数約 2,000 戸のマンション開発を行う計画。ま

たイズミヤは 11 月、中国 1 号店「泉屋百貨」を蘇州市にオープンした。売場面積は 2 万 4,691 平

Page 28: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 28

方メートルで、うち直営売場は 3,281 平方メートルだ。

なお蘇州市では、県級市の常熟市への生産拠点の設置を目的とした日本企業の投資も活発

になっている。

日本企業以外の蘇州市への進出としては、韓国のサムスン電子、台湾の長興化学工業(熱硬

化性樹脂)、イタリアの GMG(自動車部品)などの生産拠点設置がある。

常州市では、製造業では住友電気工業が、自動車部品などの加工に使われる切削工具の需

要拡大を受け、4月に超硬ドリルとダイヤ焼結体チップの量産拠点を設立すると発表した。資本

金は 1,170 万ドル。日本研紙は5月、研磨布紙などを製造する新たな生産会社を設立したと発表。

資本金は 1,500 万ドル。また、ナブテスコは、中国の建設機械市場の拡大を受け、6月に合弁会

社を設立し、建設機械走行用油圧モーターの製造・販売を行うと発表した。資本金は 4,000 万ド

ル。なお、同社は1月にも、鉄道車両用ブレーキ・ドア装置の製造・販売を行う合弁会社を設立し

ている。安川電機は 12 月、産業用ロボットの生産・販売を行う会社の設立を発表した。資本金は

2,250 万ドル。

製造業以外の進出では、丸運が 11 月、合弁で物流会社を設立し営業を開始した。中国国内

の一般貨物運輸業務などを行う。また、フタバ産業は8月、中国国内のグループ会社の統括と管

理支援を行う地域統括会社を設立すると発表している。

日本企業以外では、米テレックス(建設機械)、ドイツのマン(自動車・機械)と KSB(ポンプ・バ

ルブ)、オランダのアクゾノーベル(化学)などが生産拠点として常州市に進出する。

南京市では、なとりが8月、香港旺旺と丸紅の 3 社で合弁会社を設立し、おつまみ食品の製造

販売を行うと発表した。資本金は 1,500 万ドル。また、NTN は産業機械用軸受けを生産する新会

社の設立を決定し、9月 8 日、南京経済技術開発区と調印式を行った。資本金は約 100 億円。綜

研化学は、11 月、粘着剤製品の製造・販売を行う新会社を設立。資本金は 1,300 万ドル。日本企

業以外では、スウェーデンのアトラスコプコ(産業機械)が研究開発センターを新設する。

中国では、11 年 10 月から外国人就業者にも社会保険への加入が義務化されたが、蘇州市で

は 12 年2月、「蘇州市で就業する外国人の社会保険加入業務の遂行に関する通知」を公表し、

外国人の社会保険加入に関する細則を全国に先駆けて実施した。蘇州市区〔金●(門がまえの

中に昌)区・平江区・滄浪区・蘇州国家高新技術産業区〕に所在する企業に就業する外国人は、

2月中に社会保険加入手続きを行うことが求められた。

<浙江省:契約・実行ベースともに低調な伸び、寧波市への投資が活発>

浙江省の 11 年の対内直接投資は、契約件数が前年比 13.0%減の 1,691 件、契約額は 2.7%

増の 205 億 8,400 万ドル、実行額は 6.0%増の 116 億 6,600 万ドルと、契約・実行ベースともに、

10 年に比べ低調な伸びにとどまった(表 1 参照)。

都市別にみると、杭州市は実行額が 47 億 2,200 万ドルと、浙江省全体の約 40%を占めたが、

伸び率は 8.4%増にとどまり、09、10 年の 2 ケタ成長から1ケタ台に縮小した。一方で寧波市への

投資が活発になっている。寧波市の実行額は 21.6%増の 28 億 1,200 万ドルと大幅に増加した。

また嘉興市(6.9%増)、湖州市(2.3%増)も伸びが低く、紹興市は 15.6%減った(表 6 参照)。

Page 29: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 29

表6 浙江省の地域別直接投資 (単位:100万ドル、%)

実行額 前年比 実行額 前年比 実行額 前年比9,940 △ 1.3 11,002 10.7 11,666 6.0

杭州市 4,014 21.2 4,356 12.3 4,722 8.4寧波市 2,210 △ 12.2 2,313 5.4 2,812 21.6嘉興市 1,335 △ 1.8 1,610 20.6 1,721 6.9湖州市 811 1.1 919 13.3 940 2.3紹興市 811 5.1 953 17.5 805 △ 15.6その他 759 △ 42.1 850 12.0 666 △ 21.3

浙江省

(出所)「浙江統計年鑑」および各市商務局発表を基に作成

地域09年 10年 11年

杭州市では、ケンコーコムが6月、中国最大手クラスのドラッグストアチェーンの老百姓大薬房

連鎖と合弁会社を設立するため、合弁契約書を締結した。合弁会社では、日本の健康関連商品

を中心とした商品を中国小売事業者へ卸売りし、中国での e コマースを展開する。また7月には

アヲハタが、フルーツ加工品の製造・販売を行う子会社を設立すると発表。大日本スクリーン製

造は9月、CTP 装置(印刷用刷版描画装置)の製造工場を完工した。総工費は約 3 億円としてい

る。

日本企業以外では、イタリアのマニエッティ・マレリ(自動車部品)がショックアブソーバーを、ま

たフィアット(自動車)が制振ダンパーを杭州市で合弁生産する。またスイスのノバルティス(製

薬)は、地元企業の浙江天元薬業と合弁し、製薬分野での生産・研究・販売面での協力関係を

緊密化する。契約額は 1 億 8,800 万ドル。浙江天元薬業は民営の大手ワクチンサプライヤーで、

ワクチン H1N1 の生産量は中国で第2位だ。

なお民営企業が多数ある杭州市では、外資企業と民営企業の合弁が進んでいる。11 年、杭

州市の民営企業との合弁外資投資額は 14 億 2,700 万ドルで、実行額の約 3 割を占めている。

寧波市では2月、日本製鋼所が中・小型電動射出成形機の製造子会社を設立したと発表した。

またオランダのアクゾノーベル(化学)は新工場を建設する計画で、カナダのトリプル・ファイブ・グ

ループは大型の商業施設を寧波市に建設する。

浙江省では6月、舟山諸島新区が国家級新区として国務院から承認された。上海浦東新区、

天津濱海新区、重慶両江新区に次ぐ4番目の国家級新区だ。舟山諸島新区では、a.浙江省の海

洋経済発展を先導する区、b.海洋総合開発試験区、c.長江デルタ地域の経済発展の重要な成

長役、として位置付けられており、港湾物流、船舶・海洋プロジェクト、グリーンエネルギー、海洋

資源開発利用など 5 大海洋戦略性産業の発展を推進することに重点を置く。

11 年には、舟山大口商品取引所の運営体制が整えられ、10 月末に取引を開始した。同取引

所では、石油化学工業製品、石炭、非鉄金属、鉄鉱石、紙パルプ、船舶などの大口商品が取引

される。15 年までに取引額は 2,000 億元以上に達し、20 年には取引額 5,000 億元を達成すると

している。

(鈴木貴詞、張培葉)

Page 30: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 30

日系企業の瀋陽進出が活発化(遼寧省)

●大連発

2011 年の遼寧省、瀋陽市、大連市の対内直接投資額(実行ベース)は、堅調な伸びをみせた。

第三次産業が目立った前年と異なり、第二次産業(主に製造業)の投資が伸びているのが特徴

だ。単なる製造拠点としてではなく、市場を見据えての進出や再投資が増加しており、なかでも

瀋陽への日系企業の進出が目立つ。

<遼寧省:実行額が 17%増加>

11 年の遼寧省の対内直接投資額は、実行ベースで前年比 17%増の 242 億 6,700 万ドルと、

前年に引き続き全国第2位。契約件数は29.1%減の1,050件、契約額は23.4%減の196億3,900

万ドルだった(表 1 参照)。

表1 遼寧省の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 1,629 100.0 23.5 28,184 100.0 38.9 15,444 100.0 28.5

10年 1,480 100.0 △ 9.2 25,635 100.0 △ 9.0 20,750 100.0 34.4

11年 1,050 100.0 △ 29.1 19,639 100.0 △ 23.4 24,267 100.0 17.0

09年 710 43.6 37.1 12,052 42.8 17.4 5,410 35.0 △ 9.8

10年 473 32.0 △ 33.4 8,121 31.7 △ 32.6 5,054 24.4 △ 6.6

11年 221 21.0 53.3 5,421 27.6 △ 33.2 5,502 22.7 8.9

09年 473 29.0 △ 6.7 6,575 23.3 9.2 6,017 39.0 20.2

10年 472 31.9 △ 0.2 8,087 31.5 23.0 10,031 48.3 66.7

11年 365 34.8 △ 22.7 5,276 26.9 △33.8 11,012 45.4 10.0

(出所)09年、10年:各省市統計年鑑、11年:各省市政府発表資料を基に作成

大連市

省・市名 年契約ベース 実行ベース

遼寧省

瀋陽市

省内への投資の牽引役を果たしているのは、沿岸の経済都市大連と省都の瀋陽だ。大連の

実行額は 10.0%増の 110 億 1,200 万ドル、瀋陽は 8.9%増の 55 億 200 万ドルだった。両市の投

資額を合計すると、全省の68.1%を占める。なお、大連の実行額は、3年連続で全国の副省級市

でトップになった。

このほか、中国 3 大油田の 1 つ遼河油田があり、石油化学関連産業が発達する盤錦市が、実

行額で約 2.2 倍の 20 億ドルと、大幅に増えた。

産業別では、第二次産業の実行額が 47%増の 123 億ドル、第三次産業は 4.6%減の 116 億

3,000 万ドルだった(表 2 参照)。10 年と異なり、金額、伸び率とも第二次産業が第三次産業を上

回った。瀋陽市対外貿易経済合作局の関係者は、南方や沿岸地域での人件費などのコスト上

昇を受け、製造業を中心に内外資を問わず、遼寧省、特に内陸の瀋陽に、移転したり新規に進

出したりする企業が増えていると話す。遼寧省全体では、国内企業からの投資が 45%増の

5,950 億 5,000 万元と大幅に増加している。

Page 31: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 31

表2 遼寧省の産業別直接投資(単位:件、100万ドル、%)

実行額 構成比 前年比09年 142 0.9 △ 10.110年 186 0.9 31.011年 340 1.4 82.809年 7,405 47.9 30.510年 8,367 40.3 13.011年 12,300 50.7 47.009年 7,897 51.1 27.710年 12,197 58.8 97.211年 11,630 47.9 △ 4.6

(出所)09年、10年:遼寧省統計年鑑、11年:11年遼寧省統計公報を基に作成

第三次産業

第一次産業

第二次産業

第一次産業

第二次産業

実行ベース

<瀋陽市:日本の投資伸び率は主要国でトップ>

瀋陽市の対内直接投資額(実行ベース)を国・地域別にみると、第1位は香港で、前年比

26.5%増の 34 億 1,900 万ドルだった(表 3 参照)。内陸の重工業都市だが、市場としての関心が

強まりつつあり、住民の所得水準向上なども相まって、不動産開発関連投資が盛んだ。

11 年5月には、香港世茂集団が計画面積 17 平方キロ、総投資額 280 億元(1 元=約 12.8 円)

の複合都市開発プロジェクトを発表したほか、12 月には香港坤業投資集団が複合商業施設の

建設を発表、第 1 期工事として 12 年4月から 20 億元を投じて、40 万平方メートルの開発を開始

するとしている。

表3 瀋陽市の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 71 32.1 △ 47.4 3,550 65.5 6.1 3,419 62.1 26.5

2 英領バージン諸島 2 0.9 △ 75.0 186 3.4 1,449.8 602 10.9 37.2

3 スイス 2 0.9 n.a. 413 7.6 62,500.0 358 6.5 n.a.

4 日本 39 17.6 △ 17.0 364 6.7 △ 16.3 312 5.7 49.8

5 韓国 38 17.2 △ 64.5 138 2.5 △ 90.3 167 3.0 △ 51.7

(注)順位は実行額順。

(出所)瀋陽市政府発表資料を基に作成

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

日本は第4位で、49.8%増の 3 億 1,200 万ドルだった。金額では、不動産開発関連で大型投資

が続く香港に及ばないものの、伸び率は主要国・地域の中でトップになった。

近年、中国の国内市場開拓を志向する日系企業が増えている。製造業では、工作機械市場

規模で世界一になった中国での販売拡大を目指し、北川鉄工所が油圧チャックの製造工場を 11

年4月に着工、12 年2月から生産を開始した。安川電機はサーボモーター、サーボアンプ需要に

対応するため、10 年6月竣工の第 1 工場の拡張と第 2 工場の新設に着手し、13 年には月産 10

万台体制を構築するとしている。

建築関連分野でも進出が続く。瀋陽市の南部の渾南新区では、13 年の「中国人民体育大会」

開催に合わせた関連施設建設計画や、市政府の移転などを含めた大規模な総合都市開発計画

Page 32: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 32

が進められており、既に日系企業が商機をつかんでいる。鹿島建設は基本都市計画策定に参

画し、地場企業と協力しながら建築産業の現代化・高度化を手掛ける。積水ハウスは 11 年4月、

中国国内向け省エネ・高性能工業化住宅需要に対応するため、80 億円を設備投資し、鉄骨住

宅生産工場に着工した。12 年春には年間生産能力 7 万 2,000 平方メートルの工場が稼働する予

定だ。11 年3月には LIXIL(旧 INAX)が外壁用大形タイル工場に着工し、12 年春から年間生産能

力 100 万平方メートルの工場が操業を開始する。

そのほか、消費者金融大手プロミスが 11 年5月に瀋陽支店を開設した。拡大が予想される中

間層向けの個人融資を行う。同社によると当初予想を超える水準で貸し出しが伸びているという。

「小額貸付会社」(日本の消費者金融会社)については、外資 100%出資による参入は原則認め

られていないが、香港での実績が評価され当局より認可を受けた。また、ポーラが化粧品・健康

食品の販売拠点を設立し、12 年4月から事業を開始する。三菱地所と香港新●(さんずいに豊)

集団はアウトレットモールを建設中で 12 年春のオープンを予定している。三菱地所は初の海外

での商業施設開発となる。その他、三菱商事と地場デベロッパー金地集団による分譲住宅開発、

東京建物・京阪電鉄・地場デベロッパーの万科集団によるマンション、オフィス、商業施設開発な

どが進んでおり、個人や一般消費者を対象としたビジネスも広がりつつある。

なお、瀋陽市対外経済貿易合作局によると、業種別の実行額は、製造業が 38.1%増の 16 億

9,000 万ドル、不動産開発のなかでも「商業総合体」(飲食、ホテル、レストラン、オフィス、住宅な

どの複合施設)関連が 95.3%増の 18 億 9,000 万ドルとなり、それぞれ投資総額の 30.7%、34.4%

を占める。

日本企業の瀋陽進出が増加している理由として、日系製造業が集積する瀋陽経済技術開発

区招商局関係者は次の 3 点を挙げる。

(1)国内市場開拓拠点として瀋陽のプレゼンスが向上。大連や北京、長春など周辺都市へのア

クセスが良く、瀋陽 1 時間圏内の人口が 2,500 万人という市場の大きさも魅力。

(2)東北 3 省の「中心」都市として将来性がある。昔から、東北地域の政治・文化の中心エリアで、

有力国有企業が集積するなど産業基盤がある。人材も周辺各地から集まる。

(3)コスト安。大連や南方の沿海他都市に比べ、人件費や生活コストが割安。

ほかにも、国内初の行政審査センター(諸手続きのワンストップセンター)が設立され、企業設

立にかかる周辺手続きが簡素化・効率化していることも、内外資の進出が進む 1 つの理由だろ

う。

<大連市:香港からの不動産開発投資が鈍化>

大連の対内直接投資額(実行ベース)を国・地域別にみると、第1位は香港で前年比 1.8%増

の 52 億 3,200 万ドルだった(表 4 参照)。香港企業の投資は大部分が不動産開発関連とみられ

る。東北 3 省随一の沿岸経済都市、大連は、ここ数年来、地価上昇を見込んで不動産開発投資

が旺盛だったが、物件などの供給量は飽和状態に近い。中央政府による不動産市場過熱抑制

策の影響を受け、また、需要も弱含みなことから、実行額は微増にとどまったと考えられる。また

投資の先行指標となる契約件数、契約額は、それぞれ 36.3%減、48.8%減となっており、今後も

香港からの投資の趨勢(すうせい)に大きな変化はないだろう。

Page 33: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 33

表4 大連市の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 79 21.6 △ 36.3 2,656 50.3 △ 48.8 5,232 47.5 1.8

2 日本 134 36.7 △ 11.8 454 8.6 △ 15.3 1,119 10.2 6.8

3 韓国 54 14.8 △ 28.0 493 9.3 209.7 866 7.9 44.6

4 英領バージン諸島 5 1.4 △ 44.4 △ 45 - △ 137.1 499 4.5 117.9

5 米国 12 3.3 △ 45.5 45 0.9 △ 50.4 419 3.8 △ 20.7

6 英領バミューダ諸島 1 0.3 0.0 296 5.6 0.0 307 2.8 -

7 英領ケイマン諸島 2 0.5 100.0 △ 139 - 0.0 272 2.5 99.6

8 ドイツ 4 1.1 △ 50.0 7 0.1 △ 85.8 216 2.0 38.5

9 台湾 7 1.9 △ 30.0 6 0.1 △ 94.2 100 0.9 △ 44.6

10 オーストリア 0 - △ 100.0 8 0.2 △ 57.8 98 0.9 409.9

(注)順位は実行額順。

(出所)大連市政府資料を基に作成

実行ベース順位

国・地域契約ベース

実行額第2位は日本で、6.8%増、11 億 1,900 万ドルだった。大連市対外経済貿易合作局によ

ると、新規の大型製造案件は少なく、既進出メーカーの増資や再投資が多い。また、中小・零細

企業やサービス産業関連企業からの問い合わせが増えている。製造業では、ヤマザキマザック

が小型工作機械の生産工場に着工(月産 100 台、投資額 4 億元)したほか、既大連進出企業の

リョービが、ダイカスト事業強化のため工場増築および生産設備増設、また住友化学がポリプロ

プレンコンパウンドの事業拠点を地場企業との合弁で設立したほか、THK の増資などもあった。

そのほか、ローソンが日系コンビニエンスストアとして初めて大連に進出し、12 年中に 30 店、

今後 5 年ほどで 150~200 店の出店を予定している。

第3位は韓国で、44.6%増の 8 億 6,600 万ドルだった。韓国は浦項製鉄所(ポスコ)グループが

大連への大型投資を継続している。3 億ドルを投じ、敷地面積 4 万 7,000 平方メートルの IT 産業

パークに着工したほか、大連市郊外の長興島で造船会社 STX とともに総投資額 3 億ドルの厚板

加工センターを設立し、生産を開始した。

<自動車関連産業に勢い>

産業別の実行額をみると、09年、10年と大きく伸びていた第三次産業は前年比1.6%減だった

が、第二次産業は 38.2%増となった(表 5 参照)。

第二次産業のなかでも、自動車部品・工作機械関連製造業の進出が目立つ。大連には現時

点で乗用車生産メーカーはないが、奇瑞汽車が工場を建設しているほか、複数の完成車メーカ

ーの進出が報道されていることもあり、周辺サプライヤーや今後の取引を狙う企業が新規進出、

または再投資を行っている。

ドイツの DEUTZ と第一汽車の合弁企業は、新たに 12 億 5,000 万元を投じ、ディーゼルエンジ

ン生産工場の建設に入った。そのほか、ポルトガル Sodecia のギアボックス向け部品工場設立

(第 1 期投資額 3,000 万ユーロ)、米 MAT の自動車部品工場設立(総投資額 9,000 万ドル)、ドイ

ツ Grob グループの自動車用加工機械生産工場設立(総投資額 6,000 万ユーロ)、スウェーデン

SKF のベアリング生産工場拡張(投資総額 15 億元)など、各種プロジェクトが進行中だ。

Page 34: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 34

表5 大連市の産業別直接投資 (単位:件、100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 7 1.5 0.0 47 0.7 95.8 7 0.1 △ 78.7

10年 6 1.3 △ 14.3 28 0.3 △ 40.4 41 0.4 485.7

11年 4 1.1 △ 33.3 8 0.2 △ 71.4 55 0.5 34.1

09年 168 35.5 △ 15.6 2,559 38.9 △ 23.8 2,477 41.2 4.3

10年 102 21.6 △ 39.3 1,498 18.5 △ 41.5 2,828 28.2 14.2

11年 82 22.5 △ 19.6 1,582 30.0 5.6 3,909 35.5 38.2

09年 298 63.0 △ 1.0 3,969 60.4 50.4 3,532 58.7 48.1

10年 364 77.1 22.1 6,562 81.1 65.3 7,162 71.4 102.8

11年 279 76.4 △ 23.4 3,686 69.9 42.8 7,048 64.0 △ 1.6

(出所)09年、10年:大連市統計年鑑、11年:大連市政府資料を基に作成

実行ベース

第一次産業

第二次産業

第三次産業

年契約ベース

<瀋陽にも IT 産業が集積>

遼寧省は12年の目標として、実行額300億ドルを掲げている。不動産開発関連投資の伸びに

陰りがみえる中、瀋陽市は誘致強化業種として、設備製造業、自動車産業、現代建築産業を挙

げ、加えて IT 産業も対象にしている。

これまで、東北3省のIT産業集積地は、全国でも有数の対日アウトソーシング拠点になってい

る大連だったが、瀋陽には中国システムインテグレーション最大手の東軟集団(NEUSOFT)があ

る。11 年には東芝ソリューションと合弁企業を設立した。瀋陽を拠点に、中国全土の日系企業に

対して中国全土へ SI サービスや BPO・クラウドサービスを提供する。また、子会社で医療機器、

医療用システムを開発する東軟医療系統有限公司は、臨床検査機器の開発、製造、販売を行う

エイアンドティー(本社横浜市)と合弁会社を設立した。中国全体の臨床検査市場をカバーする

総合技術企業として事業を展開する考えだ。日系企業との提携をこれまで以上に強化している。

その他、瀋陽国際ソフトウエアパークには日系企業も進出し、今後欧州大手企業の開発センタ

ーも設立される予定だ。IT 技術者の人件費が北京・上海の半分で大連より 3 割ほど安く、日本語

人材も豊富なことから、今後日本向け IT アウトソーシング(ITO)、ビジネス・プロセス・アウトソー

シング(BPO)分野の発展が見込まれる。

大連では 11 年に中国全土の外資系企業をにぎわせた社会保険加入問題について、納付額

の算定基準となる基数の上限を撤廃するなど(現在は暫時執行停止中)、日系企業の投資意欲

に水を差しかねない政策変更があった。10 年にはスト(ボイコット)が発生し、投資環境に不安を

与える状況が続いている。

そうした中、市政府は 12 年を「投資ソフト環境建設年」と位置付けて、事業環境の整備、改善

に取り組むとしている。大連金州新区(経済技術開発区)招商局担当者も、可能な限り優遇策を

講じて日系企業を支援していきたい、と話す。大連がこれまでと同様、外国企業から投資地とし

て選ばれ、経済成長を続けていけるか、注目が集まっている。

(渕田裕介)

Page 35: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 35

1 億ドル超の大型投資案件が増加(広東省、福建省)

●広州発

2011 年の対内直接投資額(実行ベース)は、広東省が前年比 7.5%、福建省が 6.9%、それぞ

れ増加した。要因として大型投資案件の大幅な増加が挙げられる。投資総額が 1 億ドルを超え

た案件は、広東省が 71 件(97.0%増)、福建省が 31 件(60.0%増)だった。両省とも、日本からの

投資の伸びが高かった。

<広東省:来料加工工場の法人化が進展>

11 年の広東省への対内直接投資は、契約件数が 7,035 件(前年比 24.7%増)、契約額が 346

億 9,000 万ドル(41.0%増)、実行額は 217 億 9,000 万ドル(7.5%増)だった。リーマン・ショック以

降伸び悩んだ同省の対内直接投資もようやく回復しつつある(表 1 参照)。

表1 広東省の対内直接投資 (単位:件、%、億ドル)

件数 前年比 契約額 前年比 実行額 前年比09年 4,346 △ 37.9 175.6 △ 38.7 195.4 1.910年 5,641 29.8 246.0 40.1 202.6 3.711年 7,035 24.7 346.9 41.0 217.9 7.5(出所)広東省対外貿易経済合作庁のデータを基に作成

年契約ベース 実行ベース

広東省対外貿易経済合作庁は、外需の低迷、人民元高、人件費や原材料コストの高騰など

外部環境が悪化したにもかかわらず、11 年の対内直接投資が増加したことを評価した。また、増

加の背景として、第 1 に投資の大型化を挙げた。1 億ドルを超える案件は 71 件(前年比 97.0%

増)、新規設立と増資件数は 186 件、契約額は 59 億 4,100 万ドルに達した。

第 2 に、法人格を持たない来料加工工場が法人化したことを挙げた。11 年末までに計 4,450

の来料加工工場の法人転換手続きが完了(11 年単年度で 2,151 社)し、さらに 351 が手続きを開

始しており、12 年には法人化する予定だ。

<日本は実行額 35%増で第3位に>

広東省の対内直接投資を国・地域別にみると、これまで 7 割前後を占めてきた香港からの投

資は、契約件数が 5,219 件(前年比 28.8%増)、契約額が 257 億 3,000 万ドル(38.9%増)、実行

額が 140 億 3,000 万ドル(8.6%増)だった(表 2 参照)。広東省への投資の増加は、11 年 10 月に

香港で開催された広州市政府と香港貿易発展局との投資商談会で、46 件、115 億 1,900 万ドル

が契約されたことなどによる。商談会では、1 億ドルを超える大型投資案件が 10 件に達した。具

体的には、華潤グループの万象都市開発事業、越秀集団の交通インフラ事業、広州自動車ブラ

ンド物流産業園などが挙げられる。

Page 36: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 36

また、広州市に投資したアウトソーシングサービス部門の約 7 割が香港企業によるものだ。日

本のフォスター電機の香港子会社の豊達電機(香港)は、2,000 万元(1 元=約 12.8 円)を投じ、

スピーカー、ヘッドホン、関連部品の製販会社を広東省高州市に設立するなど、日本からの間接

投資も香港からの投資に含まれている。

日本からの投資は、契約件数では第6位(116 件、7.4%増)、契約額は第5位(7 億 8,000 万ド

ル、2.1 倍)、実行額では第3位(6 億 9,000 万ドル、35.3%増)と大幅に増加した。

具体的な案件としては、ニッパツ(日本発条)(自動車用コイルバネ、スタビライザーなどの製

造)が登録資本金 3,000 万ドルで広州市に中国統括会社を設立。北越紀州製紙は、香港の合昌

紙行、三菱商事、江門星輝造紙との合弁で、江門市に白板紙(コート白ボール)の生産工場を設

立した。資本金は 5,000 万ドル、うち北越紀州製紙が 60%を出資する。

来料加工工場の法人化による投資では、岡谷電機産業(コンデンサーなどを製造)が登録資

本金 900 万ドルで東莞市に生産拠点を設立した。同社は、これまで子会社の岡谷香港が、東莞

市の来料加工工場に生産委託してきたが、法人転換手続きを経て、単独資本法人を設立した。

表2 広東省の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、億ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 5,219 74.2 28.8 257.3 74.2 38.9 140.3 64.4 8.6

2英領バージン諸島

168 2.4 21.7 15.8 4.6 13.7 23.5 10.8 △ 13.3

3 日本 116 1.7 7.4 7.8 2.2 110.8 6.9 3.2 35.3

4 投資性公司 40 0.6 29.0 11.2 3.2 45.5 6.4 3.0 82.9

5 サモア 134 1.9 17.5 4.9 1.4 △ 30.0 6.2 2.8 24.0

6 シンガポール 85 1.2 18.1 11.8 3.4 218.9 4.5 2.1 △ 2.2

7 マカオ 161 2.3 21.1 4.3 1.3 △ 2.3 3.7 1.7 23.3

8 韓国 111 1.6 - 3.9 1.1 - 3.3 1.5 -

9 米国 120 1.7 9.1 6.2 1.8 113.8 2.6 1.2 4.0

10 ドイツ 32 0.5 - 3.0 0.9 - 2.4 1.1 -

その他 849 11.9 △ 1.5 20.8 6.0 30.0 18.2 8.3 22.1

7,035 100.0 346.9 100.0 218.0 100.0

(出所)表1に同じ

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

合計

<サービス産業ではアウトソーシングの伸びが顕著>

産業別にみると、実行額ベースで全体の 6 割を占める第二次産業が 131 億 5,000 万ドル

(8.2%増)、約 4 割を占める第三次産業が 84 億 9,000 万ドル(6.7%増)だった(表 3 参照)。第三

次産業分野の直接投資では、特にアウトソーシング部門の伸びが顕著で、新規設立案件が 269

社、従業員数は 13 万 7,000 人に達した。

日系企業によるアウトソーシング部門(情報システムの開発、運用、保守業務や製品の設計、

開発、物流業務などの外部業者への委託、および経理、総務、人事などの間接業務の外注化)

投資案件としては、日立情報システムズが資本金 7,800 万円で、大手 IT ベンダーの広東華智科

技との合弁会社(広東華智立信軟件)を広州市に設立した。同社は企業のサーバーやネットワ

Page 37: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 37

ーク、周辺機器の 24 時間遠隔監視サービスなどのビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)

を行う。

小売業では、広東イオンが広東省内にジャスコを 13 店舗展開している。うち、2 店舗は 2011 年

に広州市内に新規開店した店舗であり、今後も出店を増やしていく計画である。外食産業では、

サイゼリヤは昨年広東省内の出店を拡大し、広州市内に13店舗、深圳市内に5店舗、佛山市

内に2店舗、恵州市内に1店舗となった。ワイエスフードが展開する山小屋ラーメンは 2009 年に

中国第一店舗を深圳市内に開店し、2011 年は3店舗を新規開店した。

表3 広東省の産業別直接投資 (単位:件、%、億ドル)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 95 2.1 △ 55.0 2.9 1.6 △ 28.0 2.4 1.2 14.8

10年 84 1.5 △ 11.6 2.8 1.1 △ 3.4 1.4 0.7 △ 40.1

11年 118 1.7 40.5 7.3 2.1 163.3 1.6 0.7 10.8

09年 1,848 42.5 △ 27.3 104.1 59.3 △ 33.7 117.2 60.0 △ 1.0

10年 2,343 41.5 26.8 127.1 51.7 22.2 121.6 60.0 3.8

11年 3,518 50.0 50.2 204.6 59.0 60.9 131.5 60.3 8.2

09年 2,403 55.4 △ 43.4 68.7 39.1 △ 45.3 75.8 38.8 6.3

10年 3,214 57.0 33.8 116.1 47.2 69.1 79.6 39.3 5.1

11年 3,399 48.3 5.8 135.0 38.9 16.3 84.9 39.0 6.7

(出所)表1に同じ

第一次産業

第二次産業

第三次産業

年契約ベース 実行ベース

<福建省:契約・実行額ともに増加>

11 年の福建省の対内直接投資は、契約件数が 1,039 件(前年比 8.0%減)と減少したものの、

契約額は 92 億 2,000 万ドル(25.0%増)に増えた。契約額は 09 年に前年比で減少したが、その

後 2 年連続で増加基調を示している。実行額は 62 億ドル(前年比 6.9%増)になり、過去 2 年(09

年 1.2%増、10 年 1.1%増)より伸び幅が大きい(表 4 参照)。

表4 福建省の対内直接投資 (単位:件、%、億ドル)

件数 前年比 契約額 前年比 実行額 前年比09年 939 △ 14.7 53.6 △ 25.0 57.4 1.210年 1,139 21.3 73.8 37.6 58.0 1.111年 1,039 △ 8.0 92.2 25.0 62.0 6.9(出所)福建省対外貿易経済合作庁のデータを基に作成

年契約ベース 実行ベース

<EU を除き軒並み増加>

国・地域別にみると、香港からの投資が契約件数では全体の 39.0%(406 件)、契約額では

66.3%(61 億 1,000 万ドル)、実行額では 62.6%(38 億 8,000 万ドル)を占めている(表 5 参照)。

香港からの大型投資案件として、11 年3月に福建省政府と華潤集団との間で署名された戦略協

力枠組み協議がある。同協議では、第 12 次 5 ヵ年規画期に 1,000 億元以上を投資することが明

Page 38: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 38

記されている。具体的案件としては、●(くさかんむりに甫)田市での火力発電所建設、■(さんず

いに章)州市での医薬品製造拠点設立などが挙げられる。

台湾からの投資は、契約件数・金額ともに前年より減少したものの、実行額は 2 億 7,000 万ド

ルと 14.8%増加した。11 年は台湾の自動車メーカー、東南自動車が福建省に第 3 工場の設立を

決定、投資総額は 20 億元、年間生産台数 12 万台を計画している。

また、福建省発展改革委員会は、11 年の台湾との重点投資プロジェクトとして、■(さんずい

に章)州パラキシレン工場、仙遊台湾農民創業園、清流台湾農民創業園、武平▲(もんがまえに

虫)台農牧合作創業園、■(さんずいに章)平台湾農民創業園など 21 件を挙げた。なかでも、台

湾義聯グループは■(さんずいに章)州市に 116 億元を投じ■(さんずいに章)州(華安)義大世

界(観光施設)を建設し、寧徳市には 5 億 6,000 万ドルを投じ 60 万トンレベルのニッケル合金プロ

ジェクトを計画している。また、台湾慶富グループは雲霄県政府との間で 1 億ドルを投じ LED 産

業パークを建設するプロジェクトに調印した。

日本は、契約件数が 25 件(前年比 13.6%増)で第6位、契約額が 9,700 万ドル(2.34 倍)で第6

位、実行額が 8,300 万ドル(32.7%増)で第5位になった。福建省対外貿易経済合作庁によると、

日本からの投資は、国内市場をターゲットにした案件が増加しているという。

福建省への大型投資案件には、TOTO による■(さんずいに章)州市泰坤工業園区での衛生

陶器生産新工場(資本金 2 億 5,000 万元)の設立がある。TOTO は、中国で高まる高級品需要の

ほか、福建省を中西部地域と台湾向け生産拠点として位置付けている。三菱電機は、アモイ市

に低圧配電制御機器の開発・製造・販売を行う資本金 650 万ドル規模の現地法人を設立する。

福建省政府は6月に日本に投資ミッションを派遣し、東京で「福建省-日本経済交流会」を開催

するなど日本企業の誘致に積極的だ。このセミナーに合わせ、日本の大手造船メーカー、ツネイ

シホールディングスは平潭総合試験区管理委員会と 5 億ドル規模の投資協力意向書に署名し

た。

日本から福建省へのサービス産業の進出で目立つ案件は、モスフードサービスによるモスバ

ーガーの店舗展開である。同社は、1994 年に中国に初出店したが 1997 年に中国市場から撤退

した経験をもとに、2010 年に中国への店舗展開を再開し、第1店舗を厦門市内に開店した。以降、

福建省内のみに店舗を急速に展開させ、現在、厦門市内に12店舗、福州市内に2店舗、泉州

市内に2店舗、晋江市内に1店舗を開店させている。

Page 39: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 39

表5 福建省の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 406 39.0 △ 9.0 6,110.0 66.3 9.2 3,880.0 62.6 9.3

2 台湾 355 34.0 △ 13.0 760.0 8.2 △ 0.7 270.0 4.4 14.8

3 米国 33 3.0 0.0 58.0 0.6 348.6 54.0 0.9 5.7

4 EU 28 2.6 △ 6.7 67.0 0.7 57.8 42.0 0.7 △ 90.4

5英領バージン諸島

26 2.5 4.0 600.0 6.5 - 560.0 9.0 32.1

6 日本 25 2.4 13.6 97.0 1.1 134.1 83.0 1.3 32.7

7 サモア 20 1.9 25.0 150.0 1.6 △ 28.5 210.0 3.4 52.9

8 マカオ 14 1.3 △ 12.5 180.0 2.0 122.0 63.0 1.0 21.8

9 その他 132 12.0 △ 7.7 1,190.0 12.9 65.8 1,040.0 16.8 22.3

1,039 100.0 △ 8.0 9,220.0 100.0 25.0 6,200.0 100.0 6.9

(出所)表4に同じ

合計

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

<石化、金融、IT 産業への投資が急増>

産業別では、実行額で、第二次産業が前年比 39.7%増の 40 億ドル、第三次産業が 17.0%増

の 20 億ドルだった(表 6 参照)。製造業では、石油化学工業が 85%増、サービス産業では金融

が 58%増、IT 産業が 28%増など。

福建省対外貿易経済合作庁によると、12 年の福建省の対内直接投資は、IT、石油化学工業、

機械設備、自動車、造船、冶金など 13 の産業を重点産業と位置付けている。同庁は世界レベル

の大手企業の誘致を強化するとしているほか、台湾企業との連携で産業のレベルアップを図る

方針だ。

表6 福建省の産業別直接投資(11年) (単位:件、億ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

第一次産業 69 6.6 △ 12.7 4.1 4.5 69.6 1.0 1.6 0.8

第二次産業 381 36.7 △ 0.3 54.5 59.1 45.4 40.0 65.6 39.7

第三次産業 589 56.7 7.0 33.6 36.4 26.0 20.0 32.8 17.0

(出所)表4に同じ

契約ベース 実行ベース

(蘆真、黎偉君、森路未央)

Page 40: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 40

契約数減少するも投資額は過去最高(山東省)

●青島発

2011 年の山東省の対内直接投資(実行ベース)は前年比 21.7%増の 111 億 6,000 万ドルと、

07 年の過去最高額(110 億 1,159 万ドル)を更新した。一方で、投資件数(契約ベース、増資含ま

ず)は 12.2%減の 1,433 件となり、大型案件の比重が高まっている。1 件当たり 3,000 万ドルを超

える件数は 20.7%増(105 億 4,000 万ドル)の 292 件で、契約額に占める大型案件の割合は、8.1

ポイント増えて 66.8%となった。

<青島、煙台、威海の沿岸 3 都市が投資を牽引>

山東省への直接投資の 3 割強を占める青島市への投資額は、前年比 28.6%増(36 億 100 万

ドル)となり、前年の増加率27.9%を上回った。また過去2年、1ケタ台の伸びにとどまっていた沿

海部の煙台市、威海市への投資額はそれぞれ 24.0%増(13 億 3,900 万ドル)、31.0%増(7 億

2,700 万ドル)と、山東省全体の増加率 21.7%を上回った(表 1 参照)。

表1 山東省の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 1,468 100.0 △ 3.9 8,710 100.0 △ 14.2 8,010 100.0 △ 2.3

10年 1,632 100.0 11.2 13,634 100.0 56.5 9,168 100.0 14.5

11年 1,433 100.0 △ 12.2 15,791 100.0 15.8 11,160 100.0 21.7

09年 650 44.3 2.2 - - - 2,189 27.3 △ 16.0

10年 733 44.9 12.8 4,789 35.1 143.9 2,801 30.6 27.9

11年 647 45.2 △ 11.7 5,288 33.5 10.4 3,601 32.3 28.6

09年 259 17.6 7.0 - - - 1,085 13.5 2.6

10年 243 14.9 △ 6.2 1,678 12.3 0.1 1,153 12.6 6.3

11年 209 14.6 △ 14.0 2,114 13.4 26.0 1,339 12.0 24.0

09年 74 5.0 5.7 - - - 981 12.2 13.4

10年 87 5.3 17.6 1,209 8.9 10.5 1,040 11.3 6.1

11年 86 6.0 △ 1.2 1,414 9.0 17.0 1,100 9.9 5.8

09年 79 5.4 △ 8.1 - - - 678 8.5 39.8

10年 80 4.9 1.3 1,057 7.8 38.4 721 7.9 6.4

11年 69 4.8 △ 13.8 1,274 8.1 20.5 722 6.5 0.0

09年 99 6.7 △ 38.9 - - - 550 6.9 4.6

10年 136 8.3 37.4 803 5.9 42.9 555 6.1 3.1

11年 110 7.7 △ 19.1 1,162 7.4 44.7 727 6.5 31.0

(出所)山東省商務庁資料を基に作成

契約ベース 実行ベース

山東省

青島市

煙台市

済南市

濰坊市

威海市

省・市名 年

これらの 3 都市はいずれも、海洋経済の発展、海洋資源の科学開発、海洋優勢産業の育成を

目指す国家発展戦略「山東半島藍色経済区発展計画」(国函[2011]1 号、藍色経済規画)の中

核都市だ。港湾物流分野での前湾新聯合コンテナ埠頭(ふとう)建設(青島市、総投資額 3 億

Page 41: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 41

2,000 万ドル)をはじめ、海洋エネルギー分野では香港の華潤電力(風能)開発の単独資本によ

る華潤電力風能(青島)と華潤新能源(青島)風能設立(青島市、総投資額 1 億 6,000 万ドル)、

北海投資(香港)によるによる高精度アルミニウム板の生産販売を行う威海海●(金の下に金 2

つ)新材料設立(威海市、総投資額 2 億 8,000 万ドル)など、投資総額が 1 億ドルを超える案件が

相次いだ。

<香港、日本、EU が好調、内需狙いの投資が継続>

国・地域別では香港、日本、EU が好調だ。特に実行額で 1 位の香港、3 位の日本は前年比

60%を超える伸びをみせた。第2位の韓国は同 10.1%減と低迷したが、これはウォン安の影響を

大きく受けたと考えられる(表 2 参照)。

表2 山東省の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、%、100万ドル)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 501 35.0 0.6 10,368 65.7 41.0 6,978 62.5 61.1

2 韓国 335 23.4 △ 31.9 1,039 6.6 △ 33.4 855 7.7 △ 10.1

3 日本 107 7.5 △ 16.4 652 4.1 56.7 526 4.7 64.7

4 シンガポール 46 3.2 39.4 536 3.4 18.4 519 4.7 △ 5.6

5 英領バージン諸島 26 1.8 △ 13.3 539 3.4 △ 19.1 517 4.6 △ 20.3

6 EU 71 5.0 7.6 502 3.2 21.3 506 4.5 37.7

7 台湾 97 6.8 △ 24.8 561 3.6 3.1 189 1.7 △ 27.0

8 米国 93 6.5 2.2 433 2.7 △ 54.3 141 1.3 △ 73.8

9 カナダ 31 2.2 △ 11.4 107 0.7 △ 3.1 95 0.8 △ 41.4

10 オーストラリア 18 1.3 △ 14.3 126 0.8 △ 3.1 89 0.8 95.0

1,433 100.0 △ 12.2 15,791 100.0 15.8 11,160 100.0 21.7

(出所)表1に同じ

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

合計

日本からの主な投資案件としては、建設機械用部品を製造するトピー工業が東碧履帯(中国)

(青島市、投資額約 35 億円)、東レ、東レ・メディカルが青島即発集団と合弁で東麗医療科技(青

島)(即墨市、投資総額約 7 億 9,000 万円)をそれぞれ設立したほか、セントラル硝子とフランスの

SAINT-GOBAIN が自動車用ガラスを製造する合弁会社、聖戈班韓格拉斯安全ガラス(青島)

(青島市、総投資額 5,000 万ユーロ)を設立した。

EU からの大型投資案件では特殊膜を製造する BEKAERT(ベルギー)による投資(青島市、総

投資額 2,000 万ドル)が挙げられる。これらの投資はいずれも、現在成長が著しい、または今後

成長が見込まれる中国国内市場を狙ったものとみられ、今後もこの趨勢(すうせい)は続くと思わ

れる。

<不動産業の好調で第三次産業の投資額が 36%増>

産業別では、第一次産業の投資額が前年比 62.7%の大幅な増加となったが、これは 10 年

(55.3%減)の反動と考えられる。第二次産業では、鉱業が最も高い 2.46 倍の伸びをみせた(表 3

Page 42: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 42

参照)。

表3 山東省の産業別直接投資(11年) (単位:万ドル、%)

シェア 前年比 シェア 前年比 シェア 前年比第一次産業 66 4.6 11.9 52,208 3.3 16.6 32,213 2.9 62.7第二次産業 726 50.7 △ 25.7 962,382 60.9 12.6 701,031 62.8 13.9鉱業 6 0.4 △ 14.3 7,722 0.5 90.2 10,522 0.9 145.9製造業 685 47.8 △ 26.8 893,651 56.6 12.6 642,015 57.5 13.2

紡績 16 1.1 △ 27.3 16,650 1.1 △ 15.7 18,278 1.6 △ 10.8化学原料同製品

47 3.3 6.8 58,522 3.7 83.4 40,002 3.6 △ 7.1

医薬 13 0.9 30.0 13,418 0.8 88.2 7,829 0.7 103.3一般機械 81 5.7 8.0 95,440 6.0 54.1 44,729 4.0 24.7専用機械 56 3.9 △ 8.2 76,864 4.9 29.4 56,373 5.1 26.4通信、コンピュータ、電子設備

49 3.4 △ 51.0 61,286 3.9 △ 54.5 41,910 3.8 △ 34.1

その他製造業 423 29.5 △ 32.2 571,471 36.2 19.4 432,894 38.8 21.8

18 1.3 △ 21.7 43,339 2.7 14.5 34,727 3.1 △ 5.8

建設 17 1.2 54.6 17,670 1.1 △ 9.4 13,767 1.2 87.3第三次産業 641 44.7 7.6 564,491 35.7 21.8 382,778 34.3 35.9

33 2.3 △ 5.7 69,184 4.4 △ 33.2 61,305 5.5 53.6

30 2.1 △ 16.7 16,488 1.0 △ 41.1 3,855 0.3 △ 34.1

卸・小売り 343 23.9 30.4 133,399 8.4 129.0 60,427 5.4 74.6ホテル・飲食 27 1.9 12.5 4,721 0.3 △ 30.7 2,621 0.2 △ 39.7金融 8 0.6 0.0 7,136 0.5 △ 5.4 6,842 0.6 △ 65.4不動産 29 2.0 △ 43.1 224,833 14.2 43.7 220,462 19.8 66.7

93 6.5 △ 22.5 36,926 2.3 △ 20.9 7,336 0.7 △ 62.1

55 3.8 103.7 41,088 2.6 115.4 7,526 0.7 4.5

13 0.9 0.0 24,839 1.6 17.6 10,341 0.9 54.6

4 0.3 △ 33.3 317 0.0 △ 91.9 239 0.0 △ 97.1

教育 1 0.1 - 613 0.0 - 69 0.0 -

0.0 - 0.0 - 0 0.0 -

5 0.3 △ 61.5 4,947 0.3 △ 59.7 1,755 0.2 △ 49.4

全業種 1,433 100.0 △ 12.2 1,579,081 100.0 15.8 1,116,022 100.0 21.7

(出所)表1に同じ

衛生、社会保険および福祉業文化、スポーツ、娯楽

レンタル・ビジネスサービス科学研究、技術サービスなど水利、環境公共施設管理住民サービスなど

契約件数

契約額 実行額

電力、ガス、水処理など

運輸、倉庫、郵便情報、コンピュータサービス・ソフト

第三次産業は 10 年までの流れを受け、伸びが著しい。件数は 7.6%増の 641 件、投資額は

35.9%増の 38 億 2,800 万ドルだった。不動産業の投資が依然として好調で、青島市、威海市の

最大案件となった青島中海華業房地産(投資額 4 億 1,700 万ドル)、華潤置地(威海)(投資額 1

億 4,900 万ドル)は、いずれも香港からの投資だ。「運輸、倉庫、郵便」も堅調で、物流産業は卸

売業の発展に寄与している。また関係者によると、青島市招商局は小売業、バイオ、医薬などに

的を絞り、積極的な誘致活動を行っている。12 年以降もこの分野への日系企業の進出が期待さ

Page 43: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 43

れている。また、今後の高齢社会をにらみ、ロングライフホールディング(大阪)が新華錦グルー

プとの合弁で新華錦(青島)長楽頤養服務有限公司(出資額 日本側 102 万ドル、中国側 198 万

ドル)を設立し、青島市では初となる海外合弁での高級老人ホームが誕生した。日本側が介護

サービスやスタッフの育成、中国側が不動産管理、営業という、それぞれの強みを生かした運営

で今後、在宅介護サービスや機器などの周辺サービスも含めた展開を目指す。

11 年の対内直接投資は、下半期に世界経済に不透明感が強まり、伸び悩んだ。しかし、山東

省の経済成長率は相対的に高く(全国の 9.2%に対し 10.9%)、投資先としての優位性、「藍色経

済規画」などの国家プロジェクトによる総合発展戦略、山東省各市が戦略的に行った誘致活動

などもあり、通年では過去最高となった。

(山本諭)

Page 44: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 44

進出企業の増資や大型案件が増加(陝西省)

●北京発

2011 年の陝西省の対内直接投資は前年比で契約件数が若干減少したものの、進出企業の

増資や案件の大型化により、契約額と実行額は堅調な伸びを維持した。全体の半分を超える香

港からの投資は 29.4%増と、大幅な伸びが続いている。また陝西省への投資の 8 割以上を占め

る西安向けは、サービス業のシェアが拡大しつつある。

<陝西省:堅調な伸びが続く>

11 年の陝西省の契約件数は前年比 0.7%減の 138 件、契約額は 15.3%増の 25 億 4,900 万ド

ル、実行額は 29.4%増の 23 億 5,500 万ドルだった(表 1 参照)。

表1 陜西省の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 101 100.0 △ 35.3 1,401 100.0 △ 22.9 1,511 100.0 10.3

10年 139 100.0 37.6 2,210 100.0 57.8 1,820 100.0 20.5

11年 138 100.0 △ 0.7 2,549 100.0 15.3 2,355 100.0 29.4

09年 65 64.4 △ 35.0 600 42.8 △ 49.2 1,219 80.7 6.2

10年 82 59.0 26.2 1,197 54.2 99.4 1,567 86.1 28.5

11年 99 71.7 20.7 1,201 47.1 0.3 2,005 85.1 28.0

(出所)09、10年は陜西省統計年鑑、西安市統計年鑑、11年は省市政府発表資料を基に作成

省・市名 年契約ベース 実行ベース

西安市

陜西省

国・地域別の投資状況(実行額)をみると、香港が 1 位を維持し、29.4%増の 12 億 1,100 万ド

ルと、全体の半分を超えた。これに英領バージン諸島、モーリシャスなどが続いている。米国、シ

ンガポール、日本は大幅に減少したが、ドイツは 4,980 万ドルに達し、前年の 16 倍を超えた(表 2

参照)。

産業別(実行額)でみると、第一次産業、第二次産業、第三次産業はそれぞれ 78.4%、35.0%、

20.2%と、いずれも大きく伸びた。業種別では、全体の6割を占める製造業が60%増の14億500

万ドル、卸・小売業が前年の約 9 倍の 2 億 9,600 万ドルと急増した。一方で、不動産業は 3 億

4,200 万ドルと投資規模は製造業に次ぐものの、27.7%減となった。契約額も 5 割減で、今後も減

少傾向が続く見込みだ(表 3 参照)。

Page 45: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 45

表2 陜西省の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:100万ドル、%)

件数 シェア 前年比 契約額 シェア 前年比 実行額 シェア 前年比

1 香港 55 39.9 △ 19.1 1,239 48.6 △ 9.5 1,211 51.4 29.42 英領バージン諸島 5 3.6 △ 37.5 396 15.5 116.2 395 16.8 142.83 モーリシャス 0 0.0 - 161 6.3 - 161 6.8 -4 投資性公司 7 5.1 16.7 282 11.0 204.5 135 5.7 109.65 米国 10 7.2 0.0 155 6.1 △ 7.9 120 5.1 △ 24.16 ケイマン諸島 1 0.7 - 71 2.8 23.9 111 4.7 2.17 ドイツ 4 2.9 0.0 46 1.8 498.2 50 2.1 1,560.08 シンガポール 7 5.1 133.3 37 1.5 △ 44.5 41 1.7 △ 68.79 オランダ 0 0.0 0.0 34 1.3 - 34 1.5 218.210 マカオ 1 0.7 - 30 1.2 - 31 1.3 10,183.0

11 日本 5 3.6 66.7 33 1.3 64.1 23 1.0 △ 54.5

合計 138 100.0 △ 0.7 2,549 100.0 15.3 2,355 100.0 29.4

(出所)西安市商務局提供資料を基に作成

契約ベース 実行ベース順位

国・地域名

表3 陝西省の業種別対内直接投資(11年) (単位:件、100万ドル、%)

件数 前年比 契約額 前年比 実行額 構成比 前年比農林水産業 4 △ 60.0 66 △ 19.0 21 0.9 66.4鉱業 2 100.0 108 125.2 24 1.0 △ 47.0製造業 56 43.6 1,537 35.6 1,405 59.6 60.0不動産業 4 △ 42.9 182 △ 49.9 342 14.5 △ 27.7卸・小売業 26 △ 23.5 309 312.4 296 12.6 791.0交通運輸・倉庫・郵政業 1 - 109 889.6 99 4.2 2,242.7ホテル・飲食業 6 200.0 63 575.3 63 2.7 148.0リース・ビジネスサービス業 16 33.3 45 36.9 16 0.7 △ 74.2その他 23 - 130 - 89 3.8 -

合計 138 △ 0.7 2,549 15.3 2,355 100.0 29.4(出所)表2に同じ

契約ベース業種

実行ベース

<西安市:初めて 20 億ドルを突破>

陝西省向け投資の 8 割以上を占める西安市の契約件数は前年比 20.7%増の 99 件、契約額

は 0.3%増の 12 億 100 万ドル、実行額は 28.0%増の 20 億 500 万ドルだった。中国全体の対内

直接投資の伸びが鈍化する中、西安市は堅調な伸びを続け、初めて 20 億ドルを突破した。

国・地域別では、香港からの投資が依然としてトップ。契約件数が 33 件、契約額は 6 億 6,885

万ドルと、それぞれ市全体の 33.3%、55.7%を占めた。実行額は 11 億 678 万ドルで、市全体の

55.2%を占めた。

<「現代サービス業」の投資が急増>

業種別では、金融、通信、物流、ソフトウエアアウトソーシングなどを含む「現代サービス業」向

けの投資が急増している。サービス向けの投資は契約ベースでは、全体の 67.4%を占め、10 年

の 42.6%から 24.8 ポイント、シェアが拡大した。実行ベースでは 50.2%を占めている。

Page 46: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 46

11 年の特徴として増資の拡大が挙げられる。42 社の進出企業が計 5 億 2,300 万ドル増資し、

契約額の 43.6%を占めた。西安ハイテクパークによると、ブラザー工業、セコム、ダイキン工業、

北村製作所は、それぞれ新規プロジェクトの展開や生産拡大による工場移転などに伴う追加投

資を行った。

また、大型案件や世界的な有名企業の進出が増えている。契約案件 99 件のうち、投資額

1,000 万ドルを超える案件は 37 件、1 億ドルを超える案件も 3 件ある。

建設機械大手の米キャタピラーは 11 年4月 8 日、トラック向けトランスミッション生産で中国最

大手の陝西法士特歯輪との間で合弁会社「西安双特智能伝動」を設立し、商用車用自動変速機

(AT)の開発生産などを手掛けると発表した。計画によると、年間 12 万基の大型車両用 AT と、

年間 150 万個のキャタピラー向け建設機械部品などを生産し、投資総額は 10 億元(1 元=約

12.8 円)。

NTT データは、05 年に中国最大手ソフトウエアベンダー用友グループと合弁会社を設立し、11

年 12 月には西安ハイテクパークに NTT データ西安開発運営センターを設立すると発表した。西

安開発運営センターを NTT データの中国西部地域の本社とし、今後 3 年内に社員 200 人、売り

上げ 3,000 万元以上を実現し、中国エリアでの運営プロジェクトを西安子会社に逐次移転する方

針だ。

また米国のゼネラル・エレクトリック(GE)は 11 年9月、中国北西部の本部とイノベーションセン

ター設立を発表した。11 月には、エネルギー管理を手掛けるフランスのシュナイダーエレクトリッ

クが、同社の中国西部地域本社、世界研究開発センター、創造ソフトウエア開発センター、工程

装備製造基地、の 4 大プロジェクトを、西安ハイテクパークに展開すると発表した。IC チップ世界

最大手の米クアルコムも 12 月、西部地域初の支社を設立することを決めている。

(張敏)

Page 47: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 47

四川省・重慶市はいずれも5割超の伸びを記録(四川省、重慶市)

●上海発

2011 年の四川省の対内直接投資額(実行ベース)は、伸び率では 10 年に及ばなかったものの、

前年比 55.6%増と大幅に増えた。一方、重慶市は、契約ベースで前年比 2.16 倍、実行ベースで

66.0%増と、いずれも 10 年の伸びを上回り、実行額は 100 億ドルを突破した。

<四川省:成都市以外の都市への投資も増加>

四川省の 11 年の対内直接投資実行額は、前年比 55.6%増の 95 億 2,700 万ドルだった。この

うち、成都市の実行額は 34.9%増の 65 億 5,000 万ドルと大幅に増加したものの、四川省全体に

占めるシェアは約 68.8%と、前年より 11.8 ポイント低下した。つまり、成都市以外の都市への投

資が大きく拡大したことになる(表 1 参照)。

表1 四川省、重慶市の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 286 - △ 19.9 2,425.4 - △ 61.2 3,589.8 - 16.3

10年 379 - 32.5 6,116.5 - 152.2 6,025.2 - 67.8

11年 322 - △ 15.0 n.a. - - 9,527.0 - 55.6

09年 214 74.8 △ 23.3 1,672.7 69.0 △ 67.0 2,797.2 78.0 24.6

10年 294 77.6 37.4 4,982.5 81.5 197.9 4,855.8 80.6 73.6

11年 n.a. - - n.a. - - 6,550.0 68.8 34.9

09年 161 - 19.3 3,714.3 - 34.2 4,016.4 - 47.2

10年 232 - 44.1 6,258.9 - 64.8 6,344.0 - 57.9

11年 326 - 40.5 13,521.0 - 116.0 10,529.0 - 66.0

(出所)各省・市統計年鑑、商務庁・統計局網

成都市

重慶市

省・市名 年契約ベース 実行ベース

四川省

<電子部品製造関連の進出が引き続き活発>

四川省では成都市を中心に、引き続き電子機器・部品関連の生産拠点の進出が活発だ。11

年2月、台湾の緯創(ウィストロン)グループ〔ノートパソコン(PC)受託生産)〕の成都基地の起工

式が行われた。7月には鴻海精密工業グループの富士康国際(フォックスコン)が、四川長虹集

団(家電)と合弁で、四川省綿陽市に年産 5,000 万台規模のスマートフォン工場を建設することで

合意。四川長虹集団傘下の携帯端末メーカー、国虹通訊数碼集団が綿陽市政府と共同で土地

取得と工場建設を行い、フォックスコンが資金と技術を提供する。また 12 月には台湾仁宝(コン

パル)集団の成都工場が生産を開始した。同工場はノートパソコンを月間約 200 万台生産でき、

同集団の西部地区最大の生産拠点となった。

電子部品の製造・販売では8月、米 MFELX グループ(電子回路基板製造)が出資した成都維

順柔性電路板が開業。江蘇省蘇州市に次いで、中国で 2 番目の生産・研究開発(R&D)拠点と

Page 48: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 48

なる。また MFELX グループは、1 億 2,000 万ドルを投資し、成都市ハイテク開発区で柔軟性電子

回路基板工場を設立する。台湾の志超科技(液晶ディスプレー用プリント基板製造)も、四川省

遂寧市に工場を建設することを決定している。さらに米インテルが成都市高新区で配送センター

の営業を開始した。インテルは既に成都市に半導体のパッケージング工場を持っており、今後は

同市で生産されたチップを直接配送できるようになるという。

そのほかの製造業では、韓国 SK グループが西部地区に初の金属機械加工工場を建設する。

投資総額は 3,000 万ドル。同グループは現在、江蘇省、広東省など沿海部に工場を持つが、状

況によっては今後、沿海部の加工企業を成都に移す意向もあるという。またドイツの PM インター

ナショナル(健康食品・スキンケア製品)は 11 月、バイオ医学製品の生産、物流、販売、研究開

発を一体化したアジア太平洋地区の本部センターを成都市に設立すると発表。投資額は 95 億

元(1 元=約 12.7 円)を予定している。さらに、米タイコの成都バルブ生産基地が 12 月に稼働し

た。同基地は成都市の天府新区にあり、敷地面積 4 万平方メートル、投資総額 1,100 万ドル。同

社は今後 3 年間で総額 1 億ドルを中国に投資する予定で、このプロジェクトはそのうちの 1 つ。

製造業以外では、フランスのマイクロクレッドグループが3月、成都市で小口融資を行う美興

小額貸款(四川)を開業した。登録資本金は 1 億元。同社を含め、成都市で小口融資会社の営

業許可審査に合格した企業はこれまで 27 社あり、登録資本金の合計は 41 億 6,600 万元で、う

ち外資による出資は 10 億 2,700 万元に上るという。

日本企業では、日本バイリーン(不織布製造)が9月、自動車用フィルター、産業用フィルター

の製造・販売を行う関連会社を成都市に設立すると発表した。また日本空港ビルデングは1月、

成都市の成都双流国際空港に現地法人を設立。同空港内の国際線出発ロビーに物販店を出店

し、6月から営業を開始した。同店は、日本ブランドを中心とした総合ギフトショップで、化粧品、

時計、電器製品、健康関連商品、キャラクター商品、食品、雑貨などを取り扱う。

<天府新区で 150 プロジェクトが着工、投資総額 2,200 億元>

11 年 12 月 25 日、四川省天府新区の起工式が成都市双流県で行われた。天府新区の計画面

積は 1,578 平方キロ。うち成都市が 1,293 平方キロ、資陽市が 191 平方キロ、眉山市が 94 平方

キロを占める。天府新区では、現代製造業を中心として先端的サービス業を集中させ、「宜業、

宜商、宜居」(良い事業、良い商業、良い居住)を備えた現代化新区を建設するという。

起工式ではプロジェクト 150 件が着工。投資総額は約 2,200 億元に及ぶ。そのうち成都市のプ

ロジェクトは 84 件で投資総額 2,144 億元、資陽市は 18 件で投資総額 84 億 4,900 万元、眉山市

は 48 件だった。同プロジェクトには、ドイツのボッシュ(自動車部品)のシャーシプロジェクト(投資

総額 8 億 8,000 万元)とリンデグループ(化学工業)のガスプロジェクトなども含まれる。

シンガポールの新川投資控股私人は 11 年9月、成都高新区管理委員会、成都高新投資集団

と「新川創新科技園(シンガポール・四川省創造科学技術園)連携協議」を締結し、シンガポール

と四川省との合作プロジェクトがスタートした。計画によると、新川創新科技園の総敷地面積約

10 平方キロ、投資総額は約 200 億元で、完工後は成都市天府新区の中核になる。同園区では、

ハイテク、バイオ医薬、ハイエンドサービス業などを重点産業として発展させる計画だ。

Page 49: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 49

<中西部地区最大の成都双流空港貨物ステーションが操業開始>

成都双流国際空港の国内貨物用ステーションが 11 年2月、運営を開始した。同ステーション

は、南部の空港物流園に位置し、敷地総面積 173 平方キロ、投資総額は 3 億元超。年間の貨物

取扱量は最大 70 万トンに達する見込み。

近年、成都双流国際空港の貨物取扱量は急増。特に、米インテル、台湾のフォックスコン、ウ

ィストロンなどの大手 IT 企業の成都進出に伴って、航空便で輸出される電子製品関係の貨物取

扱量が増えている。

<重慶市:第二次産業向け投資が高い伸び>

重慶市の 11 年の対内直接投資は、契約件数が前年比 40.5%増の 326 件、契約額が約 2.16

倍の 135 億 2,100 万ドル、実行額は 66.0%増の 105 億 2,900 万ドルと、契約額・実行額とも大幅

増で 100 億ドルを突破した(表 1 参照)。

産業別に実行額をみると、第三次産業が 56.6%増の 69 億 3,800万ドル、第二次産業が 86.9%

増の 35 億 6,200 万ドルだった。重慶市全体の対内直接投資に占めるシェアでは、第三次産業が

65.9%、第二次産業は 33.8%だった。前年と同様に第三次産業向け投資の割合が高いものの、

第二次産業向けの伸びが第三次産業向けよりも高かったため、第二次産業向けのシェアが 10

年に比べ高まった(表 2 参照)。

表2 重慶市の産業別直接投資 (単位:件、100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 11 6.8 △ 50.0 98.7 2.7 △ 19.9 10.0 0.3 △ 34.2

10年 11 4.7 0.0 5.7 0.1 △ 94.2 8.3 0.1 △ 17.4

11年 n.a. - - n.a. - - 29.0 0.3 255.3

09年 68 42.2 30.8 1,481.1 39.9 82.7 1,472.3 36.7 68.8

10年 107 46.1 57.4 2,253.4 36.0 52.1 1,936.4 29.7 31.5

11年 n.a. - - n.a. - - 3,562.0 33.8 86.9

09年 82 51.0 34.4 2,134.5 57.5 14.7 2,534.1 63.1 37.6

10年 114 49.1 39.0 3,999.8 63.9 87.4 4,586.7 70.2 81.0

11年 n.a. - - n.a. - - 6,938.0 65.9 56.6

(注)n.a.は統計数値なしを表す。

(出所)「重慶統計年鑑」、重慶統計信息網

第三次産業

年契約ベース 実行ベース

第一次産業

第二次産業

<電子製造業の生産高はほぼ倍増>

重慶市への外資企業の進出動向をみると、電子機器・部品製造では、台湾の華碩電脳

(ASUS)が4月、中国大陸で第 2 の運営本部と、ノートパソコンやスマートフォンなどの生産基地

を重慶市に建設することで同市と契約を締結した。またサーマル・モジュールメーカーの台湾双

鴻科技と台湾超衆科技は、重慶の九龍坂金鳳電子情報産業園に進出。台湾の樺晟電子は 11

月、合川工業園区にデスクトップパソコンやノートパソコンのコネクターなどの生産工場を設立す

Page 50: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 50

ることで重慶市合川区と合意した。同じく 11 月には、IT 製品販売代理大手の香港偉仕電脳

(VST)とシンガポール佳傑科技(ECS)が、重慶市に決済センターを設立することを決定した。両

社の投資額は合計で 1 億 2,000 万ドル。両社はアップル、ヒューレット・パッカード(HP)、宏碁(エ

イサー)、インテルなどの IT 企業をパートナーとする販売代理大手だ。

重慶市経済信息委員会によると、11 年の電子製造業の工業生産高は 95.3%増の 2,016 億

6,000 万元だった。11 年は、パソコンメーカーの広達(クアンタ)、コンパル、ウィストロン、旭碩科

技(ペガトロン子会社)の工場が新たに稼働。同年進出したメーカー数は 7 社。パソコンの年間生

産台数は前年の 13 倍の 2,547 万 8,000 台に上った。重慶税関の発表では、11 年の重慶市のノ

ートパソコンの輸出台数は 1,574 万台となり、輸出額は 51 億 5,000 万ドルに達したという。

<その他の製造業、サービス業の進出も活発に>

電気機械器具製造では、米エナーシス(蓄電池)の工業用バッテリープロジェクトが 12 月、重

慶市の双橋工業園区で稼働した。プロジェクトの総投資額は1億5,000万元。主に産業用鉛酸蓄

電池と関連製品を生産する。

化学工業では、ドイツの BASF(化学)と重慶市政府系の重慶化医控股(集団)が、4月に世界

最大級のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)工場の建設を開始した。

サービス業の進出も活発だ。情報通信関連では、シンガポールの宇博信息科技(IPACS)、藹

柏系軟件科技(IBIZ)、新宇軟件(Dextrys)などの情報通信企業 4 社が重慶北部新区に進出する

ことを決定している。今後 5 年間で、重慶市にシンガポールのソフトウエア・情報サービス業関連

の新たな集中区の確立を目指している。また、インドの GTT は、重慶市の重慶(環球)互聯産業

園に進出。同社は IT 関連人材などに訓練を行い、大手 IT 企業向けにアウトソーシングサービス

を提供する。

小売業では、韓国のロッテグループが重慶市に支社を設立し、経営面積 5 万平方メートル以

上の百貨店を建設する計画がある。また、重慶市渝北区政府の発表によると10月、台湾の新光

三越(百貨店)が渝北区の「重慶国際都会」に進出を決定した。新光三越は、経営面積 20 万平

方メートル以上の商業総合体として 13 年オープンの予定。

日本企業では、村田製作所が6月、村田電子貿易(上海)の重慶分公司を開設したと発表した。

10 月には三井住友銀行(中国)が、中国銀行業監督管理委員会から重慶市での支店開設準備

認可を取得した。重慶市で開業した外資銀行としては 12 行目になる。また三井物産は 12 月、中

国の水インフラ需要の増加に伴い、ハイフラックス(水事業)との折半出資により設立した共同事

業会社ギャラクシーニュースプリングを通じ、重慶市での下水処理事業に参画すると発表した。

今回、重慶で新たに参画・運営する水事業資産は、1 日当たり 2 万立方メートルの下水処理で事

業期間は 30 年間。

<「世界 500 強」企業の 200 社超が重慶に進出>

重慶市対外経済貿易委員会によると、11 年 12 月末までに、「フォーチュン・グローバル 500」

企業で重慶市に進出した企業は 200 社を超え、中西部地区で第1位。そのうち約 100 社が両江

新区に進出したという。12 年も誘致を積極的に推進し、新たに 20 社の誘致を目指すとしており、

Page 51: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 51

特に、韓国企業、日本企業の進出を見込んでいる。また 12 年は、工業、不動産業のほか、金融

業、物流業、旅行業、文化関連などの新興産業の誘致にも注力するとしている。

さらに重慶市は 12 年の外資誘致の重点プロジェクトとして、両江新区に多国籍企業のアジア

本部の集積区建設を開始する。香港佳程集団(不動産業)が重慶市政府と契約を締結し、両江

新区で建設を開始する予定。同アジア本部集積区には、「フォーチュン・グローバル 500」企業を

30 社以上誘致することを目指すとしている。

11 年9月 14 日、中国と韓国政府が共同で建設した「中韓産業園」が両江新区で開園した。同

産業園は、沿海地区とシンガポールが共同建設した「蘇州工業園区」、「天津中新生態城」(天津

エコシティー)に続く他国との共同プロジェクトだ。同産業区は、両江新区内の龍盛区に位置し、

面積は 8 平方キロ。電子産業を重点的に発展させるとともに、カルチャー・クリエーティブ、デジタ

ルエンターテインメントなどの新興産業、新エネルギー産業などを育成するハイエンド産業基地

を目指すという。

また、11 月 28 日には、日系電子企業を中心とした工業団地「重慶日本電機電子産業基地」が

重慶市経済技術開発区に設立された。同産業基地は同市経済開発区の南部に位置し、総面積

は 3 平方キロ。ノートパソコン、携帯電話端末、モノのインターネット、クラウド産業、半導体など

の電子産業、家電、自動車部品などの産業を中心に発展させるとともに、新エネルギー設備、省

エネ環境保護設備、新材料などの新興産業も育成する予定とされている。同日行われたプロジ

ェクト調印式では、プロジェクト16件、投資総額86億7,000万元の事業契約が締結されたという。

(鈴木貴詞、余慧玲)

Page 52: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 52

日本企業の投資が 3 倍に拡大(湖北省)

●武漢発

2011 年の湖北省の対内直接投資(実行ベース)は、前年比 14.9%増の 46 億 5,503 万ドル、う

ち日本からの投資は約 3 倍の 4 億 9,070 万ドルだった。

<湖北省では日本の伸びが突出>

11 年の実行額を中部 4 省(湖北省、湖南省、河南省、江西省)でみると、湖北省のほか、湖南

省 61 億 5,000 万ドル(前年比 18.6%増)、江西省 60 億 5,880 万ドル(18.8%増)、河南省 100 億

8,210 万ドル(61.4%増)と軒並み増加した(表 1 参照)。

表1 中部4省の対内直接投資   (単位:件、100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 268 △ 21.9 2,049.0 △ 32.1 3,657.7 12.7

10年 306 14.2 2,786.0 36.0 4,050.0 10.7

11年 339 10.8 4,971.3 78.4 4,655.0 14.9

09年 123 45.9 △ 18.0 n.a. n.a. n.a. 2,121.8 58.0 9.5

10年 145 47.4 17.9 n.a. n.a. n.a. 2,304.3 56.9 8.6

11年 138 40.7 △ 4.8 n.a. n.a. n.a. 2,747.3 59.0 19.2

09年 8 3.0 △ 50.0 n.a. n.a. n.a. 276.5 7.6 15.4

10年 13 4.2 62.5 n.a. n.a. n.a. 300.0 7.4 8.5

11年 17 5.0 30.8 n.a. n.a. n.a. 326.0 7.0 8.7

09年 25 9.3 13.6 n.a. n.a. n.a. 242.1 6.6 55.5

10年 26 8.5 4.0 n.a. n.a. n.a. 272.1 6.7 12.4

11年 30 8.8 15.4 n.a. n.a. n.a. 312.9 6.7 15.0

09年 17 6.3 △ 19.1 n.a. n.a. n.a. 138.4 3.8 7.5

10年 21 6.9 23.5 n.a. n.a. n.a. 175.0 4.3 26.5

11年 22 6.5 4.8 n.a. n.a. n.a. 200.4 4.3 14.5

09年 18 6.7 5.9 n.a. n.a. n.a. 151.8 4.1 7.4

10年 10 3.3 △ 44.4 n.a. n.a. n.a. 166.5 4.1 9.7

11年 19 5.6 90.0 n.a. n.a. n.a. 185.2 4.0 11.2

09年 547 5.8 5,310.4 15.8 4,598.0 14.8

10年 634 15.9 7,212.0 35.8 5,180.0 12.8

11年 674 6.1 9,395.0 30.3 6,150.0 18.6

09年 274 △ 24.7 4,920.0 n.a. 4,800.0 19.1

10年 362 32.1 5,780.0 17.5 6,250.0 30.2

11年 355 △ 1.9 7,677.5 32.7 10,082.1 61.4

09年 821 19.2 n.a. n.a. 4,024.0 11.7

10年 1,092 33.0 n.a. n.a. 5,100.0 26.8

11年 812 △ 25.6 8,445.5 12.7 6,058.8 18.8

(注)n.a.は数字が公表されていないことを示す。

省・市名 年契約ベース 実行ベース

(出所)各省統計年鑑、商務庁・統計局

湖北省

武漢市

黄石市

襄陽市

孝感市

宜昌市

湖南省

河南省

江西省

Page 53: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 53

湖北省は、対内直接投資の水準は 4 省の中で最も低いが、日本企業の投資額の伸びは 3 倍と

突出している。武漢市を中心に 4 億 9,070 万ドルに達した。日本企業のそのほかの省への投資

は、湖南省が 1 億 4,188 万ドル(47.6%増)、河南省が 1 億 4,794 万ドル(3.67 倍)、江西省が 2,205

万ドル(51.3%減)となっている。

<「武漢 1+8 都市圏」が全体の 8 割>

11 年の湖北省の対内直接投資は、契約件数が前年比 10.8%増の 339 件、契約額が 78.4%増

の 49 億 7,130 万ドル、実行額は 14.9%増の 46 億 5,503 万ドルとなった。

湖北省政府は現在、武漢とその周辺に位置する 8 つの都市(黄石、鄂州、黄岡、孝感、咸寧、

仙桃、天門、潜江)を結び付け、1 つの経済圏として発展させる「武漢 1+8 都市圏」構想を推進し

ており、湖北省の対内直接投資の約 8 割が、武漢とその周辺都市への投資だ(表 2 参照)。

(単位:100万ドル、%)金額 割合

武漢 2,747.31 59.0黄石 326.04 7.0孝感 200.44 4.3鄂州 119.40 2.6黄岡 23.08 0.5咸寧 171.08 3.7仙桃 59.72 1.3潜江 35.50 0.8天門 26.03 0.6

全省 4,655.03 100.0

79.71+8都市が全省を占める割合

表2 湖北省の各市別直接投資(実行額、11年)

(出所)湖北省商務経済指標(11年)

産業別(実行ベース)では、第二次産業が 32 億 8,470 万ドル(26.1%増)で全体の 70.5%を占め

た(表 3 参照)。

表3 湖北省の産業別直接投資 

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

09年 19 7.1 △ 26.9 184.9 9.0 76.5 2.1 76.8

10年 18 5.9 △ 5.3 84.9 3.0 △ 54.1 45.4 1.1 △ 40.6

11年 20 5.9 11.1 200.3 4.0 136.0 120.1 2.6 164.5

09年 139 52.1 △ 32.2 1,219.6 59.5 2,445.9 66.9 13.1

10年 154 50.3 10.8 1,887.0 67.7 54.7 2,604.6 64.3 6.5

11年 185 54.6 20.1 3,082.8 62.0 63.4 3,284.7 70.5 26.1

09年 109 40.8 △ 2.7 644.7 31.5 1,135.3 31.0 9.4

10年 134 43.8 22.9 814.4 29.2 26.3 1,400.1 34.6 23.3

11年 134 39.5 0.0 1,688.2 34.0 107.3 1,250.3 26.9 △ 10.7

(出所)湖北省商務経済指標

第三次産業

(単位:件、100万ドル、%)

契約ベース 実行ベース

第一次産業

第二次産業

Page 54: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 54

また、第一次産業が 1 億 2,010 万ドル(2.6 倍)に拡大する一方、第三次産業は 12 億 5,030 万

ドル(10.7%減)と減少に転じた。不動産業が 6 億 4,717 万ドル(22.2%減)と落ち込んだことが響

いた(表 4 参照)。

表4 湖北省の業種別直接投資(11年)   

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

農業、林業、畜産および水産業

20 5.9 11.1 200.3 4.0 136.0 120.1 2.6 164.2

製造業 172 50.7 18.6 2,980.8 60.0 89.3 3,063.3 65.8 23.9

電力、ガスおよび水の生産と供給

9 2.7 80.0 89.8 1.8 △ 71.0 217.1 4.7 80.0

交通と運輸、貯蔵、郵便サービス

8 2.4 60.0 220.4 4.4 152.0 149.0 3.2 157.2

卸・小売業 40 11.8 △ 4.8 144.7 2.9 △ 2.4 68.2 1.5 118.6

不動産業 7 2.1 40.0 741.7 14.9 302.4 647.2 13.9 △ 22.2

賃貸とビジネスサービス業

28 8.3 △ 3.5 190.2 3.8 79.7 227.3 4.9 △ 7.0

水利、環境と公共施設サービス業

5 1.5 25.0 102.2 2.1 10.8 76.0 1.6 △ 37.1

金融業 3 0.9 50.0 136.3 2.7 126.5 51.0 1.1 n.a.

総計 339 10.8 4,971.3 78.4 4,655.0 14.9

(出所)表2に同じ

(単位:件、100万ドル、%)

契約ベース 実行ベース

<大型化、増資が顕著に>

湖北省商務庁は、11 年の対内直接投資の特徴を以下のように挙げた。

(1)契約件数、契約額、実行額のいずれも順調に増加。

(2)投資形態は外資の単独出資が全体の 56.9%と最も多く、合弁が 40.7%、合作方式が 2.4%。

(3)1 件当たりの投資額が大型化し、500 万ドルを超える案件が 155 件(20.2%増)で全体の

45.7%を占めた。

(4)契約ベースで増資案件が多く、うち 500 万ドルを超える案件が 84 件(37.7%増)、金額は 14

億 9,192 万ドル(64.4%増)。

(5)国・地域別(実行ベース)では、日本が 4 億 9,070 万ドルと約 3 倍(シェア 10.5%)に拡大し、2

位に浮上した。1 位の香港は 25 億 1,830 万ドル(26.4%増、シェア 54.1%)、3 位の英領バージン

諸島は 3 億 9,340 万ドル(47.2%減、シェア 8.5%、表 5 参照)。

<自動車部品を中心に日系企業の投資が拡大>

日系企業の投資は、自動車関連投資が多い。日産自動車の中国合弁会社の東風汽車は 12

年7月に新たに総額 500 億人民元(約 6,100 億円)の投資を行い、販売台数を 230 万台以上に拡

大するとともに、自主ブランドの電気自動車を含む約 30 車種の新型車を投入することを発表。広

東省広州市、江蘇省常州市、湖北省十堰市に新設工場を建設中で、河南省鄭州市の商用車工

Page 55: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 55

場を含め中部地域での事業を拡大する方針だ。また、本田技研工業の中国合弁会社の東風ホ

ンダは 12 年7月に新工場の一部を立ち上げ、生産を 10 万台増やし、年産 34 万台とする計画。

表5 湖北省の国・地域別対内直接投資(11年) (単位:件、100万ドル、%)

件数 構成比 前年比 契約額 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比

1 香港 153 45.1 2.0 3,320.1 66.8 130.6 2,518.3 54.1 26.4

2 日本 23 6.8 64.3 191.7 3.9 △ 18.6 490.7 10.5 202.5

3 英領バージン諸島 15 4.4 15.4 239.7 4.8 537.4 393.4 8.5 △ 47.2

4 シンガポール 14 4.1 7.7 163.4 3.3 △ 1.8 193.7 4.2 105.7

5 イタリア 1 0.3 △ 50.0 20.9 0.4 n.a. 121.1 2.6 44.2

6 フランス 5 1.5 25.0 4.8 0.1 △ 85.3 95.9 2.1 △ 20.0

7 韓国 7 2.1 16.7 13.3 0.3 △ 75.0 65.5 1.4 37.9

8 ドイツ 5 1.5 400.0 64.2 1.3 13,555.3 54.8 1.2 182.4

9 オランダ 3 0.9 200.0 55.1 1.1 855.9 54.2 1.2 △ 54.4

10 台湾 32 9.4 △ 15.8 30.0 0.6 △ 67.8 48.6 1.0 △ 39.2

総計 339 10.8 4,971.3 78.4 4,655.0 14.9

(出所)表2に同じ

順位

国・地域契約ベース 実行ベース

自動車部品関連では、ブリヂストンが武漢で自動車シート用のウレタン工場を建設しているほ

か、東プレが襄陽で自動車用プレス部品の製販子会社を設立する。また、大分にある、自動車

用ハーネスのアッセンブリーメーカー豊洋精工は、2011 年7月、湖北省襄陽市に中国で初めて

の工場(独資)を設立、生産を2012年12月よりスタートする予定で、今後も関連企業の進出が続

くとみられる。日系以外でも、上海ゼネラル・モーターズ(GM)の武漢市進出の計画が報じられて

いる。

自動車以外では、サービス産業分野の投資が活発である。2011 年 10 月、武漢市人民政府と

イオンモールは協力協定の締結に合意し、5 年以内に武漢市に大型ショッピングセンターを 5 か

所以上開設する計画を打ち出した。

また、2011 年9月、武漢に初めてユニクロを展開するファーストリテイリング、無印良品を展開

する良品計画が進出、ファーストリテイリングは一気に 4 店舗、良品計画は 2 店舗を出店。ファー

ストリテイリングは武漢を華中市場の重点戦略拠点として位置づけている。

その他、北海道・札幌のさんぱちは、日本全国に 69 店舗、海外に 15 店舗(うち中国 7 店舗)

を展開するラーメンチェーンで、2011 年9月、武漢に「さんぱち・ラーメン」の 1 号店をオープン。

武漢市の友好都市、九州・大分にある手作り洋菓子店「ベルクール」が、2011 年 10 月、武漢の

地元企業と共同出資で「丸山の泡芙(シュークリーム)」を武漢国際広場に開店した。

(天野真也、尹飛)

Page 56: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 56

シェア、契約件数、実行額とも増加(香港)

●香港発

2011 年の香港の対中直接投資は、契約件数が前年比 6.3%増の 1 万 3,889 件、実行額が

16.4%増の 705 億ドルと、件数・金額ともに増加した。対中直接投資全体に占める香港のシェア

は、契約件数で 2.4 ポイント増の 50.1%、実行額で 3.5 ポイント増の 60.8%と、首位の座を確固た

るものにしている。

<全体の実行額の 6 割を占める>

商務部の統計によると、11 年の香港から中国への直接投資は、契約件数が前年比 6.3%増

の 1 万 3,889 件、実行額が 16.4%増の 705 億ドルとなった(表、図参照)。

香港政府のエコノミストで、経済分析部高級経済主任の侯家俊(デスモンド・ホー)氏は、香港

のシェアが増加している理由として、以下を挙げる。

○香港と中国の経済統合の深化(例:汎珠江デルタ地域協力・開発フォーラム)

○投資対象分野の拡大

○海外企業が設置する地域(統括)拠点の増加(香港政府統計処によると、11 年6月時点で

3,752 社、10 年前と比較すると約 15.9%増)

○オフショア人民元ビジネスの発展

なお、地域(統括)拠点が増加している理由として、中国の経済発展の進捗に加えて、香港の

さまざまな利点(低税率、自由な投資環境、法も含めた高度なインフラの存在、豊富な中国投資

の経験)が堅持されていることが挙げられる。

表1 香港の対中直接投資 (単位:件、%、億ドル)

件数 構成比 前年比 実行額 構成比 前年比09年 10,701 45.7 △ 16.8 460.8 51.2 12.310年 13,070 47.7 22.1 605.7 57.3 31.511年 13,889 50.1 6.3 705.0 60.8 16.4(注)実行額は使用金額ベース。(出所)商務部「中国投資指南」

年契約ベース 実行ベース

Page 57: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 57

178.6 177.0 190.0 179.5 202.3

277.0

410.4

460.8

605.7

705.0

10,845

13,633

14,719

14,831 15,496

16,208

12,857

10,701

13,070

13,889

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

0

100

200

300

400

500

600

700

800

02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

図1 香港の対中直接投資推移

実行額(左目盛り) 契約件数(右目盛り)(億ドル) (件数)

(年)

<投資対象分野はより広範に>

「投資対象分野の拡大」について、ホー氏は「対中投資の対象分野は、従来の製造加工から

インフラ建設、ホテルその他観光業、不動産業、小売業、情報通信などへと拡大しつつある」と指

摘する。

実際の対中進出事例をみると、中国での経済発展の進捗に合わせて、進出サービス業の業

種も多様化している(添付資料参照)。また、飲食・小売業などは、広東省を含む沿海部を中心に

進出を進めているが、以前から対中進出を進める不動産・銀行業は、内陸を含めた広範な地域

への進出を図っている。なお、銀行に特徴的なものとして、広東省で中国・香港間経済貿易緊密

化協定(CEPA)を活用し、既存の顧客やルートを掘り下げて受注を拡大する深耕事例が認めら

れる。

12 年の対中直接投資の動向に影響を与える要素として、ホー氏は以下の 2 点を指摘する。

○大規模な多国籍企業によるアジア向け投資は、先進国経済の脆弱(ぜいじゃく)性や進展する

欧州債務危機による不確実性の影響を受ける。

○政策発動の余地が十分にある中国は、グローバルな経済成長の主要なエンジンとなる。この

ような長期見通しの下、海外企業による中国投資が促進される。

12 年は、先進国のダウンサイドリスクに対し、中国経済がどれだけ下支えできるかが、香港か

らの投資を含めた対中直接投資全体の動向のカギになりそうだ。

なお、12 年3月の第 11 期全国人民代表大会の政府活動報告では、12 年度の主要任務として

消費需要の拡大に取り組むとし、その中で高齢者対策、不動産管理、医療・保健などのサービ

ス業を大いに発展させるとしている。高水準のサービスの提供が得意な香港企業が、その強み

を生かして、中国本土でさらにその活躍の場を広げることが期待できそうだ。

Page 58: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 58

〇恒隆地産:中国本土の内陸南西部に事業を拡張する予定で、昆明の不動産用地を取得した。また、瀋陽の恒隆広場は2012年第4四半期にオープン予定。

〇新鴻基地産:2011年上半期事業年度の中国本土での不動産事業の収入は、20億香港ドルを超過。12年末までに、上海・成都・広州でプロジェクトを完成させる予定。

〇卓能集団:2012年末までに、深セン・杭州のプロジェクトをオープンする予定。総投資額は13億元。

〇周大福(ジュエリーチェーン):中国本土の店舗を1,500店から2016年までに2,000店に増設する予定。

〇六福(ジュエリーチェーン):2012年3月末までに、中国本土で直営店を10~15店オープンする予定。

〇エンペラーウォッチ&ジュエリー(ジュエリーチェーン):2012年に山東、上海に3店をオープンする予定。中期目標として、今後4、5年のうちに、北京のメーンストリートの長安街に旗艦店をオープンする予定。

〇TSL(ジュエリーチェーン):2012年度には、中国本土で既に進出している都市に、20~30店を増設する予定。(11年末時点で18店)

〇大家楽(中華式ファストフード店):広州にある中国本部と中央食品加工センターに1億6,000万元を投資し、350店までの出店を可能にする。14年までに主に華南地域で店舗を倍増させ200店とする予定。5年以内に中国本土での売り上げシェアは13%から25%に増加する見通し。

〇大快活(中華式ファストフード店):華南・華北地域を開拓し、これから2年間で店舗数を現在の17店から40店まで増設する予定。

○利豊集団(貿易・小売り・物流関係):運営するサークルKと聖安娜餅屋(ベーカリーショップ)について、2012年中に中国全体(含む香港)で70店増設する予定(11年末時点で543店)。※利豊集団は、12年1月に上海サンリオとサンリオキャラクターに関するマスターライセンス契約を締結

〇利福国際(百貨店、そごうブランドも展開):2011年に上海で土地を取得し、上海久光2店目を16年までにオープンするべく開発中。総投資額は40億香港ドル超。(中国本土での売上比率を14年度までに50%に引き上げる予定)

〇大昌行(小売り・貿易関係):ブラジルの肉輸出会社BRFと合弁会社Rising Starを開設。合弁会社は主に肉の物流から販売までの業務を行う。当初は業務を広州・上海・北京などの大都市で行い、2年目からは加工業務も予定している。投資額は6億2,400万~9億3,600万香港ドルを見込む。

○香港上海銀行:事業再編の一環として、中国本土を含む主要市場に投資を集中させる方針。2011年には、昆明に支店を設立し、CEPAを活用して珠海(広東省)に営業所を開設したほか、中国本土の子銀行に対し28億元の増資を行うなど、中国本土での体制強化を図っている。

〇恒生銀行:2011年には、CEPAを活用して恵州(広東省)に営業所を開設するなど、中国本土での体制強化を図っている。14年までに中国本土に営業所等を20ヵ所増設する予定(北京、天津、廈門他)。また、CEPAを活用して広州にて合弁の証券投資コンサルティング会社を開設する予定。

〇東亜銀行:2011・12年には、ハルビン、長沙(湖南省)に支店を設立し、CEPAを活用して広東省(東莞、佛山)に営業所を開設するなど、中国本土での体制強化を図っている。12年には、中国本土で人材を1割増やすとともに、営業店を10~15店増設する予定。

〇現代教育(塾関係):新華教育実験室と連携して、早ければ2012年9月に、中国本土でインターナショナル幼稚園と幼児学習センターを開設する予定。初期投資は800万香港ドル。

○PICO(イベント企画関係):2012年末までに北京、13年夏までに上海にオフィスを設置する予定。投資額は北京が1億5,000万元、上海が2億5,000万元。

(出所)各社資料などを基に作成

(注)1元=約12.9円、1香港ドル=約10.5円。

11年以降の香港企業の対中投資事例

不動産開発

飲食・小売りなど

銀行

その他

(白井宏幸、林蔚瑩)

Page 59: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 59

前年並みの高水準を維持(台湾)

●中国北アジア課発

2011 年の台湾の対中直接投資(認可ベース)は、前年比 1.7%減の 143 億 7,662 万ドルだっ

た。金融分野をはじめとする中国側の投資規制緩和措置や、海峡両岸経済協力枠組み協定

(ECFA)に基づく投資分野でのアーリーハーベストなどもあり、過去最高を記録した前年に引き

続き高水準を維持した。

<金額、件数、シェアいずれもほぼ横ばい>

11 年の対中投資件数は前年比 3.0%減の 887 件(事後認可分含む)だった(表 1 参照)。対外

直接投資全体は増加(3.6%)したため、対中投資のシェアは前年より 4.3 ポイント低下し、79.5%

となった(図参照)。

表1 台湾の対中直接投資(認可ベース) (単位:件、100万ドル、%)

件数 金額 件数 金額 件数 前年比 金額 前年比09年 249 6,058 341 1,084 590 △ 8.2 7,143 △ 33.210年 518 12,230 396 2,388 914 54.9 14,618 104.711年 575 13,101 312 1,276 887 △ 3.0 14,377 △ 1.7(出所)台湾経済部投資審議委員会

計事前認可 事後認可

26.1 27.8

67.2 77.0 69.4 60.176.4

99.7 106.9

71.4

146.2

143.833.938.8

66.6 66.0 67.271.1

63.960.6

70.5 70.4

83.879.5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0

20

40

60

80

100

120

140

160

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

(億ドル)投資額(左目盛り) シェア(右目盛り) (%)

図1 台湾の対中直接投資(認可ベース)と対外直接投資に占めるシェアの推移

(出所)表1に同じ

(年)

Page 60: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 60

業種別では、投資額に占めるシェアが 24.1%と最も大きい電子部品分野が前年比 28.6%減の

34 億 6,720 万ドルと大幅に落ち込んだ(表 2 参照)。経済部投資審議委員会はプレスリリースで、

その要因として、世界的な景気低迷を受けた中国経済の成長減速や、中国の労働・生産コスト

などの上昇などが影響したと説明している。

表2 対中投資額上位10業種の件数と金額

投資分野 件数 金額 前年比 シェア電子部品 149 3,467 △ 28.6 24.1パソコン・電子製品・光学製品 53 1,551 25.5 10.8金融・保険 27 1,237 147.3 8.6卸・小売り 149 1,233 10.5 8.6化学材料 27 833 343.1 5.8電力設備 48 644 △ 5.7 4.5非金属鉱物製品 29 555 △ 29.9 3.9機械設備 34 534 6.3 3.7不動産 19 414 △ 63.3 2.9金属製品 30 397 △ 2.5 2.8(注)事後認可案件も含む。(出所)表1に同じ

(単位:件、100万ドル、%)

一方、シェア第2位のパソコン・電子製品・光学製品分野は、25.5%増の 15 億 5,055 万ドルと好

調だった。同分野は 11 年、鴻海精密工業が総額 6 億 9,600 万ドル、仁宝電脳工業が 3 億 7,300

万ドルの投資認可を受けるなど、活発な投資が行われた。

なお、伸び率が特に高かったのは、第3位の金融・保険(約 2.5 倍)、第5位の化学材料(約 4.4

倍)だった。金融・保険分野では、10 年1月の中台間の金融覚書(MOU)発効や、11 年1月の

ECFA のアーリーハーベスト条項による投資自由化措置第 2 弾を受けた規制緩和措置により、銀

行の支店開設が相次いだ(表 3 参照)。

11 年には、兆豊国際商業銀行、台湾銀行、玉山商業銀行の 3 行が行政院金融監督管理委員

会より駐在員事務所から支店昇格の認可を受けた。また、10 年に支店昇格の認可を得て上海

支店を開設した第一商業銀行は、11 年 10 月に中国第 2 支店として、成都支店開設の認可を同

委員会から得た。

12 年に入ると台湾土地銀行、合作金庫商業銀行、華南商業銀行も同様に第 2 支店開設の認

可を受けている(3月 15 日時点)。支店開設の動きに続いて支店増設の動きが始まっており、12

年も金融・保険分野の投資は引き続き高水準で推移することが予想される。

他方、前年比で落ち込みが大きかったのは不動産(63.3%減)と非金属鉱物製品(29.9%減)

だった。

Page 61: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 61

10年1月【金融MOU発効】銀行の駐在員事務所の支店への昇格申請が可能となる(ただし駐在員事務所開設から2年経過しているなどの条件付き)

10年

以下7行が台湾当局による支店昇格の認可を取得。 ・第一商業銀行(上海支店) ・台湾土地銀行(上海支店) ・中国信託商業銀行(上海支店) ・彰化商業銀行(昆山支店) ・国泰世華商業銀行(上海支店) ・華南商業銀行(深セン支店) ・合作金庫商業銀行(蘇州支店)

11年1月【ECFAのアーリーハーベストによる第2段階の投資自由化措置が開始】銀行支店昇格申請条件のうち「駐在員事務所開設から2年経過」が1年に短縮される

11年

以下3行が台湾当局による支店昇格の認可を取得。 ・兆豊国際商業銀行(09年10月、蘇州駐在員事務所設立)蘇州支店 ・台湾銀行(10年2月、上海駐在員事務所設立)上海支店 ・玉山商業銀行(10年4月、東莞駐在員事務所設立)東莞支店以下1行が台湾当局による支店開設の認可を取得。 ・第一商業銀行(成都支店)(上海支店に続く第2支店)

12年

以下1行が台湾当局による支店昇格の認可を取得。 ・台湾中小企業銀行(10年11月、上海駐在員事務所設立)上海支店以下3行が台湾当局による支店開設の認可を取得。 ・台湾土地銀行(天津支店)(上海支店に続く第2支店) ・合作金庫商業銀行(天津支店)(蘇州支店に続く第2支店) ・華南商業銀行(上海支店)(深セン支店に続く第2支店)以下4行が台湾当局による出張所開設の認可を取得。 ・彰化商業銀行(花橋出張所) ・国泰世華商業銀行(上海支店閔行出張所) ・合作金庫商業銀行(蘇州支店高新出張所) ・華南商業銀行(深セン支店宝安出張所)

(注)12年3月15日時点。(出所)行政院金融監督管理委員会のウェブサイトを基に作成

表3 台湾の銀行の中国での支店開設にかかわる行政院金融監督管理委員会からの認可取得事例

<四川省、遼寧省への投資額が大幅増>

台湾企業の対中投資を省・市・自治区別にみると、投資額に占めるシェアが 30.8%と最も大き

い江蘇省は前年比 19.6%減、同省に次ぐ広東省(シェア 15.3%)も 15.8%減少した(表 4 参照)。

他方、伸び率が特に高かったのは四川省(約 3.4 倍)と遼寧省(約 6 倍)だった。うち四川省成

都市は、重慶市とともにノートパソコンの生産拠点として発展しており、10 年に米国のデルや中

国メーカーの聯想集団(LENOVO)が成都市に拠点設置を発表した。これを受け、両社に OEM

(相手先ブランドによる生産)供給の実績がある仁宝(コンパル)や緯創(ウィストロン)も、11 年に

経済部投資審議委員会から同市での生産販売拠点設置の認可を受けた。

Page 62: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 62

また、同市は生産拠点としてだけでなく消費市場としての成長にも注目が集まっており、日本

の三越伊勢丹ホールディングスと台湾の新光集団との合弁企業の新光三越百貨が、11 年8月

に同委員会から投資認可を受け、14 年の開業を予定している。

表4 台湾の地域別対中直接投資(認可ベース)(単位:件、100万ドル、%)

省・市名 件数 前年比 金額 前年比 シェア江蘇省 204 △ 11.3 4,426 △ 19.6 30.8広東省 187 17.6 2,205 △ 15.8 15.3上海市 108 △ 21.2 2,176 10.9 15.1四川省 44 91.3 927 237.9 6.5福建省 77 16.7 923 4.7 6.4浙江省 52 2.0 724 0.3 5.0山東省 25 △ 30.6 471 21.7 3.3遼寧省 17 183.3 465 498.2 3.2重慶市 42 90.9 448 △ 18.1 3.1天津市 9 △ 50.0 212 △ 23.8 1.5(注)事後申請案件も含む。(出所)表1に同じ

<最大投資案件は友達光電のパネル生産に向けた出資>

個別の投資案件をみると、最も投資額が大きかったのは、11 年3月に液晶パネル分野の対中

投資規制緩和を受けて投資認可申請を行った、液晶パネル最大手の友達光電(AUO)による昆

山龍飛光電への間接投資で、投資額は 7 億 9,625 万ドルに達した(表 5)。

このほか、先の銀行支店開設案件(兆豊国際商業銀行、中国信託商業銀行、国泰世華商業

銀行)や、中国人寿保険による太平洋安泰人寿保険と建信人寿保険への出資案件など、金融・

保険分野での投資案件が上位を占めた。

<馬氏再選が対中投資を後押し>

11 年には中台間の投資規制緩和措置などが引き続き実施され、これが対中投資を後押しし

た。具体的には、1月に ECFA のアーリーハーベストの投資自由化措置の第 2 段階が開始され、

3月には大型液晶パネル分野でさらなる対中投資規制緩和措置が実施された。

12 年1月には台湾の総統選挙があり、対中融和路線を掲げる馬英九総統が再選を果たした。

馬総統の再選により、両岸関係は引き続き緊密な関係が維持され、ECFA の後続協議などにも

プラスに働くとみられている。また、産業界でも馬氏の再選を受け、鴻海精密工業の郭台銘董事

長が「鴻海グループは馬政権の 2 期目 4 年間に、台湾や中国での投資を加速する」と表明する

など(「工商時報」1月 16 日)、台湾企業の対中投資は引き続き活発化していくと予想される。

Page 63: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 63

表5 台湾の主な対中投資案件(11年) (単位:万ドル)

企業名 投資額 概要 事業内容

友達光電 79,625 昆山龍飛光電への間接投資TFT-LCDパネルの生産販売

中国人寿保険 61,000太平洋安泰人寿保険の株式19.9%を取得

生命保険業務

富邦金融 23,500香港富邦銀行(香港)の普通株式25%と特別株式3.28%を取得。アモイ銀行の株式4.998%を取得

銀行関連業務

中国人寿保険 21,600 建信人寿保険への増資 生命保険業務

遠東新世紀 16,600遠東儀化(揚州)を設立(持株比率は60%、中国石化儀征化繊が残りの40%を取得)

純粋テレフタル酸の生産販売

台達電子工業 16,179 中達電通の株式48.5%を取得

放電灯安定器やカラーモニター、磁気カードリーダー、インダクターなどの生産販売

兆豊国際商業銀行 16,000 兆豊国際商業銀行蘇州支店を設立 銀行関連業務

奇美電子 15,000 統宝光電(南京)への間接増資 LCDモジュール組み立て

中国信託商業銀行 12,050 中国信託商業銀行上海支店を設立 銀行関連業務

国泰世華商業銀行 12,000 国泰世華商業銀行上海支店への増資 銀行関連業務

(出所)表1に同じ

(注)国泰世華商業銀行の投資額は経済部発表資料の中で人民元で発表された(7億元)。ここでは同資料中で併記されたドル換算額を使用。

(小林伶)

Page 64: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 64

小幅減ながら全対外直接投資の 1 割超は維持(韓国)

●ソウル発

2011 年の韓国の対中直接投資(実行ベース)は、3月 19 日の速報値によると、前年比 1.2%

減の 35 億 7,600 万ドルだった。製造業は 1.0%増の 27 億 6,800 万ドル、非製造業は 8.2%減の

8 億 700 万ドル。省市別では韓国企業が集積している山東省、江蘇省が上位 1、2 位を占めた。

<金融引き締めなどで投資心理委縮>

11 年の韓国の対外直接投資は、前年比 5.6%増の 255 億 9,400 万ドルだった。このうち、対中

直接投資は 1.2%減の 35 億 7,600 万ドルと、対外直接投資全体の伸び率を大きく下回った。しか

し、対外直接投資に占める対中直接投資の割合は 13.9%を記録し、ここ数年の 10%台を維持し

た(図参照)。

11 年に韓国の対中直接投資が伸び悩んだ要因としては、グローバル経済不況による投資心

理の委縮、中国の金融引き締め政策と投資環境の変化による投資心理の委縮、大型案件の進

出一段落、などが挙げられる。

757 6471,079

1,792

2,3682,818

3,439

5,268

3,764

2,169

3,619 3,576

14.412.2

27.0

38.0

36.5

39.1

29.3

23.7

15.8

10.7

14.9

13.9

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

対中直接投資額(左目盛り)

対外直接投資に占める中国のシェア(右目盛り)

図1 韓国の対中直接投資の推移

(100万ドル) (%)

(出所)韓国輸出入銀行

<製造業ではエレクトロニクス、IT 分野の不振が目立つ>

業種別でみると、製造業が前年比 1.0%増だった一方、非製造業は 8.2%減と不振だった。対

中直接投資全体に占める製造業の割合は 77.4%と、前年に比べ 1.7 ポイント上昇した(表 1 参

照)。

Page 65: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 65

表1 韓国の業種別対中直接投資(実行ベース) (単位:100万ドル、%)

金額 構成比 金額 構成比 金額 伸び率 構成比農業・林業・漁業 7 0.3 6 0.2 4 △ 36.4 0.1鉱業 3 0.1 4 0.1 11 180.1 0.3製造業 1,697 78.3 2,739 75.7 2,768 1.0 77.4

食料品 57 2.6 59 1.6 110 86.3 3.1飲料 47 2.2 14 0.4 13 △ 9.6 0.4繊維製品 42 2.0 108 3.0 30 △ 72.6 0.8縫製・衣服・帽子 18 0.8 36 1.0 67 84.4 1.9皮革・かばん・靴 38 1.8 18 0.5 11 △ 41.3 0.3木材・木製品 5 0.2 1 0.0 2 60.4 0.1パルプ・紙・紙製品 5 0.2 15 0.4 3 △ 78.1 0.1出版・印刷 2 0.1 1 0.0 0 △ 65.2 0.0コークス・石油精製品 22 1.0 23 0.6 10 △ 59.0 0.3化合物・加工製品 135 6.2 180 5.0 177 △ 1.7 4.9医療用物質・医薬品 5 0.2 2 0.1 4 67.6 0.1ゴム・プラスチック 45 2.1 49 1.4 159 226.2 4.5非金属鉱物製品 155 7.2 64 1.8 27 △ 57.7 0.8一次金属 66 3.0 134 3.7 154 14.6 4.3組立金属 101 4.6 116 3.2 85 △ 26.3 2.4電子部品・コンピュータ・映像・音響・通信装置

440 20.3 1,313 36.3 768 △ 41.5 21.5

医療・精密・光学機器・時計 26 1.2 20 0.6 19 △ 4.0 0.5電機装備 43 2.0 83 2.3 87 4.5 2.4その他機械装置 109 5.0 185 5.1 460 148.6 12.9自動車・トレーラー 165 7.6 168 4.6 474 182.1 13.3その他輸送機械装置 108 5.0 71 1.9 21 △ 70.1 0.6家具 9 0.4 7 0.2 8 7.4 0.2その他製造業 53 2.4 70 1.9 78 11.1 2.2

電気・ガス・水道 1 0.0 7 0.2 8 13.1 0.21 0.0 2 0.0 2 △ 5.2 0.0

建設業 66 3.1 30 0.8 41 37.9 1.2卸・小売り 157 7.2 216 6.0 214 △ 0.9 6.0運輸業 22 1.0 39 1.1 51 29.0 1.4宿泊・飲食店 35 1.6 35 1.0 8 △ 77.3 0.2

18 0.8 9 0.2 23 163.0 0.6金融・保険業 79 3.6 347 9.6 57 △ 83.6 1.6不動産・賃貸業 26 1.2 14 0.4 53 278.5 1.5専門・科学・技術サービス 30 1.4 128 3.5 318 148.6 8.9事業サービス業 3 0.1 2 0.1 7 184.6 0.2

0 0.0 0 0.0 0 △ 100.0 0.0教育サービス 5 0.2 4 0.1 2 △ 60.1 0.0保健・社会福祉 0 0.0 2 0.1 0 △ 100.0 0.0

18 0.8 8 0.2 3 △ 66.4 0.12 0.1 28 0.8 6 △ 78.1 0.2

合計 2,169 100.0 3,619 100.0 3,576 △ 1.2 100.0(出所)図に同じ

出版・映像・放送通信・通信サービス

公共行政、国防および社会福祉サービス

協会団体・修理・その他個人サービス芸術・スポーツ・余暇関連サービス

下水・廃棄物処理・原料再生・環境関連業

09年 10年 11年

Page 66: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 66

製造業ではエレクトロニクス、IT 分野が不振で、「電子部品・コンピュータ・映像・音響・通信装

置」が 41.5%減の 7 億 6,800 万ドルと大幅な減少を記録した。一方で「自動車・トレーラー」と「そ

の他機械装置」はそれぞれ約 2.8 倍(4 億 7,400 万ドル)、約 2.5 倍(4 億 6,000 万ドル)と、大幅な

伸びを記録し、製造業のプラス成長を牽引した。非製造業は全般的に不振で、特に、10 年に多

数の大型案件があった「金融・保険業」は、反動により 83.6%減と大幅に減少した。

<山東省への投資がトップに>

対中直接投資を省市別にみると、韓国系企業が集積している山東省に、11 年の対中直接投

資全体の 20.0%に当たる 7 億 1,400 万ドルの投資が行われ、18.9%の江蘇省、14.1%の遼寧省

が続く。上位 10 位までは従来から投資が多かった広東省、上海市、天津市などが占めており、

上位 10 省市で対中直接投資全体の 95.7%となった(表 2 参照)。

表2 韓国の省市別対中直接投資(実行ベース) (単位:100万ドル、%)

金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比1 山東省 432 19.9 701 19.4 714 20.02 江蘇省 518 23.9 1,189 32.9 676 18.93 遼寧省 249 11.5 283 7.8 505 14.14 広東省 106 4.9 163 4.5 439 12.35 上海市 136 6.3 235 6.5 293 8.26 天津市 185 8.5 259 7.2 254 7.17 北京市 166 7.7 122 3.4 234 6.58 浙江省 91 4.2 106 2.9 138 3.99 吉林省 19 0.9 328 9.1 89 2.510 湖南省 125 5.8 22 0.6 80 2.2

2,028 93.5 3,409 94.2 3,418 95.7

2,169 100.0 3,619 100.0 3,576 100.0

(出所)図に同じ

合計

09年 10年 11年

上位10省市合計

韓国輸出入銀行(KEXIM)は、中国東部の沿岸地域を中心に今後も対中直接投資は続くとみて

いる(プレスリリース 11 年 11 月 22 日)。また、近年の賃金上昇により、第三国向け製品製造へ

の投資は長期的に縮小するが、中国内需向けの投資は増加するとの見通しを示した。

〔峰本健正、李海昌(イ・ヘチャン)〕

Page 67: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 67

日系企業の主な対中直接投資案件(2011 年)

企業名 投資額 概要

明治ホールディングス

資本金3,200万ドル明治ホールディングスは3月28日、江蘇省蘇州市に「明治乳業(蘇州)」を設立した。牛乳、ヨーグルト市場の規模が大きく成長性も高い中国に、独資の製造拠点を設立し市場参入する。

三菱商事、伊藤ハム、米久

持株会社の投資は2017年までに総額100億元(約1,250億円)を予定。うちMIYは33億元(約413億円)。

三菱商事、伊藤ハム、米久は6月22日、中糧集団(COFCO)の中国内における豚・鶏などの家畜生産と食肉処理・加工・販売事業、食肉輸入事業への参画を決定した。3社は投資会社MIYを設立し、MIYはCOFCOの子会社・中糧香港と共同でCOFCOの食肉部門を統括する持株会社を設立する。3社の技術力やノウハウをCOFCOの事業基盤に投入し、安全・安心かつ高品質な食肉および加工食品の安定的・効率的供給体制を立ち上げる。

雪国まいたけ 資本金1億5,000万元

雪国まいたけは8月10日、長春に第2工場を増設し生産能力を拡大することを発表した。2008年に吉林省長春市で合弁会社を設立し翌年生産を開始。高品質で安全性の高い施設栽培茸は評価が高く工場はフル稼働状態となっている。中国の今後の経済成長や食の安全への意識の高まりなどから需要拡大が期待できるため、生産能力を現在の日産20トンから50トンへ拡大する。

繊維

伊藤忠商事

山東如意科技集団(資本金2億4,000万元、登録資本1億5,000万元)への出資比率30%

伊藤忠商事と伊藤忠(中国)集団は8月31日、中国繊維大手企業グループである山東如意科技集団の株式を取得することについて合意したことを発表した。これにより山東如意科技集団は伊藤忠商事の持分法適用関連会社となった。伊藤忠商事は、山東如意科技集団の持つ生産基盤を活用し、川上事業のグローバルオペレーションの展開、製品縫製事業の技術力向上と活用、ブランドビジネスの開発など、中国内販市場への販売強化を進めていく予定。

木材・パルプ

北越紀州製紙①資本金5,000万ドル②資本金5,000万ドル

北越紀州製紙は5月18日、香港の合弁会社①「星輝投資控股」と、広東省の製造販売孫会社②「江門星輝造紙」の設立を発表した。①は香港企業と三菱商事との合弁、②は①の100%子会社。安定した成長が見込める中国白板紙市場に、高品質・高効率・低環境負荷の生産体制を築き上げてきた同社の技術力に基づいて生産される白板紙を提供する。

武田薬品工業①資本金7,500万ドル②資本金5,000万ドル

武田薬品工業は3月21日、上海市に中国統括子会社である①「武田(中国)投資」を設立した。中国事業拡大に向けた戦略を立案・遂行するとともに管理部門および開発部門を保有し、今後、中国における新製品の開発推進や、天津武田の営業人員増員および生産設備の更新など、中国における投資活動全般を担う。天津武田薬品における営業人員の増員も決定。4月28日には、統括会社の100%子会社として、販売会社である②「武田薬品(中国)」を江蘇省泰州市の特区である中国医薬城に設立した。

住友化学 資本金3,000万ドル住友化学は8月1日、北京市に投資性公司である住友化学投資(中国)の営業を開始した。今後も高い成長が見込まれる中国市場において事業基盤を強固にしビジネスの拡大を図っていくための全社的な中国戦略推進の拠点とする。

三井化学資本金20億円、投資額50億円

三井化学は8月26日、天津市にスパンボンド不織布製造・販売のための新会社を設立することを発表した。今後の紙おむつ市場の需要増大に対応する。

クレハ 資本金5,000万ドル

クレハは9月21日、上海市に持株・金融統括機能および子会社の管理・支援機能を有する統括会社「呉羽(中国)投資 」を設立することを発表した。グローバルな事業展開に伴い、中国で設立した当社グループ各社について効率性とガバナンスを確保した運営を推進する必要性が高まっていた。

第一三共 資本金3,000万ドル

第一三共は11月18日、中国子会社である第一三共製薬(北京)と第一三共製薬(上海)の事業を統括管理する「第一三共(中国)投資」を上海に設立することを発表した。迅速な意思決定や戦略的な投資を進め、中国における第一三共グループの更なる成長およびプレゼンスの向上を目指す。

ゴム・皮革

東海ゴム工業 資本金5,000万元

東海ゴム工業は6月16日、中国向けの自動車用ゴム・樹脂製品を開発する新会社「東海橡塑技術中心(中国)」を、浙江省嘉興経済開発区に設立することを発表した。中国での自動車用ゴム・樹脂製品の現地開発体制を構築する。日本・北米・タイに続く4つ目の開発拠点。

食料品

化学・医薬

Page 68: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 68

企業名 投資額 概要

フェローテック①資本金1億元②資本金5,000万元

フェローテックは4月22日、中国子会社である①寧夏銀和新能源科技と②寧夏富楽徳石英材料の2社が、寧夏回族自治区銀川市に製造拠点設立認可を取得したことを発表した。太陽電池市場の拡大に伴い、太陽電池用シリコンインゴットおよび単結晶引上げ装置用の石英るつぼの増産を図る。

資本金22億円

旭硝子は5月11日、TFT液晶用ガラス基板の製造(加工)・販売子会社である「旭硝子顕示玻璃(深セン)」を、広東省深セン市に設立することを発表した。液晶テレビやパソコンの販売は新興市場を中心に拡大しており、フラットパネルディスプレー市場が今後年率10%以上で成長し続けることが見込まれている。特に中国ではTFT液晶パネル需要の急拡大により大型液晶パネルの生産拠点設置が相次ぎ、その生産に必要な大型ガラス基板のさらなる需要の拡大が予想されるところ。

1億5,000万元

旭硝子は12月15日、モバイル機器や電気自動車に用いられるリチウムイオン電池(LiB)部材事業への取り組み強化の一環として、LiB正極材の製造・販売拠点「清美通達鋰能科技(無錫)」を江蘇省無錫市に新設することを発表した。子会社のAGCセイミケミカルが中国のLiB正極材メーカーを子会社化し2012年4月頃に生産を開始する予定で、グループの当該製品生産能力は倍増となる。

淀川製鋼所 資本金1億ドル淀川製鋼所は10月28日、台湾子会社のセンユースチール社と共同で、安徽省合肥市に「淀川盛餘(合肥)高科技鋼板」を設立した。白物家電産業用鋼板のPCM(塗装鋼板)需要を確実に捉えるには、現地に製造拠点を設けることが不可欠と判断した。

神戸製鋼所

資本金5,014万ドル。神鋼商務諮詢(上海)(100%出資会社)に5,000万ドルを増資

神戸製鋼所は3月24日、上海市に日本の高炉メーカーとして初めて統括会社「神鋼投資」を設立した。中国国内での投資・M&A、資金管理の一元化による効率的な資金活用、グループガバナンス・リスク管理の強化、各種サポート業務などを行う。

新日本製鐵資本金7億4,000万元、総投資額18億5,000万元(約240億円)

新日本製鐵は4月22日、武漢鋼鉄(集団)と、ブリキ製造・販売の合弁会社である「武鋼新日鉄(武漢)ブリキ」を、湖北省武漢市に設立することを発表した。武鋼との合弁事業により、武鋼の事業基盤と新日鉄の技術を融合させ、現地からブリキ需要を捕捉する。

新日本製鐵ほか

投資額27億5,000万円

新日本製鐵は7月28日、中国における冷間圧造用鋼線の製造・販売会社である日鉄特殊鋼棒線製品(蘇州)(NBC中国)の能力を大幅に増強することを、共同出資者である松菱金属工業、宮崎精鋼、サンユウ、豊田通商、メタルワンおよび日鐵商事と決定した。NBC中国は2007年に操業開始。中国自動車生産の伸びに支えられフル稼働の状況。今後さらなる伸長が期待される中国の冷間圧造用鋼線需要に的確に対応するとともに、品質・コスト・デリバリー面での競争力をさらに高める。

ニッパツ(日本発条)

資本金3,000万ドルニッパツは8月8日、市場の拡大が予想される中国において、リスク事象に対する適切な対応を図りつつ事業拡大を行うため、広東省広州市における統括会社設立を発表した。

クボタ

①資本金4億4,000万円(クボタ50.5%出資)②資本金8億円③資本金7,300万ドル(約60億円)

クボタは3月7日、中国大手水処理エンジニアリング企業の安徽国禎社との合弁会社①「久保田国禎環保工程科技(安徽)」、およびクボタ独資による新会社②「久保田環保科技(上海)」を4月に設立することを発表した。中国水処理市場への本格参入、事業拡大を目指す。合わせて、クボタとして初の地域統括会社③「久保田(中国)投資」(仮称)を設立し、地域戦略の立案・実行と現地事業会社への経営支援を強化することを発表した。

マブチモーター 資本金3,300万ドルマブチモーターは5月16日、江西省で2ヵ所目となる生産拠点「万宝至馬達(江西)をガン州市に設立することを発表した。需要拡大が見込まれる中国で、コスト競争力と生産・販売の拡大を追求する。

川崎重工業 生産設備74億円

川崎重工は5月30日、合弁企業である安徽海螺川崎装備製造のセメント製造設備の新工場建設を発表した。新工場は、合弁相手の海螺水泥(CONCHセメント)が現在自社工場向けに外部から調達している鋳造品などの消耗部品やセメントプラントを構成する主要機器を内製化するためのもの。中国のセメント業界では、需要が旺盛である一方、生産効率の低い旧型・小型の工場を廃止し最新鋭かつ大規模な新工場を建設する動きが出ており、セメントプラント主要機器や鋳造品などの消耗部品に対する需要も増加することが見込まれている。

日本精工

資本金6,200万ドル(約50億円)。投資金額1億5,000万ドル(約120億円)。

日本精工は6月6日、安徽省合肥市の生産子会社設立および工場の建設について、合肥国家高新技術産業開発区管理委員会と調印した。中国では、自動車産業や電機・工作機械・鉄鋼・鉄道車両などの幅広い産業が急速に発展し、自動車軸受や産業機械軸受の需要が大きく伸びているため、供給力を拡大する。

旭硝子

ガラス・土石

鉄・非鉄・金属

一般機械器具

Page 69: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 69

企業名 投資額 概要

資本金3,500万ドル (約31億5,000万円)

三菱電機は5月19日、江蘇省常熟市に、生産ラインの構築に必要なサーボや数値制御装置(NC)などの駆動制御機器を製造・販売する新会社「三菱電機自動化機器製造(常熟)」を設立することを発表した。FA 市場において「世界の市場」となった中国国内での需要、特にサーボや数値制御装置(NC)をはじめとする駆動制御機器需要の拡大に対し、消費地生産体制を構築することにより、さらなる規模拡大と市場シェア拡大を図る。

1億7,500万元(約22億4,000万円)

三菱電機は6月16日、第一汽車集団傘下の啓明信息技術と、カーマルチメディア製品の開発・設計・製造・販売会社設立に関する合弁契約を締結した。啓明信息技術とは、2004年から中国におけるカーマルチメディア製品のソフトウエアの開発で協業してきた。今般、合弁会社を設立することで、現地開発力を一層向上させるとともに、カーマルチメディア製品の製造・販売を強化する。

ニチコン 資本金3,300万ドル

ニチコンは2月14日、江蘇省宿遷市に、「尼吉康(宿遷)」を設立した。パソコンや薄型テレビ、家庭用ゲーム機など、デジタル民生機器に需要が拡大している導電性高分子アルミ固体電解コンデンサと、太陽光および風力発電システムやエアコンおよび産業機器用インバータ関連などのパワーエレクトロニクス分野で需要が増大している中高圧の大型アルミ電解コンデンサの生産を増強する。

ホシザキ電機 資本金3,000万ドルホシザキは7月15日、成長が見込める中国において、ビジネスリスクの低減を図りながらさらなる事業の拡大を推進するため、上海市に持株会社「星崎(中国)投資」を設立することを発表した。

設備投資額約30億円ダイキン工業は7月19日、中国におけるフッ素化学製品の製造・販売子会社である大金フッ素化学(中国)の常熟工場に、フッ素ゴム『ダイエル』の生産設備を新設することを決定した。2013年1月からの量産を計画。

設備投資額約12億円ダイキン工業は9月14日、中国におけるフッ素化学製品の製造・販売子会社である大金フッ素化学(中国)の常熟工場に、フッ素塗料『ゼッフル』の生産設備を新設することを決定した。2013年6月からの量産を計画。

総投資額70億円安川電機は8月8日、市場が拡大する中国での旺盛なサーボモータ、サーボアンプの需要に応えることを目的に、安川電機(瀋陽)において、2010年6月に竣工した第1工場の生産能力の増強工事、および第2工場の建設に着手した。

資本金3,110万ドル

安川電機は10月17日、高水準の成長が続く中国市場での最適な経営と、現地における事業基盤を更に強固なものとするため、上海市の販売子会社である安川電機(上海)への増資を行い投資性公司に改組し、統括会社「安川電機(中国)」を設立することを発表した。

アイシン・エィ・ダブリュ

資本金1億ドル(約83億円)

AWは1月27日、江蘇省蘇州市に100%出資のAT生産会社「AW(蘇州)汽車零部件」を設立することを発表した。主要得意先の現地での需要拡大が見込まれることから、新たに生産会社を設立し中国での生産能力・品目の拡大を図る。

アイシン精機資本金1,440万ドル、投資額34億円

アイシン精機は11月28日、広東省佛山市に電子部品の生産会社「愛信精機(佛山)電子」を設立したことを発表した。アイシングループでは、95年に中国でエンジン部品の生産を開始して以来、駆動系部品、ブレーキ部品、車体系部品の生産拠点を拡充してきた。今回、中国では初となる電子部品の生産拠点を設立することで、急速に成長を続けている中国の自動車市場において、現地での生産体制強化を図る。新会社では、主にABSやサンルーフ用のECU(電子制御ユニット)や、車高を検知するハイトセンサーやABS用車輪速センサーなどの各種センサーを生産する。

ナブテスコ 資本金4,000万ドル

ナブテスコは6月24日、上海電気液圧気動との合弁で、江蘇省常州市に「江蘇納博特斯克液圧」を設立することを発表した。中国建機市場向け走行用油圧モーターは、上海の子会社で既に生産しているが、需要の更なる拡大が予想されるため生産拠点を新設することとなった。

ネツレン(高周波熱錬)

資本金3,000万ドル(約25億円)

ネツレンは3月11日、山東省済寧市に「高周波熱錬(中国)軸承」を設立することを発表した。近年、中国現地での供給要請が高まっていること、中国における建設機械業界などの継続的な拡大が予想され、建設機械用油圧ショベルの機械部品に対するニーズも見込まれることなどが背景。

三菱自動車工業

資本金3,000万元

三菱自動車工業は3月22日、上海に統括子会社「三菱汽車管理(中国)」を設立することを発表した。成長著しい中国自動車市場においてさらなる事業強化を図るため、技術、品質面を中心とした管理統括会社を設立するもの。各事業会社に対して、技術、品質面などで支援、管理業務を行っていく。

日立化成工業 資本金2,300万ドル日立化成工業は4月26日、河南省鄭州市に自動車用樹脂成形品の製造子会社「日立化成工業(鄭州)汽車配件」を設立することを発表した。

ダイキン工業

安川電機

三菱電機

電気機械器具

輸送機械器具

Page 70: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 70

企業名 投資額 概要

資本金3,000万ドル

スタンレー電気は4月28日、上海市に地域統括会社「斯坦雷電気(中国)投資」を設立することを発表した。中国における効率的な資金管理、新規投資対応、法務・税務・金融などの情報提供を行い、成長著しい中国の事業環境に即応できる体制を確立する。また、中国グループ会社のガバナンスを強化する。

資本金3,000万ドル

スタンレー電気は11月28日、湖北省武漢市に、自動車用照明製品、電子機器製品、金型および関連部品の研究、開発、製造・販売を行う新会社「武漢斯坦雷電気」を設立することを発表した。同社グループは、既に中国に8 社の連結子会社を設立しているが、今後もビジネスの拡大が見込まれる同地域での新拠点設立により、さらなる事業強化・拡大を行う。

住友重機械工業

資本金2,000万ドル 住友重機械工業は5月9日、上海市内に建機リース会社を設立することを発表した。

トピー工業 資本金60億円

トピー工業は7月28日、建設機械用足回り部品を製造販売する100%子会社「東碧履帯(中国)」を中国に設立し、新工場を建設することを発表した。2002 年から青島経済技術開発区で履帯事業を展開してきたが、市場の急成長に対し現地調達率の向上が課題となっていた。新工場稼働により、当社グループの中国における主要構成部品の現地調達率を約30%から約70%に向上させる。履帯組立能力を約40%増強し、年間5万台供給体制とする。

資本金3,000万ドルユニプレスは10月31日、広東省広州市に統括会社「優尼冲圧(中国)投資」を設立することを発表した。市場の拡大が予想される中国において、さらなる事業の安定と拡大に向けた効率的な業務運営と管理機能の強化を図る。

資本金2,000万ドル、投資額50億円

ユニプレスは10月31日、河南省鄭州市に車体用プレス部品の製造・販売子会社「鄭州優尼冲圧」を設立することを発表した。広州にも車体用プレス部品の生産拠点があるが、今後内陸部の生産拡大と拡販を視野に入れ、生産拠点設立を決めた。

デンソー 総投資額63億円

デンソーは11月17日、広東省広州東部交通センター建設計画に伴う中国政府の移転要請に対応するため、広州増城市にある広州電装(DMGZ)の新工場を、現所在地から北東に約8キロにある同市内に移転することを発表した。移転を機に、中国に生産拠点を持つ自動車メーカーの生産量の増加に対応するため、カーエアコン、コンデンサー、ラジエーターの生産能力を増強する。

日立オートモティブシステムズ

①資本金4億2,000万元②資本金3,000万ドル

日立(中国)と、日立グループの自動車機器システム事業の中核会社・日立オートモティブシステムズは12月20日、中国自動車機器システム事業のさらなる拡大を目指し、広東省増城市に開発・設計・製造を行う①「日立汽車系統(広州)」を新たに設立することを決定した。また、2011年1月に中国における自動車機器システム事業の統括会社として設立した②日立汽車系統(中国)の会社形態を「管理性公司」から「投資性公司」に変更した。中国における日立オートモティブシステムズのグループ会社に対するガバナンスを強化する。

東プレ資本金20億円、総投資額50億円

東プレは10月14日、事業拡大を目指し湖北省に自動車用プレス部品の生産拠点を設置することを発表した。広東省佛山市に自動車用プレス部品の製造子会社「東普雷(佛山)汽車部件」があるが、自動車生産の伸展目覚ましい内陸への進出を決めた。

日立メディコ 投資金額30億円

日立メディコは5月30日、子会社の日立医療系統(蘇州)を通じ、江蘇省蘇州市に工場を新設することを発表した。将来の新興国向け製品の生産拡大に対応する。将来的に新興国向け新製品の展示施設、中国を含むアジア地域の営業員・サービス員の教育・訓練施設も併設し、「アジア開発センター」の位置付けで運営していく計画。

HOYA資本金2,250万ドル(約18億円)

HOYAは6月16日、山東省威海市に生産拠点を設置することを発表した。デジタルカメラ・光学レンズ市場は、今後も中国を中心とした新興国市場において産業集積が進み、需要増加が見込まれているほか、原料調達でも中国を中心とした資源産出国との関係が重要度を増している。中国に新たな生産拠点を設置し、市場に密着し高機能・高品質な光学ガラス製品を生産し市場へ提供していく。

NTN資本金100億円、投資額150億円

NTNは8月26日、江蘇省南京市に産業機械用軸受を生産する新会社「南京恩梯恩精密機電」を設立することを発表した。中国においては既に8つの生産拠点を設立し、主に自動車用の軸受や等速ジョイントの生産体制を強化してきた。今回設立する南京NTNは、中国市場で需要が増加する風力発電機や建設機械、鉄鋼設備をはじめとする産業機械用の各種軸受を一貫生産する。

スタンレー電気

ユニプレス

輸送機械器具

精密機械器具

Page 71: 2011年の対中直接投資動向 · Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 ・ 遼寧省は省別実行額で前年に続き全国第2位となった。第二次産業の伸びが47.0%増と

Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 71

企業名 投資額 概要

設備投資額80億元積水ハウス4月15日、遼寧省瀋陽市の鉄骨住宅の生産工場に着工した。中国国内向け次世代省エネ・高性能工業化住宅需要に対応すべく、瀋陽市が進める国家プロジェクトの産業団地「現代建築産業パーク」の中核企業として進出するもの。

資本金2億5,975万ドル(約211億円、積水ハウス97.85%)

積水ハウスは5月19日、江蘇省蘇州市に、現地開発業者の蘇州常成置業と合弁会社「積水常成(蘇州)房地産開発」を設立することを発表した。蘇州市や瀋陽市において戸建住宅(タウンハウス)およびマンション群の大型都市開発を計画しており、全体で7,000戸、売上規模は2,000億円程度を予定している。蘇州市相城区では、合弁会社を通じマンション開発(総戸数 約2,000戸)を行う。

卸・小売業

江守商事 資本金2,500万ドル江守商事は4月11日、同社のアジア統括会社の100%子会社「意愛崎(上海)国際貿易」を上海市に設立することを発表した。中国地域の商社営業業務の拡大を目指す。

コクヨ 総投資額20億円

コクヨS&Tは8月3日、中国におけるステーショナリー事業を強化するために2012年夏ごろの稼働予定で上海市奉賢区にノート工場を建設することを発表した。今後はますます販売量の増加が見込まれると判断し、中国に生産拠点を作ることで本格的に中国市場に参入することを決定した。

ユニ・チャーム 資本金3,000万ドル

ユニ・チャームは10月31日、急速に拡大する中国ビジネスの事業基盤をより強固なものとするために、上海市に中国事業を統轄する投資性会社「尤妮佳(中国)投資」を設立することを発表した。中国ビジネスの統轄会社を設立することにより、方針の一元管理、内部統制の強化、投資効率の向上による連結グループとしての最適化を図る。

ニホンフラッシュ資本金800万ドル、総投資額2,200万ドル

ニホンフラッシュは10月31日、江西省宜春市に「日門(江西)建材」を設立することを発表した。今年度、昆山日門建築装飾および日門(青島)建材に設備増強を実施したばかりだが、受注は旺盛でフル操業の状況。今後も中国住宅市場は、政府の内装付住宅推進や保障性住宅整備を背景に高い成長が見込まれ受注も増加見込であることから、子会社設立を決めた。

積水ハウス

建設業

その他

(資料)各社プレスリリースより作成